家や土地を売ったとき、その利益には税金がかかります。これが「譲渡所得」です。
でも、同じ金額の利益が出ても、税金が約2倍も変わることがあるのをご存じでしょうか。
その分かれ道になるのが「その不動産を、どれくらいの期間持っていたか」です。
短く持って売れば「短期譲渡所得」、長く持って売れば「長期譲渡所得」。FP3級でも本当によく出るテーマです。
ところが、この「期間の数え方」には大きな落とし穴があります。「5年持っていたから長期だ」と思っていたのに、実は短期だった——そんなひっかけが、試験でも実生活でも待ち構えているのです。
今回はその謎を、具体的な事例を使って一緒に解き明かしていきましょう!
⭐️ この記事を読むと、こんな疑問がスッキリ解決します。
- 短期譲渡所得と長期譲渡所得って、何が違うの?
→ 分かれ目は「所有期間が5年を超えるか」です。 - 「5年持った」かどうかは、いつ数えるの?
→ 売った日ではなく「売った年の1月1日」が基準です。 - どっちになると、税金はどう変わるの?
→ 短期だと税率が約2倍に。
長く持つほど税金は軽くなります。
前回の第61回では、新築住宅を建てたあとに毎年かかる
「固定資産税」の減額措置について学びました。
固定資産税が「持っている間ずっとかかる税金」だったのに対し、
今回の譲渡所得は「売って手放すときにかかる税金」です。
不動産の税金を、保有から売却まで時系列でつなげて理解していきましょう。
前回の記事はこちら
▶ 【固定資産税の減額措置】新築住宅が半額になるのは何年間?120㎡の上限と覚え方を解説_間違いから学ぶFP3級_第61回
📘 今回の分野:不動産を売ったときにかかる「譲渡所得」の税金

今回学ぶのは、不動産の税金の中でも「譲渡所得」と呼ばれる分野です。
譲渡所得とは、土地や建物などの資産を売って得た利益のことです。
この譲渡所得は、その不動産を持っていた期間によって「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の2つに分かれ、それぞれ税率が大きく異なります。
2つの違いをしっかり押さえて、試験で迷わないようにしましょう。
❓️ 問題文の紹介:所有期間10年以下なら短期譲渡所得?
今回考えるのは、土地を売ったときの譲渡所得の区分についての正誤問題です。次の内容が正しいか・誤っているかを判断します。
- 問題文の主張 → 所有期間が「10年以下」なら、短期譲渡所得に区分される
- 対象になるのは → 土地を売って得た利益(譲渡所得)
- 期間を数える時点は → その土地を売った年の1月1日
- その時点で数えるのは → 土地を持っていた期間(所有期間)
◯か✘か?
「10年以下なら短期」と言われると、なんとなくそれっぽく聞こえて、つい◯をつけたくなってしまいませんか?

わたしも本番でこの問題に出会ったとき、
「1月1日」のほうばかり気にして、肝心の数字を見落としかけました。
まずは「何を問われているか」を見抜くのが第一歩です。
✅ 正解と解説の要点:短期・長期の分かれ目は「10年」ではなく「5年」

今回考えるのは、土地を売ったときの譲渡所得の区分についての正誤問題です。次の内容が正しいか・誤っているかを判断します。
- 問題文の主張 → 所有期間が「10年以下」なら、短期譲渡所得に区分される
- 対象になるのは → 土地を売って得た利益(譲渡所得)
- 期間を数える時点は → その土地を売った年の1月1日
- その時点で数えるのは → 土地を持っていた期間(所有期間)
◯か✘か?
→正解:✘
正解は ✘(誤り)です。
問題文の「短期譲渡所得に区分される」という言葉から、ここで問われているのは「所有期間の長さ」だとわかります。そして、その期間の数字が間違っています。
譲渡所得の短期・長期を分ける基準は「10年」ではなく「5年」です。
- 所有期間が 5年以下 → 短期譲渡所得
- 所有期間が 5年超 → 長期譲渡所得
問題文は「10年以下なら短期」と書いていますが、正しくは「5年以下なら短期」。
基準の数字が違うため、この問題文は誤り(✘)になります。
では、なぜ「10年」という数字が紛れ込んでいるのでしょうか。
実は「10年超」という数字は、まったく別の制度
——マイホームを売ったときの「軽減税率の特例」——で登場します。
問題文は、この「10年」をわざと持ち出して受験者を惑わせているのです。
✅️ポイント解説:譲渡所得の区分は「5年」が基準
- 譲渡所得の短期・長期の区分は「5年」が基準
- 5年以下 → 短期譲渡所得(税率が高い)
- 5年超 → 長期譲渡所得(税率が低い)
- 所有期間の判定は「譲渡した年の1月1日」時点で行う
- 「10年」は譲渡所得の区分には登場しない数字。10年超はマイホームの軽減税率の特例の要件
- よって、問題文は ✘
「5年」と「10年」はどちらも不動産の税金でよく出る数字ですが、
使われる場面がまったく違います。
「区分は5年、マイホームの軽減税率は10年」とセットで覚えておくと混同しません。

「短期譲渡所得」という言葉が見えたら、
まず「5年が基準だな」と頭に浮かべてください。
これだけで、数字のひっかけにグッと強くなります。
📚 出典・参考
- 国税庁タックスアンサー No.3202「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
🔗 関連記事の紹介:譲渡所得の特例もあわせてチェック
譲渡所得の「短期・長期の区分」を理解したら、次は「譲渡所得を軽くしてくれる特例」も知っておくと、不動産の税金の全体像がつかめます。
今回のテーマと関連する記事をご紹介します。
今回「10年超は別の特例で出てくる数字」とお伝えしましたが、
その「10年超の特例」の正体がこちらです。
マイホームを10年超持って売ると、税率がさらに軽くなります。
本記事と合わせて読むと、「5年」と「10年」の使い分けがハッキリします。

また、譲渡所得には「利益から一定額を差し引ける」特別控除もあります。
マイホームを売ったときの3,000万円特別控除は、短期・長期どちらの譲渡でも関わる重要な制度です。
区分とあわせて押さえると、税額の計算がイメージしやすくなります。

さらに、マイホームを買い替えるときには「買換え特例」という制度も使えます。
こちらは「10年超所有」が条件のひとつで、長期譲渡所得の応用編にあたります。
長く持つほど有利になるという今回の考え方の延長線上にある制度です。


譲渡所得は「区分(5年)→特例(3,000万円・10年超)」
とステップで学ぶと頭に入りやすいです。
今回の5年ルールは、そのすべての土台になります。
🔍 短期譲渡所得と長期譲渡所得の違いについて_深掘り考察!!
今回は、以下の3点について深掘りしていきます。
- 短期譲渡所得とは?
- 所有期間5年以下の売却益 長期譲渡所得とは?
- 所有期間5年超の売却益 短期と長期の比較と「1月1日基準」の数え方
短期譲渡所得とは?所有期間5年以下の売却益

短期譲渡所得とは、土地や建物などを「短い期間(所有期間5年以下)」で売ったときに出る利益のことです。
判定は「売った年の1月1日」時点で行い、税率が高めに設定されています。
ポイントは次の3つです。
- 所有期間が5年以下の資産を売った場合に生じる所得
- 判定は「売った年の1月1日」で行う
- 税率が高く設定されている(投機的な売買を抑えるため)
身近な例で考えてみましょう
短期譲渡所得は、フリマアプリでの「転売」をイメージするとわかりやすいです。
人気のスニーカーを買ってすぐ高値で売る——いわゆる転売ですね。
国から見ると、不動産を短期間で売買して利益を狙う行為は、
この転売と同じ「投機的な取引」に見えます。
だから短期で売った利益には重めの税金をかけて、ブレーキをかけているのです。
具体例で確認します。
- 2020年4月に土地を購入
- 2025年7月にその土地を売却
判定日の 2025年1月1日 では所有期間は 4年9か月。
5年を超えていないので「短期譲渡所得」になります。
長期譲渡所得とは?所有期間5年超の売却益

長期譲渡所得とは、土地や建物などを長く(所有期間5年超)持ったあとに売却したときに出る利益のことです。
判定は同じく「売った年の1月1日」時点で行い、税率は短期より低めです。
ポイントは次の3つです。
- 所有期間が5年を超えていることが条件
- 判定は「売却した年の1月1日」における所有期間で行う
- 税率は短期に比べて低い(投機目的ではなく、落ち着いた取引と見なされるため)
身近な例で考えてみましょう
長期譲渡所得は、「じっくり育てた畑の収穫」のイメージです。
何年も手をかけて育てた作物を収穫するように、
長く所有した不動産を売る行為は落ち着いた取引と見なされます。
投機ではないので、税金も軽めです。
具体例で確認します。
- 2017年5月に土地を購入
- 2025年7月に売却
判定日の 2025年1月1日 では所有期間は 7年8か月。
5年を超えているので「長期譲渡所得」です。
なお、相続でもらった土地を売る場合、所有期間は「相続した日」からではなく「亡くなった人(被相続人)がその土地を取得した日」から数えます。
これは次回の特例にもつながる大事なルールです。
短期と長期の比較と「1月1日基準」の数え方

短期譲渡所得と長期譲渡所得の違いを、一目でわかるように表にまとめました。
| 区分 | 所有期間 | 判定日 | 税率(所得税+住民税) | 性格 |
|---|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 譲渡した年の1月1日 | 約39%(30%+9%) | 投機的・課税重め |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 譲渡した年の1月1日 | 約20%(15%+5%) | 安定的・課税軽め |
最大のポイントは「1月1日基準」です。
身近な例で考えてみましょう
この1月1日基準は、学校の「学年」の決まり方とよく似ています。
同じ年に生まれても、4月1日時点で何歳かで学年が分かれますよね。
実際の誕生日ではなく「ある特定の日」で線引きするわけです。
譲渡所得も「実際に何年何か月持っていたか」ではなく
「売った年の1月1日にどうだったか」で短期・長期を区切ります。
たとえば2020年4月取得→2025年7月売却なら、実際の所有期間は5年3か月。
ところが判定日の2025年1月1日ではまだ4年9か月で、5年に届きません。
つまり短期譲渡所得です。「5年経ったから長期」という思い込みは危険です。
※ FP3級では税率を「短期39%・長期20%」で覚えればOKですが、実務では復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)が乗り、正確には短期39.63%・長期20.315%になります。
⭐️ ここまでのポイントを整理します。
- 短期譲渡所得
=所有期間が5年以下の不動産を売った利益。
投機的とみなされ税率は約39%。 - 長期譲渡所得
=所有期間が5年超の不動産を売った利益。
安定的とみなされ税率は約20%。 - 短期か長期かは「売った年の1月1日」時点の所有期間で判定。
実際の経過日数ではない。 - 「10年超」は譲渡所得の区分ではなく、別の特例で登場する数字。
📚 出典・参考
- 国税庁タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」
- 国税庁タックスアンサー No.3211「短期譲渡所得の税額の計算」
🧐 よくあるケアレスミス:短期・長期譲渡所得の数え方
ミス①:区分の基準を「10年」と勘違いする
なぜ間違えるのか?
不動産の税金には「5年」「10年」「3年」など似た年数のルールが多く登場します。
とくに「10年超」はマイホームの軽減税率という有名な特例で使われるため印象に残りやすく、譲渡所得の区分にもつい「10年」を当てはめてしまいます。
正しい考え方
譲渡所得の短期・長期を分ける基準は「5年」です。
5年以下なら短期、5年超なら長期。
「10年超」が出てくるのはマイホームの軽減税率の特例など別の制度です。
「区分は5年、軽減税率は10年」とセットで覚えましょう。

今回の問題文も、この「10年」のひっかけそのものでした。
数字を見たら「これは何の数字だっけ?」と立ち止まる
——それだけで正答率がぐっと上がります。
ミス②:実際の経過日数で「5年」を数えてしまう
なぜ間違えるのか?
「2020年4月に買って2025年7月に売った。
だから5年3か月持っていた=長期だ」——これはごく自然な考え方です。
でも、譲渡所得の判定は「実際に何年持っていたか」では行いません。
正しい考え方
判定はあくまで「売った年の1月1日」時点の所有期間で行います。
上の例なら判定日は2025年1月1日。
その時点では所有期間はまだ4年9か月で5年に届かないため、「短期譲渡所得」になります。
実際の経過日数が5年を超えていても、1月1日時点で足りなければ短期です。

ここが一番の落とし穴です。
カレンダーで「取得日」と「売った年の1月1日」を線で結んで数えるクセをつけると、ミスがなくなります。
ミス③:「5年ちょうど」を長期だと思い込む
なぜ間違えるのか?
長期譲渡所得の条件は「5年超」。
ところが「5年以上」と記憶していると、「ちょうど5年」も長期に含めてしまいます。
「以上」と「超」は1日違いで結果が変わる、税金の世界の重要な区別です。
正しい考え方
「5年超」は「5年を1日でも超える」という意味で、5年ちょうど(5年0か月)は含みません。
たとえば2020年1月1日に取得した土地を2025年中に売ると、2025年1月1日時点の所有期間はちょうど5年。
これは「5年超」ではないので短期譲渡所得です。
一方、2019年12月31日以前に取得していれば、2025年1月1日時点で5年を超えているため長期になります。

実はこの記事を書き直す前、わたし自身この「5年ちょうど」の数え方を1年分まちがえていました。
「以上」と「超」、たった一文字ですが、税金では結果が大きく変わります。
📋 ケアレスミスまとめ
| よくある誤解 | 正しい考え方 |
|---|---|
| 区分の基準は「10年」 | 区分の基準は「5年」(10年超は別の特例の数字) |
| 実際に5年持っていれば長期 | 「売った年の1月1日」時点で5年超なら長期 |
| 5年ちょうど(5年0か月)は長期 | 5年ちょうどは「5年超」ではないので短期 |
📝 まとめ・今回の学び:短期譲渡所得と長期譲渡所得の違い
今回学んだことを振り返りましょう📝
⭐️ 【得られる知識】今回のまとめ
- 基本の仕組み:
不動産を売って出た利益(譲渡所得)は、所有期間によって短期と長期に分かれる。 - 用語の違い:
短期譲渡所得=5年以下、長期譲渡所得=5年超。
判定は「売った年の1月1日」時点。 - 試験頻出ポイント:
区分の基準は「5年」。
「10年超」は別の特例の数字。
「5年ちょうど」は短期。 - 実生活への応用:
不動産を売るなら、1月1日基準で5年を超えてから売ると税率が約半分になる。
「短期譲渡所得」「長期譲渡所得」という言葉は漢字が多くて難しそうに見えますが、分解すれば「短い期間/長い期間で・譲渡(売って)・所得(得た利益)」というだけです。
短く持って売ったか、長く持って売ったか、その違いだけと考えれば気が楽になります。
いちばん危ないのは「5年経ったから長期だろう」という思い込みです。
実際の経過日数ではなく「売った年の1月1日」で数えるため、
カレンダー上は5年過ぎていても短期になることがあります。
「5年以上」ではなく「5年超」、つまり5年ちょうどは短期という点も油断できません。
そして「10年」という数字に惑わされないこと。
譲渡所得の区分はあくまで「5年」で、
「10年超」はマイホームの軽減税率など別の特例で出てくる数字です。
数字が出てきたら「これは何の数字か」を必ず確認しましょう。

鍵となるのは「5年」、そして「1月1日」。
この2つさえ押さえれば、譲渡所得の区分問題はもう怖くありません。
一緒に合格を目指しましょう!
次回予告:相続財産に係る譲渡所得の課税の特例

今回学んだ「短期・長期譲渡所得の5年ルール」に続き、
次回は相続した土地を売るときに使える特例を取り上げます。
その名も「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(取得費加算の特例)」。
相続税を払った人が相続財産を売るとき、
納めた相続税の一部を取得費に加算できる——つまり譲渡所得を圧縮できる制度です。
ただし、この特例には「いつまでに売るか」という期限があります。
相続税の申告期限の翌日から数えて、ある年数以内に売らないと使えません。
次回は、その取得費加算の特例のしくみと、3年ルールと呼ばれる売却期限を、わかりやすく解説します。
次回の記事はこちら
▶【相続税の取得費加算の特例】売却期限はいつまで?「3年ルール」を徹底解説!_間違いから学ぶFP3級_第63回

今回の「所有期間は被相続人の取得日から数える」という話が、次回の特例にそのままつながります。相続と不動産の合わせ技、お楽しみに!


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