相続や贈与の勉強を進めていくと、必ずといっていいほど出てくるのが「相続時精算課税制度」です。
「名前からして難しそう…」
「暦年課税と何がどう違うの?」
と感じる人は、とても多いと思います。
わたし自身、この勉強をするまで聞いたこともない制度でした。
しかも試験では、特別控除の金額や税率の数字がそのまま問われます。
ただ丸暗記しようとすると、
「2,500万円だっけ? 1,500万円だっけ?」
「税率は15%? 20%?」
とこんがらがってしまいますよね。
わたしも最初に問題を解いたときは、まったくピンとこず、当てずっぽうで答えてしまいました。
でも、数字の「意味」や「背景」がわかると、不思議と忘れにくくなります。
今回は、相続時精算課税の特別控除と税率を、
暦年課税との違いもふくめて一緒に整理していきましょう!
⭐️ この記事を読んで得られる知識は、以下の3点です。
- 相続時精算課税制度ってなに?
→ 生きているうちに、早めに財産をわたすときに使える特別なルールです。 - なぜ2,500万円・20%なの?という背景
→ 子・孫世代の住宅や教育を支援しやすくするための金額、という意味合いがあります。 - 制度を使うときの注意点
→ 一度この制度を選ぶと、暦年課税(毎年110万円の控除)には戻れなくなります。
前回(第80回)のおさらい 前回は、暦年課税の基礎控除「110万円」を、父と母など複数の人からもらったときの数え方について確認しました。
今回の相続時精算課税は、その暦年課税と「どちらか一方を選ぶ」関係にある制度です。
前回の110万円とセットで読むと、贈与税の全体像がぐっとつかみやすくなります。
前回の記事はこちら
▶【暦年課税110万円】父と母の両方からもらうと控除は2倍?基礎控除の正しい数え方を解説_間違いから学ぶFP3級_第80回
📘 今回の分野:贈与税の特例(相続時精算課税)

今回取り上げるテーマは、「相続時精算課税制度」です。
用語をかみくだくと、「相続のときに精算して課税する」制度、という意味です。
名前のとおりなのですが…笑、では「相続のときに精算する」とは具体的にどういうことなのか。
これ以降でやさしく解説していきます。
- キーワード:相続時精算課税、特別控除2,500万円、税率20%、暦年課税との違い
- 分野:相続・事業承継(贈与税)
- テーマ:贈与税の特例

用語を噛み砕くと「相続時に精算して課税」。
まずは名前から攻略しましょう!
❓️ 問題文の紹介:相続時精算課税の特別控除はいくらまで?
- 適用される制度:相続時精算課税(本年中に適用を受けた場合)
- 控除の順番①:受贈者(もらう人)ごとに、まず年間110万円の基礎控除を差し引く
- 控除の順番②:特定贈与者(あげる人)ごとに、特別控除額として累計【□1】までは贈与税がかからない
- 超えた部分の扱い:累計を超えた部分には、一律【■2】の税率で贈与税がかかる
- 問われていること:【□1】と【■2】に入る数値
選択肢:【□1】① 1,500万円 ② 2,500万円 / 【■2】① 15% ② 20%
【□1、■2】に入る数値を答えよ。
似たような数字が並ぶので、「2,500万円」と「1,500万円」、税率の「15%」と「20%」、どれがどれだったか分からなくなってしまいませんか?

取っかかりがあれば暗記はラクになります。
一緒に意味を探しましょう!
それでは、まずは正解の確認です。
✅ 正解と解説の要点

- 適用される制度:相続時精算課税(本年中に適用を受けた場合)
- 控除の順番①:受贈者(もらう人)ごとに、まず年間110万円の基礎控除を差し引く
- 控除の順番②:特定贈与者(あげる人)ごとに、特別控除額として累計【□1】までは贈与税がかからない
- 超えた部分の扱い:累計を超えた部分には、一律【■2】の税率で贈与税がかかる
- 問われていること:【□1】と【■2】に入る数値
選択肢:【□1】① 1,500万円 ② 2,500万円 / 【■2】① 15% ② 20%
【□1、■2】に入る数値を答えよ。
正解:【□1_② 2,500万円、■2_② 20%】
正解は、【□1: 2,500万円、■2: 20%】でした。
なぜ「2,500万円」なのか。
参考書を見ても、最初は「この金額をただ覚えるしかないのかな?」と感じてしまいました。
少し調べてみると、住宅の購入や教育資金など、
子・孫世代の支援に使いやすい金額の上限としての意味合いがあるようです。
金額の意味を知っておくと、暗記の取っかかりになります。
📝 補足 「2,500万円までは税金ゼロ、超えたら一律20%」とセットで覚えるのがコツです。

累進ではなく“一律20%”という潔さも、この制度の特徴ですね。
✅️ポイント解説:110万円の基礎控除との関係
相続時精算課税とは、「生前贈与の分をいったん整理しておき、最終的に相続のときにまとめて再計算する」仕組みのことです。
この制度を使うと、
- 特定贈与者(あげる人)1人につき
- 受贈者(もらう人)が受け取る財産のうち、累計2,500万円までは特別控除で非課税
- それを超えた部分には、一律20%の贈与税がかかります
そして、2024年(令和6年)からは大事な改正がありました。
- 上記の特別控除2,500万円とは別に、毎年110万円の基礎控除が使えるようになりました。
- つまり順番としては、まず年110万円を引いて、残りに特別控除2,500万円を当てるイメージです。
ここで注意したいのが、この「110万円の基礎控除」は、
暦年課税の110万円とは別ルールだという点です。
相続時精算課税を選ぶと、暦年課税そのものは使えなくなります(暦年課税の110万円は使えない)。
あくまで相続時精算課税の中の110万円、ということです。
📚 出典・参考
- 国税庁タックスアンサー No.4103「相続時精算課税の選択」
- 国税庁 「相続時精算課税制度のあらまし」
🔗 関連記事の紹介
相続時精算課税は、ほかの「贈与の特例」や「相続への加算ルール」とセットで理解すると、一気に整理しやすくなります。
相続時精算課税と組み合わせて検討されることが多いのが、住宅資金の贈与です。
第78回も合わせて読むと、贈与の特例の全体像がつかめます。

教育資金をまとめて贈与したいときの特例も、相続時精算課税とよく比較されます。
第79回と合わせて読むことで、贈与の特例を体系的に整理できます。

「生前にあげた財産を、相続のときに足し戻す」という考え方は、相続時精算課税の“精算”とも共通します。第74回 も確認しておくと理解が深まります。


「贈与×相続」はセット出題されやすいので、関連記事もぜひチェックを。
🔍 相続時精算課税制度について_深掘り考察!!
今回は、以下の点について解説していきたいと思います。
- 相続時精算課税制度ってなに?
→生きているうちに早めに財産をわたすときに使える特別なルールです。 - 相続時精算課税制度が出来た理由と背景
→「生きているうちに早めに渡す」ことで経済の流れを良くすることが理由のひとつです。 - 制度を利用する際に注意すべき点
→一度この制度を選んだら、暦年課税制度に戻れなくなります。
相続時精算課税制度ってなに?

「相続時精算課税制度(そうぞくじせいさんかぜいせいど)」は、FPの勉強でもとても大事なテーマの一つです。
名前がかたくて難しく感じるかもしれませんが、考え方そのものはシンプルです。
中学生でもイメージできるように、かみくだいて説明しますね。
🏡 相続時精算課税制度とは?
「相続(そうぞく)」とは、人が亡くなったときに、財産(お金や家)を家族などが引きつぐことです。
一方「贈与(ぞうよ)」は、生きているうちに財産を人にあげることです。
この制度は、生きているうちに早めに財産をわたすときに使える特別なルールです。
💰 制度のざっくりイメージ(割引クーポンにたとえると)
たとえば、お父さん(60歳)が、息子さん(30歳)に 3,000万円 をあげたいとします。
ふつうの贈与(暦年課税)だと、1年に110万円までは非課税ですが、それを大きく超えると、重い贈与税がかかる可能性があります。
ところが「相続時精算課税制度」を使うと…
- まず 累計2,500万円までは非課税(特別控除)
- 超えた金額(今回は500万円)に 一律20%の贈与税
つまりこの場合、おおまかには 500万円 × 20% = 100万円 の贈与税で済みます。
これは、いわば「2,500万円分の大きな割引クーポンを1枚もらえる」ようなイメージです。
ただし、このクーポンは毎年もらえるわけではなく、
一生分で1枚(累計2,500万円)だけ、というのがポイントです。
📅 「相続時に精算」とはどういうこと?
制度名にある「精算(せいさん)」がキーワードです。
この制度は、「生きているうちにあげた分を、相続のときにいったん合計して、もう一度きちんと税金を計算し直す」仕組みです。
つまり、お父さんが亡くなったとき、すでにあげた財産も相続財産に足して、相続税として計算し直します。

だから「税金がゼロになる」制度ではなく、
「先にあげるけど、あとでちゃんとまとめて計算するよ」という制度なんです。
⚠️ ここだけは押さえたい3つのポイント
- いったんこの制度を選ぶと、暦年課税(毎年110万円の控除)には戻れません。
あとで「やっぱり普通の贈与がよかった…」と思っても取り消せません。 - 使える人が決まっています。
あげる側=60歳以上の父母・祖父母/もらう側=18歳以上の子・孫。 - 相続のときにもう一度まとめて計算します。
だから「早めに財産を移したい人」に向いた制度です。
相続時精算課税制度ができた理由と背景
「制度の中身」だけでなく、なぜその制度ができたのかを知っておくと、試験でも実務でも記憶に残りやすくなります。
この制度ができた背景には、日本の「お金の流れ」に関する大きな変化がありました。
🏡 いつできた制度?
この制度は、2003年(平成15年) にスタートしました。
まだ20年ちょっとの、比較的新しい制度です。
🧓 高齢者にお金がたまり、若い世代に回りにくくなった
日本では長い間、「お金を多く持っているのは高齢者世代」「若い世代はなかなかお金がたまらない」という状況が続いていました。
- 祖父母世代 → 退職金・貯金・家がある(資産が多い)
- 子・孫世代 → 子育てや住宅ローンでカツカツ(お金が少ない)
これでは、若い人が「家を買う」「子どもを育てる」といった人生の大きなイベントにお金を使いにくくなります💦
💰 「死んでから相続」では遅すぎる!
日本の相続は、基本的に「亡くなったとき」に財産が移ります。
つまり、財産が若い世代に届くのはかなり先のことになりがちです。
たとえばお父さん70歳・息子40歳で、相続が80歳で起きると、息子が受け取るのは50歳ごろ。
家を買ったり子育てしたりする30〜40代には間に合いませんよね。
🏃♂️💨 「生きているうちに早めに渡す」ために作られた
そこでできたのが、相続時精算課税制度です。
高齢の父母・祖父母が生きているうちに、子や孫へ累計2,500万円まで非課税で贈与できるようにしました。
「死んでから渡すのではなく、生きているうちに使ってもらおう」という国の考え方です。
📈 たとえばこんなイメージ
- おじいちゃん(70歳)が、孫(25歳)に2,000万円を贈与
- 孫はそのお金でマイホームを購入
- 建設業や不動産業も潤い、経済が動く
- 国全体の景気にもプラス
“貯めっぱなし”だったお金が、若い人が使うお金に変わって、経済の流れがよくなる、というわけです。
制度を利用する際に注意すべき点

内容と背景を理解したら、最後に「使うときの注意点」です。
ここは試験でも実生活でも大切なところ。
⚠️1. 一度選ぶと、もう元に戻せない
いちばん大事な注意点は、いったん相続時精算課税を選ぶと、暦年課税(毎年110万円の控除)には戻れないことです。
たとえば、お父さん→息子に1,000万円を贈与して相続時精算課税を選んだあと、翌年に100万円をあげても、それは暦年課税ではなく相続時精算課税の扱いになります(※ただし2024年改正で、相続時精算課税の中でも毎年110万円の基礎控除は使えます)。
⚠️2. 贈与した財産は、あとで“相続財産”に足して計算される
「精算」とは、最終的に相続のときにまとめて計算し直すという意味です。
生前に2,000万円を贈与していた場合、
相続税の計算ではその分も「お父さんの財産」として合計されます。

なので、「贈与税がかからなかった=税金ゼロ!」というわけではないんです。
⚠️3. 相続税が高くなることもある
先にたくさんもらっている分、結果的に相続税の課税対象が増えることもあります。
「生前にあげれば必ず得」とは限らず、いったん後回しにして精算する制度、という理解が大切です。
⚠️4. 申告が必要!「勝手に使える制度」ではない

相続時精算課税は、自分で申告しないと使えません。
贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、
税務署へ「相続時精算課税を使います」という届出(相続時精算課税選択届出書)が必要です。
申告を忘れると、自動的に暦年課税の扱いになります。
⚠️5. 家族みんなで使えるわけではない
使えるのは、次の関係だけです。
| あげる人(贈与者) | もらう人(受贈者) |
|---|---|
| 60歳以上の父母・祖父母 | 18歳以上の子・孫 |
たとえば、叔父さん→甥っ子には使えません。
直系の親子・祖父母と孫の関係だけが対象です。
⚠️6. 住宅や教育の資金に使うときは要チェック
住宅資金や教育資金の贈与には、それぞれ別の非課税制度があります。
同時に使うときは、どちらを優先するか・条件の重なり方をよく確認する必要があります。
📚 出典・参考
- 国税庁タックスアンサー No.4103「相続時精算課税の選択」
- 国税庁 「相続時精算課税制度のあらまし」
💡 得られる知識(深掘りのまとめ)
ここまでを整理すると、相続時精算課税のポイントは次のとおりです。
- 特別控除は累計2,500万円(毎年ではなく、一生分の合計)
- 超えた分は 一律20%(暦年課税のような累進ではない)
- 2024年からは、それとは別に 毎年110万円の基礎控除 も使える
- 対象者は限定(60歳以上の父母・祖父母 → 18歳以上の子・孫)
- 相続のときに 足し戻して再計算 されるので、税金がゼロになるわけではない
⚠️ よくあるケアレスミス:相続時精算課税で間違えやすい数字と仕組み
相続時精算課税は数字も仕組みもまぎらわしく、本番でやりがちなミスがあります。
代表的な3つを確認しましょう。
ミス①:2,500万円を「毎年使える非課税枠」と勘違いする
なぜ間違えるのか?
暦年課税の110万円が「毎年使える」ので、同じ感覚で2,500万円も毎年使えると思い込みやすいからです。
正しい考え方
2,500万円は「累計(一生分の合計)」の特別控除枠です。
使い切ったら、それ以降の贈与は超過分として一律20%で課税されます。

110万円は「毎年」、2,500万円は「累計」。
この違いが最大のひっかけポイントです。
ミス②:超えた部分の税率を「累進課税」と思ってしまう
なぜ間違えるのか?
暦年課税が累進課税(金額が増えるほど税率が高い)なので、
相続時精算課税も同じだと思い込んでしまうからです。
正しい考え方
相続時精算課税の超過分は、金額にかかわらず一律20%です。
シンプルに「超えたら20%」と覚えましょう。

「一律」という言葉が出たら20%、と反応できるようにしておくと安心です。
ミス③:「贈与税ゼロ=最終的に税金もゼロ」と思ってしまう
なぜ間違えるのか?
2,500万円まで贈与税がかからないので、まるごと節税になったと勘違いしやすいからです。
正しい考え方
贈与した財産は、相続のときに相続財産へ足し戻して相続税を再計算します。
贈与税が先送りされただけで、税金がゼロになるわけではありません。

「精算」という名前のとおり、最後にまとめて清算される、と覚えておきましょう。
📋 ケアレスミスまとめ
| よくある誤解 | 正しい考え方 |
|---|---|
| 2,500万円は毎年使える | 2,500万円は累計(一生分の合計) |
| 超過分は累進課税 | 超過分は一律20% |
| 贈与税ゼロなら税金もゼロ | 相続時に足し戻して再計算される |
| 暦年課税にいつでも戻せる | 一度選ぶと暦年課税には戻れない |
まとめ・今回の学び:相続時精算課税の数字と仕組み
今回学んだことを振り返りましょう📝
⭐️ 【得られる知識・まとめ版】
- 基本の仕組み:
相続時精算課税は、生きているうちに早めに財産をわたすための特別ルール。
累計2,500万円まで非課税で、超えた分は一律20%。 - 用語の違い:
暦年課税は「毎年110万円・累進課税」、相続時精算課税は「累計2,500万円・一律20%」。
2024年からは相続時精算課税にも毎年110万円の基礎控除が加わった。 - 試験頻出ポイント:
数字(2,500万円・20%)と、対象者(60歳以上→18歳以上の直系)、申告が必要なこと、一度選ぶと戻れないこと。 - 実生活への応用:
住宅資金・教育資金の援助で活用される一方、相続時に精算されるため、ライフプラン全体で考える必要がある。
相続時精算課税は、名前が長くて身構えてしまいますが、
分解すれば「相続のときに・精算して・課税する」というシンプルな制度です。
注意したいのは、「贈与税がかからない=得」とは限らないこと。
あくまで相続時にまとめて精算されるため、税金が先送りされているだけ、
という点を忘れないようにしましょう。
また、一度選ぶと暦年課税には戻れないため、「とりあえず使ってみる」という制度ではありません。
数字だけでなく、こうした性質まで押さえておくと、応用問題にも対応できます。

数字+性質(戻れない・精算)まで押さえれば応用問題もOK。
自分のライフプランも見つめ直したいですね。
相続時精算課税は「暦年課税との違い」を軸に、贈与全体の中で位置づけて覚えると混乱しません。
贈与・相続をまとめて理解したい方は、暦年課税との比較から学べるFP3級テキストの選び方を参考にしてみてください。
続いて次回予告です。
次回予告:贈与税の納付方法(延納・物納)

次回は、贈与税の納付方法を取り上げます。
贈与税は原則として「金銭で一括納付」しますが、一定の条件を満たすと、例外的な納め方が認められるケースもあります。
次回学べるキーワードは、延納(分割して納める)と物納(モノで納める)の違いと条件です。
「現金で一括が大原則だけど、例外はあるの?」という視点で整理していきます。
次回の記事はこちら
▶【贈与税】贈与税の納付は現金だけ?延納と物納の違いをやさしく解説!_間違いから学ぶFP3級_第82回

延納・物納は“例外”。
原則とセットで覚えると忘れません。
次回もお楽しみに♪


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