介護が必要になったとき、どんな費用がかかるのか。
その一部を支えてくれるのが「公的介護保険制度」です。
住宅の手すり設置や段差解消といった介護用住宅改修も対象となるこの制度ですが、すべての費用が無条件で支給されるわけではありません。
今回は、FP3級でも問われる住宅改修費用の支給条件と負担割合について深掘りし、実生活に役立つ知識へとつなげていきます。
今回の分野:
公的介護保険制度:サービス内容と費用負担
FP3級の「リスク管理」や「ライフプランニング」分野で出題される、介護保険の基本制度と費用の自己負担割合について学びます。
とくに「住宅改修の支援内容」は出題頻度が高いため、仕組みと条件をしっかり押さえておきましょう。
問題文の紹介:
公的介護保険において、要介護認定を受けた被保険者が居住で生活するための住宅改修費用は全額支給対象である。
〇か✗か?
注目するポイントはどこかわかりますか?
全額か、否か。という点ですよね。
正解はどちらか、わかったでしょうか?
正解と解説の要点:
それでは正解を見てみましょう。
公的介護保険において、要介護認定を受けた被保険者が居住で生活するための住宅改修費用は全額支給対象である。
〇か✗か? → 正解:✗
全額でないのであれば、被保険者が負担する費用はどのくらいになるのでしょうか。
今回のポイント解説を以下にまとめましたので、ご確認ください。
✅ ポイント解説:
- 公的介護保険制度では、要介護・要支援認定を受けた人が居住する住宅を改修する費用の一部を支給する制度があります。
- ただし支給は【原則9割(自己負担1割)】まで(所得により2割・3割負担もあり)。
- また、支給されるのは上限20万円までの住宅改修費のうち、自己負担を除いた部分(最大18万円など)です。
- つまり、全額支給されるわけではありません。
正解の内容は確認できました。
では、所得による負担割合の違いや具体例などを確認し、もう少し深堀りしてみましょう。
深掘り考察!!:
◆ 支給対象となる住宅改修の例:
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 滑り防止の床材変更
- 開き戸を引き戸に変更
- 洋式便器への交換
◆ 注意すべきポイント:
- 1人1住宅あたり支給上限は20万円(複数回に分けてもOK)
- 工事前にケアマネジャーの介護サービス計画(ケアプラン)への位置付けが必要
- 自治体への事前申請・承認が必要(事後申請は対象外になることも)
◆ 実生活での視点:
介護が必要になったとき、「住環境の整備」は重要です。
しかしその費用負担や申請手続きに関する知識がないと、せっかくの公的支援が受けられないケースもあります。
FPとしても、制度の利用条件を把握してアドバイスできることが信頼につながります。
🔍 公的介護保険における自己負担割合のしくみ
介護サービスを利用した際、利用者が負担する費用(自己負担)は、原則1割・2割・3割の3段階。
どの割合になるかは、被保険者本人の「合計所得金額」や「年金収入」などに基づいて判定されます。
ここでいったん、一号被保険者と二号被保険者の比較を図示しておきます。
一号被保険者と二号被保険者の比較

✅ 自己負担の3区分(令和6年4月時点の制度)
自己負担割合 | 判定の基準(おおまかに) | 該当する人の例 |
---|---|---|
1割負担 | 年金+その他所得の合計が年280万円未満(単身の場合) | 多くの年金生活者など |
2割負担 | 合計所得が一定額を超える人(例:年収280万円以上〜) | 比較的高収入の高齢者 |
3割負担 | 所得の多い現役並み所得者(例:年収340万円以上など) | 高所得世帯・現役並みの収入のある高齢者など |
※判定には「住民税課税状況」や「世帯合算」も影響する場合があります。
📘 解説補足
- 負担割合は毎年7月に見直される可能性があるため、実務では最新の基準確認が重要です。
- 扶養親族の有無や世帯全体の状況によっても変わるため、単純な年金額だけで判断できないこともあります。
- この自己負担割合は、【介護サービス利用時の費用(訪問介護・通所介護など)】に対して適用されます。
まとめ・今回の学び:
公的介護保険の住宅改修費用は、条件付きで一部支給される制度であることを学びました。
「全額支給される」という誤解は多く、FP3級の試験でも狙われやすいポイントです。
特に自己負担割合の比較で、理解が深まったのではないでしょうか。
大切なのは、対象者・対象工事・支給上限・申請手続きの4点をしっかり押さえること。
制度のしくみを理解することで、試験対策はもちろん、身近な家族やクライアントの将来設計にも活かせる知識になります。
次回予告:「雇用保険の基本手当の受給要件」
次回のテーマは、働く人のセーフティネットとして知られる「雇用保険」の基本手当について取り上げます。
転職や離職の際に支給される「基本手当」には、どのような受給条件があるのでしょうか?
被保険者期間や離職理由による違い、給付制限の有無など、知っておきたいポイントを丁寧に整理し、試験対策にも役立つ形で深掘りします。
「いざというとき」のために、自分の権利をしっかり理解しておきましょう!
お楽しみに!
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