相続税の評価では、自宅用の家屋と「人に貸している家屋(貸家)」で評価方法が変わります。
特に賃貸アパート・賃貸マンションなどは、入居者の権利(借家権)がある分だけ評価額が下がる仕組みです。
本記事では、試験で頻出の“貸家の家屋”の評価式を、まず正解→理由→計算手順→ミスしやすいポイントの順にやさしく整理します。
⭐️この記事を読んで得られる知識は、以下の3点です。
- 「家屋の相続税評価額」とはなにか?
→亡くなった人が持っていた建物を相続税の計算でいくらの価値とみなすかを決めるための金額のことです。 - 評価額に用いられる用語の意味を解説
→①自用家屋の評価額、②借家権割合、③賃貸割合について解説します。 - 問題を解く際のよくあるケアレスミス
→代表的なものは、借家権割合と借地権割合の取り違えです。
📘 今回の分野:財産の評価

今回取り上げるテーマは「財産の評価」についてです。
みなさんは財産の評価について考えたことはあるでしょうか?
関係するお仕事に就かれている場合を除いて、実生活においてはあまり考えてこない分野ではないでしょうか?
実際に直面する場合としては、やはり相続の場面でしょう。
人間には寿命があり、どんな人でもいつか必ず相続の問題に直面すると思います。

その問題が生じた際に、慌てなくて済むようにひとつずつ学習していきましょう。
- 相続税評価(不動産・家屋)
- 貸家(賃貸アパート等)の評価
- 借家権割合・賃貸割合
❓️ 問題文の紹介
賃貸アパート等の貸家の用に供されている家屋の相続税評価額は、【 】の算式により算出される。
【 】内に入る計算式はなにか?
選択肢は以下のとおりです。
- 自用家屋としての評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
- 自用家屋としての評価額×(1-借地権割合×賃貸割合)
- 自用家屋としての評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
借家権割合を使うか借地権割合を使うか、もしくは両方か。
今回は賃貸アパートが対象だから、借家権割合は関わってくるでしょう。
問題は借地権割合が関わってくるかどうかですね。
今回間違った選択肢を選んでしまいましたが、みなさんはわかるでしょうか?
正解を確認しましょう‼️
✅ 正解と解説の要点

賃貸アパート等の貸家の用に供されている家屋の相続税評価額は、【 】の算式により算出される。
【 】内に入る計算式はなにか?
正解:自用家屋としての評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
正解は、自用家屋としての評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)という計算式でした。
計算式の内容は、ひとつひとつの項目ごとに意味を理解していかないと記憶に定着しません。

この記事では、そのひとつひとつの項目を丁寧に意味を掘り下げて、イメージ出来るように解説しています。
以下のポイント解説以降も、ぜひ読んでいってください。
✅️ポイント解説
用語の意味
- 自用家屋の評価額:その家屋を自分で使っているものとしての評価額。実務では「固定資産税評価額」を使います。
- 借家権割合:入居者(借りている人)の持つ権利の強さを割合で表したもの。一般に**30%(0.3)**が用いられます。
- 賃貸割合:家屋のうち、実際に人に貸している部分の割合(全部貸していれば100%=1.0)。
なぜ評価が下がるの?
入居者には「住み続けられる権利(借家権)」があり、オーナーは自由に使いにくい(=すぐ売ったり、自分で使ったりしにくい)ため、評価を下げて公平にしましょう、という考え方です。
計算の流れ(フローチャート風)
- 固定資産税評価額(=自用家屋の評価額)を確認
- 借家権割合(ふつう0.3)を確認
- 賃貸割合(例:全体のうち何%が賃貸?)を確認
- 式に当てはめる → 自用家屋 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
ミニ例題
- 固定資産税評価額:2,000万円
- 借家権割合:30%(0.3)
- 賃貸割合:100%(1.0)
→ 評価額 = 2,000万円 ×(1 − 0.3 × 1.0)= 1,400万円
よくあるケアレスミス
- 借家権割合と借地権割合を取り違える(家屋は借家権、土地は借地権)
- 自用家屋の評価額=固定資産税評価額を忘れる
- 一部のみ賃貸しているのに賃貸割合を100%で入れてしまう
🔍 深掘り考察!!
今回は、以下の点について解説していきたいと思います。
- 「家屋の相続税評価額」とはなにか?
→亡くなった人が持っていた建物を相続税の計算でいくらの価値とみなすかを決めるための金額のことです。 - 評価額に用いられる用語の意味を解説
→①自用家屋の評価額、②借家権割合、③賃貸割合について解説します。 - 問題を解く際のよくあるケアレスミス
→代表的なものは、借家権割合と借地権割合の取り違えです。
「家屋の相続税評価額」とはなにか?

「家屋の相続税評価額」とは、亡くなった人が持っていた建物を相続税の計算でいくらの価値とみなすかを決めるための金額のことです。
つまり、「この家にはどのくらいの“相続する価値”があるのか」を国がルールで決めた“評価額”なんです。
🔹わかりやすく言うと
たとえば、おじいちゃんが持っていた「自宅の家」があるとします。
この家を相続するときに、
「この家は3,000万円で建てたから3,000万円のまま相続税をかけよう」
とはなりません。

なぜなら、建物は古くなると価値が下がるし、市場価格(実際に売ったらいくら)とは別の評価のルールがあるからです。
🔹評価の基準は「固定資産税評価額」

相続税の世界では、
家屋の価値を決めるときに「固定資産税評価額」という数字を使います。
この「固定資産税評価額」は、
市町村が毎年出している“固定資産税のもとになる金額”です。
たとえば──
- 実際の市場価格(売ったら)… 2,000万円
- 固定資産税評価額 … 約1,200万円
この場合、相続税の計算では 1,200万円 が「家屋の相続税評価額」になります。
🔹なぜ市場価格より低いの?
理由は、国が「税金の基準を公平にするために、土地や建物を一律の基準で評価しよう」と決めているからです。
建物の評価は、構造や築年数ごとに決められており、だいたい実際の時価の6〜7割程度になることが多いです。
🔹もう少し具体的に
| 内容 | 金額 | 説明 |
|---|---|---|
| 新築時の建築費 | 3,000万円 | 建てた当時の金額 |
| 現在の市場価格 | 2,000万円 | 売ったらこれくらい |
| 固定資産税評価額(=相続税評価額) | 約1,200万円 | 相続税ではこの額で評価 |
このように、「相続税評価額」は“税金の世界のモノサシ”で見た家の価値というイメージです。
🔹家屋の相続税評価額_まとめ
- 「家屋の相続税評価額」= 固定資産税評価額をそのまま使う
- 固定資産税評価額は、市町村が出す“建物の税金用の価格”
- 実際の時価より低く、だいたい6〜7割くらいになる
- 古い家ほど価値が下がり、評価額も低くなる
評価額に用いられる用語の意味を解説
問題の答えをパッと見て、それぞれの用語の意味をしっかり理解しているでしょうか?
意味を理解していないと、時間をおいた時にまた忘れてしまうことでしょう。

意味を理解して、それぞれの用語について自分の頭の中にイメージを出来るようにしておけば、時間をおいても思い出しやすいですよ。
それでは確認していきましょう。
🔹① 自用家屋の評価額(じようかおくのひょうかがく)

意味:
「その建物を自分で住んでいる(=貸していない)としたときの価値」です。
税金を計算するときのスタートとなる金額で、基本的に固定資産税評価額を使います。
たとえば…
おじいちゃんが自分で住んでいた家の固定資産税評価額が1,800万円だったとします。
→ この1,800万円が「自用家屋の評価額」です。
つまり「もし貸していなかったら、この家は相続税上では1,800万円の価値がありますよ」という基準です。
🔹② 借家権割合(しゃっかけんわりあい)
意味:
「借りている人(入居者)が持つ“住み続ける権利”が、建物の価値にどれくらい影響しているか」を割合で表したものです。

国が目安として定めていて、全国一律で30%(0.3)とされています。
イメージで言うと…
建物を貸していると、オーナー(持ち主)は「自由に使えない」状態です。
勝手に売ったり取り壊したりできませんよね。
入居者の“住む権利”がある分だけ、建物の価値が少し下がるという考え方です。
たとえば…
自用家屋の評価額(固定資産税評価額)が1,800万円なら、
借家権割合30%(0.3)によって、0.3 × 賃貸割合分の価値が減る、という仕組みです。
🔹③ 賃貸割合(ちんたいわりあい)
意味:
「建物のうち、どのくらいの部分を実際に人に貸しているか」を割合で表したものです。
全部貸していれば100%(=1.0)、半分だけ貸していれば50%(=0.5)になります。
たとえば…
3階建てのアパートで、
- 1階:自分で店舗として使っている
- 2階・3階:人に貸している
この場合、貸している部分は全体の3分の2なので、賃貸割合=2÷3=約0.67(67%) になります。
🔹3つの関係_まとめ
| 用語 | 意味 | ポイント | 例 |
|---|---|---|---|
| 自用家屋の評価額 | 自分で使っていると仮定した建物の価値(=固定資産税評価額) | 評価の出発点 | 1,800万円 |
| 借家権割合 | 入居者の権利によって建物価値がどれだけ下がるか | 全国一律0.3(30%) | 0.3 |
| 賃貸割合 | 実際に貸している部分の割合 | 全部貸していれば1.0、一部なら0.5など | 0.67など |
そして、これらを組み合わせた計算式がこちら👇
貸家の家屋の評価額=自用家屋の評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
問題を解く際のよくあるケアレスミス
計算式の問題って、中身をちゃんと理解していないと答えにたどり着けません。

よくあるケアレスミスを紹介しますので、同じような間違いをしないようにしましょう。
💡ミス①:「借家権割合」と「借地権割合」をまちがえる

よくある混同パターン:
- 「家屋」なのに“借地権割合”を使ってしまう。
- 本当は借家権割合(0.3)を使うのに、借地権割合(地域によって60%など)を代入してしまう。
わかりやすく言うと:
- 「家=借家」
- 「土地=借地」
と覚えておきましょう!
たとえば:
アパート(建物)の評価式に借地権割合60%を入れてしまう → ❌
正しくは借家権割合30%を入れる → ⭕
💡ミス②:固定資産税評価額ではなく「時価」を使ってしまう
間違い例:
「家を売ったら2,000万円くらいだから、評価額も2,000万円かな?」
実際の相続税評価では、固定資産税評価額(たとえば1,200万円)を使います。
時価ではありません。
なぜダメなの?
税金の計算は「公平にするためのルール」が決まっていて、
市場価格ではなく「市町村が出す評価額」でそろえる決まりになっているからです。
ワンポイント覚え方:
“相続税の家の評価は、固定資産税の通知書を見る!”
💡ミス③:賃貸割合を1.0(100%)にしてしまう
どういうこと?
建物の一部しか貸していないのに、全部貸していると思い込んで賃貸割合=1.0で計算してしまうケースです。
たとえば:
1階は自分の店舗、2階と3階を人に貸している場合、
→ 賃貸割合=2階+3階部分の面積 ÷ 全体の面積=2/3(約0.67)です。
全部貸しているわけではないので、1.0ではありません。
対策ポイント:
「建物のうち、どの部分が“貸している部分”か?」を確認しましょう!
💡ミス④:「(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)」の“引き算”を忘れる
ありがちなまちがい:
自用家屋 × 借家権割合 × 賃貸割合 ← これで終わりにしてしまう。
でも正しいのは、
自用家屋 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
つまり「借家権によって価値が下がる分を引く」のがポイントです。
覚え方:

家の評価は、借家権の分だけ引き算する!
たとえば:
自用家屋=1,800万円、借家権割合=0.3、賃貸割合=1.0
→ 間違い:1,800 × 0.3 × 1.0=540万円 ❌
→ 正解:1,800 ×(1 − 0.3 × 1.0)=1,260万円 ⭕
💡ミス⑤:土地と家屋の式を混ぜる
試験での引っかけパターン:
- 「貸家の家屋」と「貸家建付地(土地)」の式が似ているため、混同する。
整理して覚えましょう👇
| 対象 | 式 | ポイント |
|---|---|---|
| 貸家の家屋 | 自用家屋 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合) | “借家”を使う |
| 貸家建付地(土地) | 自用地 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合) | “借地+借家”両方使う |
覚え方:
家=借家(ひとつ)
土地=借地+借家(ふたつ)
💡ミス⑥:借家権割合を“0.3”ではなく“30”として計算
小数点を忘れて、
「1 − 30 × 1.0」=マイナスになっちゃう!😱
なんてこともあります。
必ず「0.3(30%)」で計算!
✅まとめ:ケアレスミス防止の3ステップ
- まず、「家」なのか「土地」なのかを確認!
- 固定資産税評価額を使っているかチェック!
- 小数点(0.3)・賃貸割合(部分貸し)・“1 −”の引き算を見落とさない!
💬ワンフレーズまとめ:
「家は借家で引き算、土地は借地+借家で引き算!」

これを覚えておくと、試験のひっかけ問題にも強くなります。
まとめ・今回の学び
- 「家屋の相続税評価額」とはなにか?
→亡くなった人が持っていた建物を相続税の計算でいくらの価値とみなすかを決めるための金額のことです。
→実際の時価より低く、だいたい6〜7割くらいになります。
古い家ほど価値が下がり、評価額も低くなる傾向です。 - 評価額に用いられる用語の意味を解説
→①自用家屋の評価額:自分で住んでいる家屋の価値
②借家権割合:入居者の建物の価値への影響割合(全国一律30%)
③賃貸割合:実際に貸している割合 - 問題を解く際のよくあるケアレスミス
→代表的なものは、借家権割合と借地権割合の取り違えです。
→「家は借家で引き算、土地は借地+借家で引き算!」と覚えておきましょう‼️
今回は、貸家の家屋の相続評価額の計算式について学びました。
計算式は、その成り立ちを十分理解していないと時間が経つにつれて忘れていってしまいます。
ここでは、計算式に使われる用語の意味や数値などについて詳しく解説しました。

また、今回の問題文からよくあるケアレスミスも取り上げましたので、自分の考え方が該当していないか振り返るきっかけになれば幸いです。
続いて次回予告です。
次回予告:宅地の分類

次回のテーマは、土地の評価の中でもよく混乱しやすい「貸宅地」と「貸家建付地」の違いに関する問題です。
問題文
「相続税の計算において、被相続人が所有している宅地に被相続人名義の賃貸マンションを建築して賃貸の用に供していた場合、当該宅地は貸宅地として評価される。
◯か✗か?」
一見「人に貸しているから貸宅地でしょ?」と思いがちですが、実はこの問題、誰の建物かが大きなポイントになります。
「貸宅地」なのか「貸家建付地」なのか──、似ているようでまったく違う評価方法です。
次回はこの違いを、中学生にもわかるように具体例を交えながら、土地と建物の貸し方のパターンで整理していきます。

FP試験でも頻出のひっかけ問題ですので、しっかり理解しておきましょう!
次回もお楽しみに‼️


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