不動産や賃貸借契約に関する法律は、普段の生活にも密接に関わってきます。
とくに「契約期間」がどのように扱われるかは、貸主・借主の双方にとって重要なポイントです。
今回は借地借家法の中から、賃貸借期間の定めがない場合に関する出題を取り上げて解説します。
⭐️この記事を読んで得られる知識は、以下の3点です。
- 普通借家契約の場合の最低期間はどれだけ?
→最低期間は「1年」です。 - 定期借家契約の場合の最低期間はあるか?
→最低期間の制限はありません。 - 短い期間での定期借家契約を行うメリットとデメリットは?
→貸主、借主双方の立場からメリットとデメリットがあります。
📘 今回の分野:借地借家法 契約期間

今回学ぶ範囲は、不動産分野の借地借家法に関する内容です。
今回は特に普通借家契約と定期借家契約の契約期間に絞って解説していきます。
❓️ 問題文の紹介
借地借家法の規定によれば、建物の賃貸借契約(定期建物賃貸借契約を除く)において、【何年】未満の期間を賃貸借期間として定めた場合、期間の定めがない賃貸借とみなされる。
【 】内に入る年数はいくらか?
選択肢は、
- 1年
- 1年6ヶ月
- 2年
の三択です。
なんとなくで「2年」を選択しました💦
なんとなくで選ばないように意味を理解しておきたいですね。
正解を確認していきましょう‼️
✅ 正解と解説の要点

借地借家法の規定によれば、建物の賃貸借契約(定期建物賃貸借契約を除く)において、【何年】未満の期間を賃貸借期間として定めた場合、期間の定めがない賃貸借とみなされる。
【 】内に入る年数はいくらか?
正解:1年
正解は1年でした。
契約の終了通知に普通借家権では「6ヶ月後」、定期借家権においては「1年前〜6ヶ月前」の通知する期間が設けられているので、これらの期間と混同しないようにしましょう。

それでは、この問題のポイントを見ていきましょう
✅️ポイント解説
- 借地借家法では、普通の建物賃貸借契約の期間は「原則として自由」に決められます。
- ただし、1年未満の契約期間を定めた場合は、法律上『期間の定めがない』契約とみなされるルールがあります。
- これは「短期間すぎる契約で借主の生活が不安定になることを防ぐ」ための借主保護の仕組みです。
🔍 深掘り考察!!
今回は、以下の点について解説していきたいと思います。
- 普通借家契約の場合の最低期間はどれだけ?
→最低期間は「1年」です。 - 定期借家契約の場合の最低期間はあるか?
→最低期間の制限はありません。 - 短い期間での定期借家契約を行うメリットとデメリットは?
→貸主、借主双方の立場からメリットとデメリットがあります。
普通借家契約の場合の最低期間はどれだけ?

普通借家契約(=定期借家契約ではない通常の賃貸借契約)の場合、最低期間は「1年」です。
- 契約期間は原則、自由に決められます。
- しかし「1年未満」と定めると、法律上は無効となり、期間の定めがない契約として扱われます。
つまり、「半年契約」「3ヶ月契約」などは普通借家契約としては成立せず、自動的に期間の定めなしの契約になるのです。
なぜ最低期間が設けられているのか?
これは借主を守るための仕組みです。ポイントを整理すると次のようになります。
① 借主の生活の安定を守るため
住まいは生活の基盤です。もし貸主が「3ヶ月だけ」「半年だけ」など極端に短い契約を認められると、借主は頻繁に引っ越しを強いられ、生活の安定を失ってしまいます。
→ 最低1年の期間を保証することで、安心して暮らせる仕組みにしています。
② 貸主による不当な契約条件を防ぐため
もし短期契約が自由にできてしまうと、貸主側は「気に入らなければすぐ契約を切れる」状態になり、借主の立場が弱くなります。
→ 借地借家法では借主を強く保護する立場をとっており、この最低期間の設定はその一環です。
③ 「1年」という区切りの意味
- 1年を下回ると「期間の定めがない契約」になるため、解約には借主の保護ルールが働きます。
- 逆に「1年」と定めれば有効で、2年、3年など自由に設定可能です。
普通借家契約の期間について_ポイントまとめ
- 普通借家契約の最低期間は「1年」。
- 1年未満の契約は「期間の定めなし」とされます。
- 理由は「借主の生活安定」「貸主の一方的な契約解除を防ぐ」ためです。
- 住まいの安定を確保するための借地借家法の保護規定です。
定期借家契約の場合の最低期間はあるか?

結論からいうと、定期借家契約には「最低期間の制限はない」です。
普通借家契約とは違って、「半年だけ」「3ヶ月だけ」といった短期の契約も有効になります。
なぜ制限がないのか?
理由は大きく2つあります。
① 契約更新がない特別ルールだから
定期借家契約は、期間満了で必ず終了する契約です。
- 普通借家契約は「借主が更新を希望すれば原則更新できる」ので、最低限の安定が必要。
→ 最低1年ルールあり。 - 定期借家契約は「更新なし」が前提で、契約時に借主も理解・納得してサインするため。
→ 最低期間の縛りなし。
② 借主に事前説明が必須だから
定期借家契約を結ぶ際は、書面による契約と、契約満了で終了することの事前説明が法律で義務づけられています。

これにより、借主も「短期契約であること」を納得したうえで契約するので、保護の必要性が普通借家契約ほど強くないと考えられているのです。
定期借家契約_最低期間まとめ
- 普通借家契約:最低期間は「1年」。1年未満は「期間の定めなし」扱いになります。
- 定期借家契約:最低期間の制限はありません。3ヶ月でも半年でも契約可能です。
- 理由は「更新がない特別ルール」かつ「借主への事前説明が義務づけられている」から。
短い期間での定期借家契約を行うメリットとデメリットは?

1. 貸主(オーナー)の立場

メリット
- 柔軟に物件を使える
例:半年後に自分や家族が住む予定がある場合、6ヶ月の定期借家にしておけば確実に明け渡してもらえます。 - 短期利用で賃料を割高に設定できる場合もある
例:観光地や都市部で「3ヶ月だけの家具付き賃貸」として貸すと、通常より高めの賃料を設定できます。
デメリット
- 借主が見つかりにくい
「半年だけ住みたい」というニーズは少なく、長期入居を希望する人には敬遠されやすくなっています。 - 空室リスクが高まる
短期契約が終わるたびに募集や手続きが必要になります。
2. 借主(入居者)の立場

メリット
- ライフスタイルに合わせやすい
例:転勤で半年だけ滞在、受験や研修で数ヶ月だけ住むなど、必要な期間だけ借りられます。 - 長期の縛りがない
更新がないので、長期契約による「更新料」や「途中解約時の違約金」を気にせずに済む場合もあります。
デメリット
- 安定した居住ができない
例:気に入った部屋でも「3ヶ月で必ず退去」となり、引っ越し費用や手間がかかります。 - 再契約できない
再度借りたいと思っても、オーナーが承諾しなければ延長は不可です。
次の住まい探しが必要になります。
具体例
- 貸主の例:
「東京に単身赴任中だが、半年後には戻る予定。その間だけ部屋を貸して家賃収入を得たい。」
→ 定期借家6ヶ月契約にすれば、戻る時に必ず空けてもらえます。 - 借主の例:
「地方から都心に3ヶ月だけ研修に来る。ホテルだと高いので、家具付き短期の定期借家を借りたい。」
→ 必要な期間だけ住めてコスト削減になります。
短期間契約のメリット・デメリット_まとめ
- 短期の定期借家は「柔軟に住まいを使いたい貸主」「一定期間だけ住みたい借主」にはメリット大です。
- ただし、安定性がない(借主)・空室リスクがある(貸主)というデメリットも大きいです。
- 実務上は「転勤」「単身赴任」「研修」「建て替え予定の仮住まい」などの場面で使われやすいです。
まとめ・今回の学び
- 普通借家契約の場合の最低期間はどれだけ?
→最低期間は「1年」です。
なぜ最低期間が設けられているか。
→①借主の生活の安定を守るためです。
②貸主による不当な契約条件を防ぐためです。 - 定期借家契約の場合の最低期間はあるか?
→最低期間の制限はありません。
なぜなら、「更新なし」が前提の契約だからです。 - 短い期間での定期借家契約を行うメリットとデメリットは?
→貸主、借主双方の立場からメリットとデメリットがあります。
「転勤」「研修」「建て替え予定の仮住まい」等の場合に使われます。
今回は普通借家契約と定期借家契約、それぞれの契約期間について解説しました。
「普通」と「定期」、それぞれの契約期間の特徴について理解できたと思います。
試験のときにもイメージし易くなったのではないでしょうか。

もし忘れたとしても、またこの記事を読めば理解はさらに深まると思います。
次回予告:建ぺい率について
次回は不動産や建築の試験でよく問われる「建蔽率」に関する問題を取り上げます。
問題文
「建築基準法の規定によれば、建蔽率の限度が80%の近隣商業地域内で、かつ、防火地域内にある耐火建築物については、建蔽率に関する制限の規定は適用されない。◯か✗か?」
建蔽率は敷地と建物のバランスを考えるうえで重要な基準ですが、防火地域や建物の構造によって例外が設けられる場合があります。
果たしてこの記述は正しいのでしょうか?

次回はこの点を掘り下げて解説します。
お楽しみに!
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