遺族年金は、残された遺族の生活を支える大切な制度です。
今回は、遺族厚生年金の支給額がどのように算定されるのか、その基本的な仕組みについて確認しましょう。
特に報酬比例部分に焦点を当て、正確な知識を身につけます。

今回の分野:
ライフプランニングと資金計画における公的年金の基本の分野になります。
その分野の中で、遺族年金(遺族厚生年金)が今回の範囲です。

遺族年金について学び、将来の不安を解消しましょう!
問題文の紹介:
遺族厚生年金の額(中高齢寡婦加算額および経過的寡婦加算額を除く)は、原則として、死亡した者の厚生年金保険の被保険者記録を基礎として計算した老齢厚生年金の報酬比例部分の額の『◯分の■』に相当する額である。
◯と■に当てはまる数値は何か?

分数ですね。
何%位が相場なんでしょうか。
いろいろな問題で目にするのは、50%、67%、75%などの数値。
つまり、1/2、2/3、3/4です。
数値の意味も合わせて、正しく理解しておきたいですね。
それでは正解を見ていきましょう。
正解と解説の要点:
遺族厚生年金の額(中高齢寡婦加算額および経過的寡婦加算額を除く)は、原則として、死亡した者の厚生年金保険の被保険者記録を基礎として計算した老齢厚生年金の報酬比例部分の額の『◯分の■』に相当する額である。◯と■に当てはまる数値は?
正解:4分の3(◯=4、■=3)

なぜ3/4なのでしょうか。
なにか根拠があるはずです。
そのあたりを深堀りしていきます。
まずはポイント解説を見ていきましょう。
✅ ポイント解説:
遺族厚生年金の支給額は、死亡した人が受け取るはずだった「老齢厚生年金の報酬比例部分」の4分の3(=3/4)です。
中高齢寡婦加算や経過的寡婦加算は、一定の条件を満たした場合に加算されるもので、基本額には含まれません。
深掘り考察!!:
なぜ「3/4」なのか?— 制度設計の根拠と背景
■ 制度の目的:生活保障の「補完的」役割
遺族厚生年金は、死亡した被保険者の遺族の生活を一定程度保障することが目的です。ただし、その保障は「生活の全てを賄う」ものではなく、「補完的」な役割を果たすように設計されています。
そのため、年金額の算出にあたっては、被保険者本人が受け取るはずだった老齢厚生年金(報酬比例部分)の全額ではなく、その4分の3という水準に抑えられているのです。
■ 法令上の根拠
遺族厚生年金の額は、以下の法律に基づいて定められています:
- 厚生年金保険法 第59条 「遺族厚生年金の年金額は、当該被保険者の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の4分の3に相当する額とする。」
これは、公平性と持続可能性の両立を図る観点から決められたと考えられます。
■ なぜ「全額」ではないのか?

- 被保険者が死亡した後も、遺族には生活費が必要ですが、本人が生活する必要がなくなったため、全額支給する必要がないという前提があります。
- また、遺族年金の受給対象者は通常、本人の配偶者や子など、生計を共同で立てていた家族であり、その生計維持の一部を支えるのが目的です。
■ なぜ「4分の3」なのか?数値の意味
- この「3/4(=75%)」という水準は、生活の維持に必要とされる家計の最低基準を想定し、死亡者1人分の生活費が不要になったと仮定して、家族が生活を続けられる水準を確保する目安とされています。
- また、同様の水準は他の社会保険制度(例えば遺族共済年金)にも見られ、制度間の整合性も意識されています。
■ 具体的な例で考えてみる
たとえば、ある被保険者が生存していた場合、老齢厚生年金の報酬比例部分が 月額12万円だったとします。
この方が亡くなった場合、その配偶者に支給される遺族厚生年金は:
- 12万円 × 3/4 = 月額9万円
これが基本額となり、配偶者の年齢や子の有無に応じて中高齢寡婦加算や加給年金が上乗せされる場合もあります。
中高齢寡婦加算とは?

■ 制度の趣旨
「中高齢寡婦加算」は、ある年齢以上の配偶者(主に妻)に対して生活を支えるために上乗せされる加算金です。
夫が死亡し、妻が40歳以上65歳未満であり、かつ子どもを養っていない場合に対象となります。
■ 加算の理由・背景
- 遺族基礎年金は、原則として子のある配偶者に支給されます。
- つまり、「子のいない配偶者(多くは妻)」は、夫が亡くなっても遺族基礎年金をもらえない。
- しかしこの世代(40〜64歳)の女性は、再就職が難しい、収入が少ないなどの社会的事情から、遺族厚生年金だけでは生活が苦しいことが多い。
- そこで、救済的な意味合いで追加の定額加算が用意されているのです。
🔸 支給額(2024年度)

- 603,600円/年(=50,300円/月)
- ※この額は毎年、物価や賃金の変動に応じて見直されます(年金額と同様に改定)。
🔸 支給される条件(ポイント)
条件 | 内容 |
---|---|
年齢 | 40歳以上65歳未満の妻 |
子の有無 | 子がいない(または遺族年金の対象にならない子) |
遺族年金 | 遺族厚生年金を受給していること |
婚姻関係 | 死亡時に法律上の婚姻関係があること(内縁関係は対象外) |
📌 具体的なケース:例
- 夫(会社員)が60歳で死亡
- 妻(当時45歳)、子どもは独立済み
- 妻は遺族基礎年金の対象にならない(子がいないため)
- この場合:
- 遺族厚生年金:例)月9万円
- 中高齢寡婦加算:月50,300円
→ 合計 約14万円弱/月 が支給され、老齢年金が受給できる65歳まで支えられます。
⚠️ 注意点
- 65歳になると、中高齢寡婦加算は終了します。
- その後は自分の老齢基礎年金や老齢厚生年金が受け取れるようになります。
まとめ・今回の学び:
◯3/4について
- 「3/4」という数字は、最低限の生活を支える社会保障としてのバランスを考慮した制度設計。
- 法律(厚生年金保険法)に明確な根拠がある。
- 遺族年金は亡くなった方の生活費を除いた家族の生活維持に焦点を当てている。
- 加算や他の年金との組み合わせで、生活全体をトータルに支える設計となっている。
◯中高齢寡婦加算について
- 中高齢寡婦加算は、「子がいない妻」への救済制度
- 年間 603,600円(月額約5万円)の定額加算
- 40歳以上65歳未満が対象(65歳到達で終了)
- 遺族厚生年金を受けていることが前提
次回予告:企業・個人事業主の年金における国民年金基金について

会社員であれば厚生年金に加入できますが、自営業者やフリーランスなどの第1号被保険者は、基礎年金(国民年金)のみで老後の生活設計を考えなければなりません。
そんな中、公的に認められた上乗せ年金制度が 【国民年金基金】です。
次回は、この国民年金基金の仕組みや加入のメリット、注意点などをわかりやすく解説します。

老後の安心をつくる選択肢の一つとして、ぜひ理解を深めておきましょう!
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