「親から100万円もらった」「祖父母からお祝いをもらった」——
こんなとき、税金のことまで考える人は少ないかもしれません。
でも実は、人から財産をタダでもらうと「贈与税(ぞうよぜい)」がかかることがあります。
そして多くの人がつまずくのが、父と母など複数の人から贈与を受けたときの基礎控除の考え方です。
「2人からもらったんだから、税金がかからない枠も2倍になるんじゃないの?」
そう考えてしまう気持ち、よくわかります。でも、ここには大きな落とし穴があるんです。
今回は、FP試験でもよく出題される暦年課税の基礎控除110万円の仕組みを、
具体例をまじえながら一緒に解き明かしていきましょう!
⭐️ この記事を読むと、こんな疑問がスッキリします。
- 複数の人からもらうと、基礎控除も増えるの?
→ いいえ。もらった人1人につき、1年で110万円が上限です。 - そもそも基礎控除110万円って何?
→ 1年間(1〜12月)で、この金額までの贈与には税金がかからないというラインです。 - 贈与税はどうやって計算するの?
→ 「合計 → 110万円を引く
→ 税率をかける」の3ステップです。
前回は、教育資金をまとめて贈与するときの特別な非課税枠を取り上げました。
あれは「教育のための特別ルール」でしたが、今回はもっと基本となる、
毎年使える110万円の基礎控除のお話です。
特例の前に、まずこの土台をしっかり押さえておきましょう。
前回の記事はこちら
▶【教育資金一括贈与の非課税】上限1,500万円の理由と学校以外500万円の使い分け_間違いから学ぶFP3級_第79回
📘 今回の分野:相続・事業承継

今回のテーマは、相続・事業承継分野の「贈与税の基礎控除」です。
人から財産をタダでもらうとかかるのが贈与税。
実は、親からもらうお金にもかかることがあるって知っていましたか?
でも、普段の生活で贈与税を意識している人は少ないですよね。
なぜ「かかるはず」の贈与税が、実際にはかかっていないことが多いのか。
その仕組みを、問題文を通して見ていきましょう。
- 分野:相続・事業承継(贈与税)
- テーマ:暦年課税と基礎控除額
- 出題頻度:★★★(よく出る)
- 関連キーワード:110万円、基礎控除、複数の贈与者、合算課税、受贈者単位
❓️ 問題文の紹介
- 誰が:子(=もらった人=受贈者)
- 状況:同じ年(1月〜12月)に、父と母のそれぞれから贈与を受けた
- 税の計算方式:暦年課税で贈与税を計算する
- 問われている内容:課税価格から差し引ける基礎控除額は、最高で220万円になるか
◯か✗か?
贈与してくれた人が2人いるんだから、控除も2人分使えそう…と思ってしまいませんか?
「あげた人の数」で増えるのか、それとも別の数え方なのか、ここが迷いやすいポイントです。

もし「あげた人」を基準に数えるなら、人数が多いほど得になっちゃいますよね。
さすがにそれは不公平そう…ということは、答えは✗かな?
✅ 正解と解説の要点:基礎控除は「もらった人」単位で110万円

- 誰が:子(=もらった人=受贈者)
- 状況:同じ年(1月〜12月)に、父と母のそれぞれから贈与を受けた
- 税の計算方式:暦年課税で贈与税を計算する
- 問われている内容:課税価格から差し引ける基礎控除額は、最高で220万円になるか
◯か✗か?
→正解:✗(バツ)
✅️ポイント解説
- 正解:✗(バツ)
- 暦年課税の基礎控除額は、受贈者(もらった人)1人につき、年間110万円です。
- 父と母など複数の人から贈与を受けても、
控除は合計110万円が上限で、220万円にはなりません。 - つまり「あげた人の数」ではなく「もらった人」を基準に数えるのがポイントです。
<補足>
ポイントは「もらった人を基準に、1年で110万円」という数え方です。
あげた人が何人いても、もらった側の合計が110万円までなら非課税。
逆に、父・母・祖父母の3人から合わせて150万円もらえば、
150万円 − 110万円 = 40万円が課税対象になります。

予想どおり✗でした!
「もらった人ひとりにつき110万円」と覚えておけば、もう間違えません。
📚 出典・参考
- 国税庁タックスアンサー No.4410「複数の人から贈与を受けたとき(暦年課税)」
🔗 関連記事の紹介
贈与税は「基礎控除 → 計算 → 納付」や「相続との関係」など、
いくつものルールがつながっています。
今回のテーマと合わせて読みたい記事を紹介します。
「毎年110万円ずつ贈与すれば非課税」と考えるときに、
知らないと落とし穴になるのが定期贈与です。
仕組みを押さえておくと安心です。

暦年贈与を活用するときに必ず知っておきたいのが、相続前の贈与の“持ち戻し”ルールです。
贈与と相続のつながりが見えてきます。

基礎控除を超えて贈与税がかかったあと、「どうやって納めるのか」も試験では問われます。
流れの最後まで確認しておきましょう。


今回の基礎控除を入り口に、贈与のいろいろなパターンを少しずつ広げていきましょう!
🔍 贈与税の基礎控除について_深掘り考察!!
今回は、以下の3点について深掘りしていきます。
- 贈与税の基礎控除って何?
→ 1年間(1〜12月)で110万円までの贈与には税金がかからない、ということ。 - 110万円の根拠と背景は?
→ 一般の家庭が普通に助け合うくらいの金額、と国が考えているライン。 - 贈与税の計算方法
→ 「合計 → 110万円を引く → 税率をかける」の3ステップ。
贈与税の基礎控除とは?非課税になるボーダーライン

贈与税の「基礎控除(きそこうじょ)」とは、
「この金額までは税金がかかりませんよ」
という、税金がかからないボーダーラインのことです。
身近なたとえでいうと、スーパーの「○円以上で送料無料」のラインに似ています。
あるラインを超えなければ追加の負担はゼロ。
でも超えた分だけ負担が発生する、というイメージです。
贈与税の場合、そのラインが 1年間で110万円。
たとえば…
- お父さんから50万円
- お母さんから60万円
- = 合計110万円
この場合、基礎控除が110万円なので、110万円 − 110万円 = 0円。贈与税はかかりません。
一方で、
- お父さんから100万円
- お母さんから100万円
- = 合計200万円
この場合は、200万円 − 110万円 = 90万円 が課税対象です。
ここで大事なのは、「父から」「母から」というあげた人の人数は関係なく、
もらった人1人あたりで110万円という点です。
なお、常識的な範囲のお年玉やお祝い金などは、
そもそも贈与税の対象にならないケースがほとんどです。
ただし、1人から何百万円ももらった場合などは、きちんと申告が必要になります。
110万円の根拠と背景は?なぜこの金額なのか

「110万円って、どうしてその金額なの?」と気になりますよね。
これはなんとなく決めた数字ではなく、ちゃんと理由があります。
そもそも贈与税は、お金持ちの家が、生きているうちに財産をどんどんタダで子や孫に渡して、相続税を逃れるのを防ぐために作られた税金です。
生きているうちの財産移動にも税金をかけることで、相続税とのバランスをとっているんですね。
とはいえ、お年玉・入学祝い・ちょっとした援助にまで税金をかけたら、
生活が窮屈になってしまいます。
そこで「ある程度の金額までは課税しない」という非課税ラインが設けられました。
それが年間110万円です。
これは、信号機のように「ここまではセーフ、ここからはアウト」を分ける目印のようなもの。
- ちょっとした贈り物には税金をかけない(生活への配慮)
- でも大きなお金の移動にはきちんと課税する(公平さの確保)
このバランスをとるためのラインが110万円、というわけです。
長い間ずっと同じ金額が使われ続けている、税制上の安定した基準でもあります。
贈与税の計算方法:たった3ステップ

贈与税の計算は、むずかしそうに見えて、実は3ステップです。
- その年にもらった金額を 合計する
- そこから 基礎控除110万円 を引く
- 残った金額に 税率をかけて 税額を出す
これは、割引クーポンを先に使ってから値段を計算するのと同じ流れです。
先に110万円ぶんを差し引いてから、残りに税率をかけるイメージですね。
<具体例>
2025年に、お父さんから100万円・お母さんから150万円、合計250万円をもらった場合👇
- STEP1:100万円 + 150万円 = 250万円
- STEP2:250万円 − 110万円 = 140万円(これが課税価格)
- STEP3:140万円 × 10% = 14万円
税率は、金額が大きくなるほど高くなる「超過累進課税」という仕組みで、
下の速算表を使います(一般税率の場合)。
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | 0円 |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 |
| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
| 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
| 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
| 3,000万円超 | 55% | 400万円 |
もう少し大きい金額でも見てみましょう。
- 300万円もらった場合:300万円 − 110万円 = 190万円 → 190万円 × 10% = 19万円
- 500万円もらった場合:500万円 − 110万円 = 390万円 → 390万円 × 20% − 25万円 = 53万円
複数の人からもらったときも、まず全部を合計してから110万円を引くのがポイント。
ここでも基準は「もらった人」です。
📚 出典・参考
- 国税庁タックスアンサー No.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」
- 国税庁タックスアンサー No.4402「贈与税がかかる場合」
⭐️ 【ここまでで得られた知識】
- 贈与税の基礎控除は、1年間にもらった財産の合計から 110万円 を差し引ける制度。
あげた人が何人いても、もらった人1人につき年間110万円が上限。 - 110万円という金額は、「ちょっとした贈り物には課税しない/大きな移動には課税する」というバランスのラインとして設定されたもの。
- 贈与税の計算は「合計 → 110万円控除 → 税率(速算表)」の3ステップ。
複数人からもらっても、まず全部を合計してから110万円を引く。
よくあるケアレスミス:複数人からの贈与と基礎控除
ミス①:贈与者ごとに110万円もらえると思い込む
なぜ間違えるのか?
「父から110万円」「母から110万円」と、ついあげた人を基準に数えてしまうからです。
これだと「2人なら220万円」「祖父母まで入れれば660万円」と、どんどん枠が増えていく気がしてしまいます。
正しい考え方
基礎控除は もらった人1人につき年間110万円 が上限。
あげた人が何人いても、もらった側の合計が110万円を超えれば、その超えた分が課税対象です。

贈与してくれる人が多い家ほど得をする、なんてことになったら不公平ですよね。
だから「もらった人」が基準なんです。
ミス②:「あげる人」が110万円まで非課税であげられる枠だと勘違いする
なぜ間違えるのか?
「110万円まではあげても大丈夫」という言い方をよく耳にするので、あげる人の枠だと逆に勘違いしてしまうからです。
正しい考え方
110万円は、あくまで「もらった人」が1年で受け取った合計に対する控除です。
あげる側が複数の人に贈与する場合は、もらう人ごとに110万円で考えます。

主語はいつも「もらった人」。
ここを固定しておくと混乱しません。
ミス③:「1年(1〜12月)」の区切りを忘れる
なぜ間違えるのか?
「110万円」という数字だけを覚えて、「1年間で」という条件がスッポリ抜けてしまうからです。
正しい考え方
暦年課税は、1月1日から12月31日までの1年単位。
年が変われば、また新たに110万円の枠が使えます。

「110万円」とセットで「1年ごと」も覚えておきましょう。
📋 ケアレスミスまとめ
| よくある誤解 | 正しい考え方 |
|---|---|
| 父と母からなら 110万円×2=220万円 まで非課税 | もらった人1人につき、 年間110万円が上限 |
| 110万円は「あげる人」が 非課税であげられる枠 | 110万円は「もらった人」の 受取合計に対する控除 |
| 110万円は年をまたいでも 合算される | 1月〜12月の1年ごと。 年が変われば再び110万円使える |
まとめ・今回の学び:基礎控除110万円は受贈者単位
今回学んだことを振り返りましょう📝
⭐️ 【得られた知識(まとめ版)】
- 基本の仕組み:
贈与税の基礎控除は、1年間(1〜12月)にもらった財産の合計から110万円を引ける制度。 - 用語の違い:
「贈与者(あげる人)」が何人いても関係なく、「受贈者(もらう人)」1人につき年間110万円が上限。 - 試験頻出ポイント:
「父と母から110万円ずつで220万円まで非課税」は定番のひっかけ。
正しくは110万円が上限。 - 実生活への応用:
毎年110万円までならコツコツ非課税で贈与できる(暦年贈与)。
ただし定期贈与や生前贈与加算には注意。
「2人からもらったら控除も2倍」と感じてしまうのは自然なこと。
でも、暦年課税の基礎控除はあくまで「もらった人を基準に、1年で110万円」。
長い名前にまどわされず、主語を「もらった人」に固定すれば、もう迷いません。
複数の贈与者から受け取ったときは、まず全部を合計し、そこから110万円を1回だけ引く。
これさえ押さえれば、計算問題でもつまずきません。

複数人からの贈与は試験の定番ひっかけです。
今日のポイントを押さえたあなたは、もう一歩リードしていますよ。
続いて次回予告です。
次回予告:相続時精算課税制度

次回は、贈与税のもう一つの柱である 「相続時精算課税制度」 を取り上げます。
この制度は暦年課税とちがって、ある程度まとまった金額を非課税で贈与できるのが特徴です。
次回学べるのは、特別控除額と税率の仕組みという2つの重要キーワードです。
次回の記事はこちら
▶【相続時精算課税】特別控除額2,500万円と税率20%の意味を徹底解説_間違いから学ぶFP3級_第81回

次回は2,500万円という大きな数字が登場します。
今回の110万円と混同しないよう、セットで整理していきましょう!
お楽しみに!


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