「一級建築士って、実際どれくらい難しいの?」
これから目指す方も、すでに勉強中の方も、一番気になるのはここだと思います。
先に正直に言います。
私は一級建築士に合格するまで5年かかりました。
学科試験に4回挑戦し、設計製図試験は2回目でようやく合格。
学科では「計画」と「環境・設備」の足切りも経験しています。
つまりこの記事は、ストレート合格した天才の話ではありません。
たくさん間違えて、遠回りして、それでも合格までたどり着いた側の話です。
だからこそ、合格率の数字の「裏側」にあるリアルな難しさと、
それでも挫折しないためのコツを、本音でお伝えできると思っています。
最新(令和7年)の試験データと、私の5年間の実体験をもとに解説していきます。
📘 この記事でわかること
- 一級建築士の最新合格率(令和7年:総合11.4%)と過去5年の推移
- 合格率が低くなる「4つの理由」(試験の仕組みから解説)
- 二級建築士・宅建士など他資格との難易度比較
- 学科4回・製図2回、5年かかった私のリアルな合格体験
- 遠回りした私だから言える「挫折しないコツ」
結論:一級建築士の合格率は約11%(令和7年・最新データ)
まず結論からお伝えします。
令和7年(2025年)の一級建築士試験の総合合格率は11.4%でした。
受験した人のうち、最終的に合格できるのは約9人に1人という計算です。
令和7年(最新)の試験結果まとめ
| 試験 | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 学科の試験 | 27,489人 | 4,529人 | 16.5% |
| 設計製図の試験 | 11,381人 | 3,988人 | 35.0% |
| 総合 | ― | ― | 11.4% |
一級建築士試験は「学科の試験」と「設計製図の試験」の2段階です。
学科に合格した人だけが製図に進めるため、両方を突破して初めて合格となります。
過去5年の合格率の推移
| 年 | 学科 | 製図 | 総合 |
|---|---|---|---|
| 令和3年(2021) | 15.2% | 35.9% | 9.9% |
| 令和4年(2022) | 21.0% | 33.0% | 9.9% |
| 令和5年(2023) | 16.2% | 33.2% | 9.9% |
| 令和6年(2024) | 23.3% | 26.6% | 8.8% |
| 令和7年(2025) | 16.5% | 35.0% | 11.4% |
総合合格率はおおむね9〜11%前後で推移しています。
年によって学科と製図の合格率は上下しますが、「最終的に受かるのは約1割」
という構図はずっと変わっていません。
令和7年は学科が大幅に難化
直近の令和7年試験では、学科の合格率が前年の23.3%から16.5%へと6.8ポイントも低下しました。
合格者数4,529人は過去5年で最少です。
しかも、総得点の合格基準点は「概ね90点程度」が基本水準とされているところ、令和7年は総じて難度が高かったため88点に引き下げ(下方補正)されています。
基準点を下げてもなお合格率が16.5%だった、ということです。
「年々簡単になっている」ということはなく、むしろ油断できない試験だと言えます。
【出典】
- 国土交通省 報道発表「令和7年一級建築士試験『学科の試験』の合格者を決定〜4,529人の合格者、16.5%の合格率〜」(令和7年9月3日)
- 国土交通省 報道発表「令和7年一級建築士試験『設計製図の試験』の合格者を決定」
(令和7年12月)- 公益財団法人 建築技術教育普及センター「一級建築士試験 試験結果」
なぜ難しいのか?難易度の中身を4つに分解
合格率が約11%と聞くと「とにかく難しいんだな」で終わってしまいがちです。
でも、何がどう難しいのかを分解して知っておくと、対策の立て方がまったく変わります。
私が5年間の受験生活で痛感した「難しさの正体」は、次の4つです。
① 試験範囲がとにかく広い(学科5科目・125問)
学科試験は次の5科目・計125問で構成されています。
| 科目 | 問題数 | 内容のイメージ |
|---|---|---|
| 学科Ⅰ:計画 | 20問 | 建築計画・建築史・都市計画など |
| 学科Ⅱ:環境・設備 | 20問 | 換気・採光・空調・電気設備など |
| 学科Ⅲ:法規 | 30問 | 建築基準法・関係法令(法令集持込可) |
| 学科Ⅳ:構造 | 30問 | 力学計算・各種構造・材料 |
| 学科Ⅴ:施工 | 25問 | 工事の管理・各工事の手順 |
設計・設備・法律・構造力学・現場の施工まで、建築に関わるほぼすべての分野が出題範囲です。
仕事で設計をしている人でも、自分の専門外の科目は一から勉強し直すことになります。
私は構造設計が本業なので「構造」は得意でしたが、それでも他の4科目に足を引っ張られ続けました。
得意科目があっても、それだけでは受からないのがこの試験です。
② 「足切り制度」がある(科目別基準点)

一級建築士の学科試験には、総得点の基準点とは別に、
科目ごとの基準点(いわゆる足切り点)があります。
どういうことかというと、たとえ総得点が合格ラインを超えていても、
どれか1科目でも基準点を下回ると、その時点で不合格になるのです。
💬 こいちろの体験談
私が最初に足切りで落ちたのは「計画」でした。実は計画、特に建築史が昔から大の苦手で。建築様式や、誰がどこに何を建てたか…似たような名前が並ぶあの暗記が、とにかく苦痛だったんです。構造設計が本業の私は、理屈を積み上げて答えを出す科目は得意でも、興味の持てないことをひたすら丸暗記するのが本当に向いていませんでした。
だから結果を見たときも、正直「やっぱり足切りか〜」という感じ。総得点もまだ足りていなかったし、悲劇というより順当な不合格でした。でも今振り返れば、これは「苦手科目から逃げていたツケ」がそのまま出ただけ。足切り制度は、その逃げを一番きびしく突いてくる仕組みなんです。
「苦手科目を捨てて得意科目で稼ぐ」という作戦が通用しない。
5科目すべてで基準点を確保する必要があることが、勉強時間を押し上げる大きな要因です。
③ 製図は6時間半の一発勝負
学科を突破しても、次に待っているのが「設計製図の試験」です。
与えられた課題(令和7年は「庁舎」)に対して、6時間半ぶっ通しでエスキス(プラン検討)から図面・記述まで仕上げる、体力勝負の試験です。
しかも答案は機械採点ではなく、ランクⅠ〜Ⅳの4段階で評価され、
合格(ランクⅠ)できるのは例年3割前後。
ほんの少しの読み落としや法規違反が、一発でランクⅣ(重大な不適合)につながることもあります。
💬 こいちろの体験談
私は4年目でようやく学科を突破し、初めての製図に挑みました。結果は不合格。でも、図面は最後まで描き切ったんです。それなのに落ちた。届いた通知は「合格まであと一歩」。つまり、あと少しのところで振り落とされたわけです。
一番つらかったのは、何が決定的な原因だったのか、自分でもはっきりわからなかったこと。学科は「何点足りなかった」と数字で見えますが、製図は採点基準が公開されません。描き切っても落ちるし、その理由も教えてもらえない。「あと一歩」のその一歩がどこなのか、わからないまま次の年に向き合うしかない。これが製図試験の、本当に怖いところでした。
1年に1回しかチャンスがなく、学科合格による製図の受験資格にも期限があります。
「学科に受かってからが本番」と言われるゆえんです。
④ 働きながら勉強時間を確保するのが難しい
一級建築士の合格に必要な勉強時間は、一般に1,000〜1,500時間が目安と言われます(初学者の場合)。
仮に1,000時間を1年で確保しようとすると、1日あたり約2.7時間。
建築業界で働きながらこれを毎日続けるのは、正直かなり大変です。
残業や現場対応で計画が崩れる日も多く、「勉強時間の確保」自体が試験の一部だと私は思っています。
受験生の多くは社会人です。
令和7年の学科合格者を見ても、建設業や建築士事務所などで働く人が大半を占めています。
みんな同じ条件で苦しみながら戦っている試験です。
他資格との難易度比較(二級建築士・宅建士など)
「合格率11%」がどれくらい難しいのか、ほかの資格と比べてみるとイメージしやすくなります。
| 資格 | 合格率(直近) | 勉強時間の目安 |
|---|---|---|
| 一級建築士 | 11.4%(令和7年・総合) | 1,000〜1,500時間 |
| 二級建築士 | 22.6%(令和7年・総合) | 500〜700時間 |
| 宅建士 | 18.7%(令和7年) | 300〜400時間 |
| FP3級 | 80%前後 | 80〜150時間 |
※合格率は各試験実施機関の公表値。
勉強時間は一般に言われる目安です。
こうして並べると、一級建築士の立ち位置がよくわかります。
- 二級建築士:
同じ建築士試験でも、合格率は一級の約2倍。
扱える建物の規模に制限がある分、試験範囲・難度ともに一段やさしくなります。 - 宅建士:
不動産系の人気国家資格。
合格率は18.7%と一級建築士より高めですが、受験者数が約24.5万人と桁違いに多く、層の厚い競争試験です。 - FP3級:
当ブログのメインテーマでもあるFP3級は合格率80%前後。
しっかり対策すれば確実に取れる「入門資格」です。
数字だけ見ると一級建築士が圧倒的に難しく見えますが、注意点がひとつ。
一級建築士の受験者は、建築系の学歴や実務経験を持つ人たちです。
その母集団の中での合格率11%なので、体感の難しさは数字以上と言っていいと思います。
私の合格までの道のり:学科4回・製図2回の5年間

ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
データでは見えない「合格率11%の試験を、普通の社会人が突破するまで」の実録です。
まず、私の5年間の戦績はこちらです。
| 年 | 学科 | 製図 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 不合格(準備不足で総得点届かず) | ― | ✕ |
| 2年目 | 不合格(計画で足切り) | ― | ✕ |
| 3年目 | 不合格(環境・設備で足切り) | ― | ✕ |
| 4年目 | 合格 | 不合格(あと一歩) | ✕ |
| 5年目 | (免除) | 合格 | ◎ 合格 |
こうして並べると順調に見えるかもしれませんが、中身はずっと回り道の連続でした。
順番に振り返ります。
① 1年目の失敗:環境は整えたのに、自分が走っていなかった
実は私、1年目から資格学校の日建学院に通っていました。
「学校に通っているんだから大丈夫だろう」と、心のどこかで思っていたんです。
でも結果は、準備不足で総得点すら届かない不合格。
正直に言えば、仕事の忙しさを言い訳にして、勉強に身が入っていませんでした。
お金を払って環境は整えたのに、それを活かす自分がいなかった。
1年目は「受験した」というだけに近い状態だったと思います。
② 苦手科目の壁:足切りで散った2〜3年目に学んだこと
2年目は「計画」、3年目は「環境・設備」で足切り。
苦手科目の壁に、2年続けて跳ね返されました(計画の話は先ほどの体験談のとおりです)。
この2年で骨身にしみたのは、一級建築士の学科は「総合力の試験」だということ。
苦手科目から逃げた分だけ、合格は遠ざかります。
逃げて0点に近づくのが、一番ダメなパターンなんです。
そして4年目、私はようやく腹をくくりました。
「全科目で点を取ろうとするのをやめる」ことです。
私の戦略はこうです。
一番の得点源は、本業でもある構造。ここで大きく稼ぐ。
施工も8割は取れるよう仕上げる。
法規は、正直に言うと高さの計算問題は最初から捨てました。
法令集を引けるとはいえ全問取りにいくと時間が足りません。
それに、高さ計算は理解度を上げようとすればそれなりに勉強時間を食います。
私はその時間を割くことさえ惜しいと感じていました。
同じ時間を構造の得点固めや、条文を読み込めば確実に取れる法規の問題に回したほうが、総得点は確実に伸びる。
だから「捨てる」と決めたんです。
その代わり、条文を引けば取れる問題は徹底的に読み込み、ここは大きく伸ばせました。
そして苦手な計画・環境設備。
ここはもう「足切りラインを超えればいい」と割り切りました。
満点も高得点もいらない。
逃げて0点に近づくのだけは絶対に避ける、その一点に集中したんです。
1年目は苦手から逃げて全体が沈み、2〜3年目は足切りで散りました。
でも「捨てる問題」と「死守する科目」を仕分けた瞬間から、
限られた勉強時間がやっと噛み合い始めた。
これが、4年目の学科突破につながったいちばん大きな変化でした。
③ 日建学院に通って感じた「学校の価値」と「自分次第」という現実
5年間日建学院に通い続けた今、その価値をはっきり言葉にできます。
学校に通う一番のメリットは、講義の中身そのもの以上に、強制的に勉強のペースと場所を作れることだと思っています。
働きながらの受験で一番難しいのは、意志の力だけで勉強を続けることだからです。
ただ、正直な現実もお伝えしないといけません。
学校に通えば自動的に受かるわけではない、ということです。
その証拠が、まさに1年目の私でした。
変わったのは2年目以降。
私は朝、会社に早く行って勉強する習慣をつけ、夜は仕事のあとに机に向かうようになりました。
学校の自習室も、行ったり行かなかったり。
完璧なルーティンではありません。
それでも、用意された環境を自分の意志で使うようになって初めて、勉強が回り始めたんです。
「結局は自分次第」とは、この経験から心底実感したことです(具体的な1日の過ごし方は、次のH2⑤で詳しくお話しします)。
もうひとつ、学校で本当に助かったのが製図の添削指導でした。
製図は採点基準が公開されず、自分では「何が足りないのか」がわかりません。
それをプロの目で具体的に指摘してもらえるのは、独学では絶対に得られない価値でした。
④ 製図2回目:原因がわからないなりに、できることを全部やった
「あと一歩」の正体がわからない。
これが一番厄介でした。
でも、立ち止まっていても始まりません。
私は、自分でコントロールできる部分の精度を、片っ端から上げることにしました。
ひとつは、製図のスピードと完成度。
描き切れてはいましたが、もっと早く正確に仕上げられれば、見直しや記述に回す時間が増えます。
土台を底上げしました。
もうひとつは、計画の要点・記述を丁寧に書くこと。
図面が描けていた以上、差がつくとしたら記述だろう、と。
1回目は手薄だった部分に、意識して力を入れました。
そして本番では、肝を冷やす場面もありました。
エスキスを終えた段階で、敷地条件の中に「車両の通行に時間制限がある通路」を見落としていたことに気づいたんです。
一瞬で血の気が引きました。
「ここで条件違反が見つかったら不合格、また学科からやり直しか…」と、あの嫌な記憶が一気によみがえって。
でも、そこで踏みとどまりました。
よく読むと、その通路は完全に通行不可なわけではなく、時間制限があるだけ。
だったらプランを描き直す必要はない。
「搬入車両はこの時間帯のみ通行する」といった注意書きを急いで書き足すことで、条件をクリアできました。
エスキスをやり直さずに、記述で辻褄を合わせて切り抜けたんです。
パニックの中でこの判断ができたのは、5年間で条件文の読み方が身についていたからだと思います。
そして最後は、正直に言えば運もありました。
2回目の本試験で、計画の要点に構造の記述(たしか免震に関する内容)が出たんです。
構造設計を本業にする私にとって、これ以上ない追い風でした。
多くの受験生が身構える構造記述を、本職の知識でしっかり書くことができた。
ただ、これを単なる幸運で片づけたくはないんです。
出題が構造だったのは確かに運。
でも、その運が巡ってきたときに掴めるだけの専門性を、私は本業で積み上げてきていた。
学科では得意なはずの構造すら他科目に足を引っ張られ続けた5年間。
その遠回りの最後に、自分の専門性がそのまま武器になって、合格をたぐり寄せてくれた。
そんな試験でした。
⑤ 5年かかった私だから言える「挫折しないコツ」
不合格通知を4回受け取った人間として、断言できることがあります。
この試験で一番怖いのは、難易度そのものではなく、途中でやめたくなる気持ちです。
私が5年間でたどり着いた「挫折しないコツ」は次の3つです。
- 「今年ダメでも続ける前提」で計画を立てる:
合格率11%の試験で、1回勝負の背水の陣を敷くと、落ちた瞬間に心が折れます。
複数年計画は逃げではなく戦略です。 - 苦手科目は「足切り超え」だけに割り切る:
満点を目指さない。
でも逃げて0点にも近づかない。
「死守する最低ライン」を決めることが、限られた時間を回すコツです。 - 環境は、自分の意志で使ってこそ活きる:
学校でも自習室でも、用意するだけでは意味がない。
私は朝の時間を勉強にあてる習慣をつけて、ようやく勉強が回り始めました。
完璧じゃなくていい。
自分の生活に合うやり方を見つけることが大事です。
遠回りした5年間は、いま振り返れば「間違いから学ぶ」を地で行く時間でした。
そしてこの経験が、まさに当ブログのコンセプトにつながっています。
合格まで何年・何時間かかる?働きながらの現実的なスケジュール
「結局、どれくらい勉強すれば受かるの?」――これも気になるところだと思います。
一般的な目安と、私自身の働きながらのリアルな1日を、両方お伝えします。
① 勉強時間の目安は1,000〜1,500時間
初学者が一級建築士に合格するために必要な勉強時間は、一般に1,000〜1,500時間が目安と言われます。
これを期間に換算すると、こんなイメージです。
| 1日の勉強時間 | 1,000時間に必要な期間 |
|---|---|
| 2時間 | 約17か月(1年5か月) |
| 3時間 | 約11か月 |
| 4時間 | 約8か月 |
学科試験はおおむね7月に実施されます。
本気で1年合格を狙うなら、前年の秋〜冬にはスタートを切り、
毎日2〜3時間を積み上げていく計算になります。
ただ、これはあくまで「机上の計算」です。
働きながらこの時間を毎日きっちり確保するのが、どれだけ大変か。
ここからは、私の実際の1日をお話しします。
② 私の1日:朝は「回転数」、夜は「じっくり法規」
2年目以降、勉強が回り始めた頃の私の1日は、こんなリズムでした。
朝(会社に早く行って1〜1.5時間)
出社前に会社で勉強時間を確保していました。
ここでやるのは計画・環境設備・施工の3科目。
理由は、この3つは「回転数」で稼ぐ科目だからです。
問題をテンポよく何問も解いて、知識の抜けを埋めていく。
朝の限られた時間にぴったりでした。
得意な構造は、正直そこまで時間をかけなくても問題が解けたので、
朝のメニューからは外していました。
夜(19時頃〜21〜22時頃)
仕事のあとは、法規をじっくり。
法規は法令集を引きながら解くので、1問にかかる時間が長い科目です。
だから、朝のスキマ時間ではなく、まとまった時間が取れる夜に回していました。
日建学院の講義が1〜2時間ある日もあり、自習室は行ったり行かなかったり。
毎日完璧にこなせたわけではありません。
ポイントは、科目の性質で朝と夜を使い分けたことです。
- 回転数で稼ぐ科目(計画・環境設備・施工) → 朝のスキマ時間
- 1問が重い科目(法規) → 夜のまとまった時間
- 得意科目(構造) → 時間をかけすぎない
苦手科目から逃げず、でも全部に同じ時間を割くのでもない。
「いつ・どの科目をやるか」まで含めて時間を設計する。
これが、限られた勉強時間で総得点を伸ばすコツでした。
💬 こいちろの本音
「夜にまとめて何時間も」より、「朝の1時間を毎日」のほうが、働きながらだと続けやすいというのが私の実感です。朝は仕事の電話も来ないし、頭もクリア。短くても毎日触れることで、知識が定着していきました。
③ 「1年で受かる」より「続けられる計画」を
ここまで読んで、「自分にそんな時間が取れるだろうか」と不安になった方もいるかもしれません。
でも、思い出してください。
私は合格まで5年かかっています。
1年で一発合格できる人は、正直ひと握りです。
働きながらなら、2〜3年かけて合格するのはまったく珍しくありません。
大事なのは、最初から「複数年かかるかもしれない」と織り込んで計画を立てること。
1年勝負の背水の陣だと、1回落ちただけで心が折れます。
「今年は学科を確実に通す」「来年で製図を仕上げる」というように、自分のペースで続けられる計画こそが、合格率11%の試験を突破する一番の近道だと、5年かかった私は思っています。
一級建築士は、5年かける価値があるのか?私の本音

ここまで難しさを語ってきて、最後に正直な疑問にぶつかります。
「そこまで苦労して取る価値、本当にあるの?」
ネットの記事を見ると、たいてい「年収が上がる」「キャリアの幅が広がる」と書いてあります。
まずは一般的に言われている価値を整理して、そのあとで、5年かけた私自身の本音をお話しします。
① 制度の上では、たしかに価値が大きい
一般論として、一級建築士の価値はよく次のように語られます。
- 設計できる建物に制限がない:
二級建築士は住宅や小規模な建物が中心ですが、一級建築士は学校・病院・大型商業施設まで、規模や用途を問わず設計・工事監理ができます。 - 建築士事務所を開設できる:
独立して自分の事務所を構える道が開けます。 - 年収の相場は高め:
各種統計では、一級建築士の平均年収はおおむね600〜700万円前後とされ、給与所得者全体の平均(約458万円)を上回ります。
大手や管理職では1,000万円を超える人もいます。
【出典】年収データは厚生労働省「賃金構造基本統計調査」等の公的統計に基づく一般的な水準
数字やできることの幅だけ見れば、「難関なだけの価値はある」と言えそうです。
ただ、ここで知っておいてほしいのは、この価値の出方は人によってかなり違うということです。
ここからは、私自身の実感をお話しします。
② 収入面は、立場によって差が出る(過度な期待は禁物)
まず正直にお伝えすると、私の場合、一級建築士を取ったからといって、すぐに収入が大きく変わったわけではありませんでした。
会社の規模や制度によっては、資格を取っても資格手当がつかないケースがあります。
私の環境もそうでした。
だから、「合格すれば自動的に年収アップ」と思い込んでいると、
人によっては拍子抜けするかもしれません。
一方で、独立する人・転職する人・資格手当のある会社に勤める人にとっては、
収入に直結する大きな武器になります。
同じ資格でも、置かれた立場によって価値の出方が変わる、ということです。
💬 こいちろの本音
ネットでよく見る「一級建築士は年収アップ!」という言葉は、半分本当で半分は条件つきだと思っています。資格そのものが自動でお金をくれるわけではなく、それをどう使うか(独立・転職・社内でのキャリア)次第。だからこそ、お金「だけ」を目的にすると、少し期待とズレるかもしれません。
③ それでも「取ってよかった」と心から思える理由
じゃあ、5年もかけて意味がなかったのか。
いいえ、まったくそんなことはありません。
私は「取ってよかった」と心から思っています。
お金とは別のところに、確かな価値があったからです。
ひとつは、毎年のプレッシャーから解放されたこと。
資格を取るまでは、結果が出るたびに「今年はどうだった?」と聞かれ続けます。
期待してくれている人がいるからこそですが、その気持ちに応えたいという思いと、すぐに応えられないもどかしさを、何年も抱えてきました。
合格して、ようやくその肩の荷を下ろせたんです。
もうひとつは、自分のライフプランが前に進んだこと。
私は「これに受かるまでは、次のステップに進まない」と自分で区切りを決めていました。
だから合格は、単なる資格取得以上に、人生の歯車を動かす大きな一歩になりました。
そして何より大きいのが、図面に自分の名前を残せることです。
一級建築士は、その名のもとに設計の責任を負います。
裏を返せば、自分が関わった建物に、自分の名前が刻まれるということ。
「これは自分の仕事だ」と胸を張れる。
この誇りと自信は、お金には換えられない、この資格ならではの価値だと思っています。
💬 こいちろの本音
「価値があるか」と正面から聞かれると、実は今でも少し考えてしまいます。お金がすぐ増えるわけでもないし、目に見える変化は地味かもしれません。でも、図面に名前が残るたびに「これは自分の作品だ」と思える。その小さな誇りの積み重ねが、私にとっての答えなのかなと思っています。
まとめ:価値は「人による」。でも──
一級建築士の価値は、立場や目的によって変わります。
独立や転職を考えている人にとっては、収入にも直結する大きな武器になります。
一方、一定規模の組織で働き続ける場合は、金銭的な見返りはゆるやかかもしれません。
それでも、私は5年かける価値があったと思っています。
お金や肩書きだけでなく、「責任ある仕事を任され、自分の名前を建物に残せる」という、職業人としての誇りがそこにあるからです。
数字だけでは測れないこの価値を、どう受け取るか。
それは、あなた自身がこの資格に何を求めるかによって決まるのだと思います。
よくある質問
一級建築士を目指す方からよく聞かれる質問に、5年かかった私の目線でお答えします。
Q1. 一級建築士は独学で受かりますか?
結論から言うと、学科は独学でも合格できます。
市販のテキストと過去問をやり込めば、十分に合格ラインへ届きます。
実際、独学で学科を突破する人は珍しくありません。
ただ、本当の壁は製図です。
製図は採点基準が公開されておらず、自分の答案の「どこがダメなのか」
を独学で判断するのがとても難しい。
私自身、製図でいちばん助けられたのが資格学校の添削指導でした。
ですから、「学科は独学、製図だけは添削が受けられる環境を用意する」というのが、
現実的で挫折しにくい進め方だと思います。
Q2. 学科に合格したら、製図は何回まで受けられますか?
令和2年の制度改正で、ここは大きく変わりました。
今は「学科合格の年を含めて5年以内に、製図を最大3回」受験できます。
もう少し正確に言うと、学科合格後に続く4回の試験のうち2回まで学科免除(=製図だけ受験)が可能です。
もし学科合格の年の製図を欠席した場合は、その後の4回のうち3回まで免除を受けられます。
ひとつ注意点があります。
製図試験に出席(途中退室も含む)すると、学科免除の回数が1回消費されます。
欠席なら減りません。
💬 こいちろの本音
私が受けていた頃の旧制度は「学科合格の翌年から2年」しか免除がなく、製図に2回落ちたら学科からやり直しでした。今は5年で3回。「初年度は学科に集中して、製図は翌年からじっくり」という戦い方も選べます。昔よりずっと計画が立てやすくなっていて、正直うらやましいです。
【出典】
・公益財団法人 建築技術教育普及センター「一級建築士試験 Q&A」
Q3. 二級建築士からのステップアップはできますか?
できます。
しかも今は、二級建築士を持っていれば、実務経験がなくても一級建築士試験を受験できます(令和2年改正後)。
ただし、試験に合格したあとの免許登録には、学歴などに応じた実務経験が必要です。
「受験」と「登録」で条件が分かれている、と覚えておくと混乱しません。
二級で製図や建築の基礎をひととおり経験してから一級に挑むのは、
遠回りに見えて実は堅実なルートです。
Q4. 働きながらでも合格できますか?
できます。
というより、一級建築士の受験者は、その大半が働きながら挑戦している社会人です。
令和7年の合格者を見ても、建設会社や設計事務所で働く人が中心です。
私自身も会社員を続けながら5年かけて合格しました。
大事なのは、H2⑤でお話しした「続けられる計画」を立てること。
1年勝負ではなく、複数年を織り込んで挑めば、働きながらでも十分に手が届く資格です。
まとめ:合格率11%の壁は「戦略」と「続ける力」で越えられる
最後に、この記事の要点を振り返ります。
- 一級建築士の合格率は、令和7年で総合11.4%(学科16.5%・製図35.0%)。
受かるのは約9人に1人。 - 難しさの正体は、
①試験範囲の広さ
②足切り制度
③6時間半の製図一発勝負
④働きながらの時間確保の4つ。 - 私は学科4回・製図2回、合格まで5年かかりました。
足切りも2回経験しています。 - それでも越えられた理由は、「捨てる問題と死守する科目を仕分ける戦略」と、「複数年かかる前提で続ける計画」でした。
合格率11%という数字は、確かに重いです。
でも、その中身を分解して、自分に合った戦略を立てれば、働きながらでも必ず手が届く資格です。
遠回りした私が言うのですから、間違いありません。
この記事が、これから挑む方の「最初の一歩」になればうれしいです。

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