ある日、突然の病気やケガで仕事を休まざるを得なくなったら…。
そんなとき、私たちを経済的に支えてくれるのが【健康保険の「傷病手当金」】です。
FP3級試験では、この傷病手当金の「支給条件」や「金額の計算方法」が頻出ポイントとして登場します。
今回は、計算式の中で重要な「12か月」「30日」「2/3」という数字の意味と背景を丁寧に解説しながら、なぜそういう仕組みなのかを一緒に深掘りしていきましょう!
今回の分野:
社会保険と公的保障制度:健康保険の給付(傷病手当金)
FP3級で問われる公的医療保険制度の中でも、「傷病手当金」は出題頻度が高く、実生活でも重要な知識です。
会社員や公務員など、被用者が病気やケガで仕事を休んだときに支給されるこの制度。
今回はその算定方法の基本をしっかり押さえましょう。
問題文の紹介:
傷病手当金の額は、1日につき、原則として、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した【□1】の各月の標準報酬月額の平均額を30で除した額に、【■2】を乗じた額である。
【□1】と【■2】に入る数値は?
選択肢は以下のとおりです。
- □1:12ヶ月 ■2:2/3
- □1:12ヶ月 ■2:3/4
- □1: 6ヶ月 ■2:4/5
私は初見で(参考書は見たけど覚えてない・・・)全くわからなかったので、消去法で2番にしました。
みなさん、わかりますか?
正解と解説の要点:
では、正解を見てみましょう。
傷病手当金の額は、1日につき、原則として、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した【□1】の各月の標準報酬月額の平均額を30で除した額に、【■2】を乗じた額である。
【□1】と【■2】に入る数値は? →正解:1(□1:12ヶ月、■2:2/3)
■2の数値が間違っていました。
なんで2/3なんだろう・・・?
今回のポイント解説を以下にまとめましたので、ご確認ください。
✅ ポイント解説:
- 傷病手当金は、被保険者が連続して3日間休業し、4日目以降も労務不能な場合に支給されます。
- 金額は原則として、支給開始前12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3で算出されます。
- 12か月分の平均をとるのは、月によって報酬に変動があるためで、実態に即した金額を反映させるためです。
乗じる数値が「2/3」であることにまだ疑問が残っていますので、次の深堀り考察で見ていきましょう。
深掘り考察!!:
◆「標準報酬月額」とは?
会社が健康保険組合に届け出ている、従業員の給与区分。実際の支給額とは異なる場合があるため、「給与明細=標準報酬月額」ではない点に注意。
◆「30で割る」理由は?
暦日数ではなく月平均を基準化するためです。例えば28日や31日月もありますが、これを平準化して月30日としています。
✅️ポイント解説にも書いてありますね。
◆支給日数と支給期間
支給されるのは4日目以降で、最長1年6か月間です。この「1年6か月」は連続ではなく、支給要件を満たした日数ベースでカウントされます。
✅ なぜ「2/3」なのか? - 背景と目的
「2/3(3分の2)」という係数は、健康保険法に基づいて定められているもので、被保険者が仕事を休んで得られなくなった賃金の一部を補償するための基準です。
以下にその理由を簡潔にまとめます。
100%ではないのはなぜ?
- 傷病手当金は、あくまで最低限の生活補償を目的とした制度です。
- 休業中もある程度の生活を支えるために支給されますが、働いたときと同額を補償する制度ではないため、満額(100%)ではありません。
2/3はどのくらいの水準?
- 賃金のおおよそ66.7%(= 2/3)を補う設計です。
- 実際には社会保険料や税金が引かれた手取り額に近い水準とも言われます。
制度の根拠
- 健康保険法第99条などにおいて、支給額の基準が明示されており、「標準報酬日額の3分の2相当額」として定められています。
まとめ・今回の学び:
傷病手当金の算定方法は、「12か月の標準報酬月額」「30で割る」「2/3を掛ける」という3つのステップで構成されています。
単なる暗記ではなく、なぜそのような算出方法になっているのかまで理解することで、試験でも実務でも役立つ知識になりましたね。
「2/3」の係数の根拠も、社会保険料や税金が引かれた手取り額相当ということで腑に落ちました。
次回予告:知っておきたい「介護費用」の実態と負担割合とは?
高齢社会が進む中で、「介護」は誰にとっても無関係ではいられないテーマになってきました。
次回は、公的介護保険制度における費用負担のしくみについて取り上げます。
- 介護サービスを受けると、自己負担はいくら?
- 所得によって負担割合はどう変わる?
- 要介護認定を受けたら、どんな支援があるの?
といった基本から、FP3級でよく出題されるポイントを押さえて、「介護とお金」について実務目線でも学べる回にしたいと思います。
介護は突然やってくるからこそ、「知っておくこと」が最大の備えになります。
ぜひお楽しみに!
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