相続税では、家族が住んでいた自宅の土地について、税金を大きく減らせる特例があります。
それが「小規模宅地等の特例」です。
中でも、よく出題されるのが「特定居住用宅地等はどこまで減額されるのか?」というポイントです。
一見するとややこしく見えますが、考え方はとてもシンプルです。
今回の問題を通して、確実に理解できるよう丁寧に解説します。
⭐️この記事を読んで得られる知識は、以下の3点です。
- 『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』ってどういうもの?
→「亡くなった人の自宅の土地は、家族の生活に必要なものだから、相続税を大きく減らしてあげますよ」という国のルールです。 - 各宅地の限度面積の設定根拠とは?
→「本当に生活に必要な土地だけを税金の対象から大きく減らすため」が理由となっています。 - よくあるケアレスミスを紹介
→最も多いとされるミスは、「330m²」と「400m²」を逆に覚えるという点です。
📘 今回の分野:

今回取り上げる分野は、『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』です。
被相続人の住居や事業用の土地に高額の相続税がかかると、遺された家族が困ってしまいますよね。
このときに、ある一定の要件を満たすと相続税の評価額を減額してもらえます。
今回はその特例の内容と背景、計算の仕方等について確認していこうと思います。
一緒に学んでいきましょう‼️
相続税/小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)
❓️ 問題文の紹介
宅地が「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」における特定居住用宅地等に該当する場合、宅地のうち400m2までを限度面積として、評価額の80%相当額を減額した金額を、相続税の課税価格に算入すべき価額とすることができる。
◯か✗か?
今回のポイントは、「特定居住用宅地等」、「400㎡」、「評価額の80%」の3点です。
特例は、利用区分ごとに限度面積(㎡)と減額割合(%)が決まっています。
4パターンの利用区分がありますが、それぞれの組み合わせを覚えなければならないわけです。
私はこの問題文は間違えていないと思い、◯で回答しました。

・・・まだ記憶力が足りなかったということですね。
ただ、これを単純に覚えるのもしんどいです💦
この特例の成り立ちや根拠を知ることでイメージできるようになりたいですね。
✅ 正解と解説の要点

宅地が「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」における特定居住用宅地等に該当する場合、宅地のうち400m2までを限度面積として、評価額の80%相当額を減額した金額を、相続税の課税価格に算入すべき価額とすることができる。
◯か✗か?
正解:✘(誤りの文章です。)
正解は✘。
誤りの文章ということです。
利用区分に対して、限度面積と減額割合がどの数値になるか。
↑この関係性を正確に理解していれば、正当を導くことが出来ます。
利用区分は4パターンあります。
- 特定居住用宅地等
- 特定事業用宅地等
- 特定同族会社事業用宅地等
- 貸付事業用宅地等

これらの特徴をひとつずつ理解していきましょう‼️
まずは今回の問題のポイント解説を見ていきます‼️
✅️ポイント解説
●① 正しい限度面積は「330m²」
特定居住用宅地等の特例では、
「330m²を上限として評価額を80%減額する」
と定められています。
問題文の「400m²」は誤りです。
●② 減額されるのは「80%オフ」=評価額が20%になる
例えば、土地が評価額3,000万円だった場合:
- 特例適用前 → 3,000万円
- 特例適用後 → 600万円(=3,000万×20%)

不動産は金額が大きいため、この特例の影響はとても大きいです。
●③ 要件を満たすことが前提
「同居していた、一定の親族である、持ち家の有無」など細かい要件があります。
ただし FP3級では「面積と減額割合」を押さえておけば十分です。
🔍 深掘り考察!!
今回は、以下の点について解説していきたいと思います。
- 『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』ってどういうもの?
→「亡くなった人の自宅の土地は、家族の生活に必要なものだから、相続税を大きく減らしてあげますよ」という国のルールです。 - 各宅地の限度面積の設定根拠とは?
→「本当に生活に必要な土地だけを税金の対象から大きく減らすため」が理由となっています。 - よくあるケアレスミスを紹介
→最も多いとされるミスは、「330m²」と「400m²」を逆に覚えるという点です。
『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』ってどういうもの?
「小規模宅地等の特例」は、相続税の中でも トップクラスに税金が安くなる制度 です。
中学生でもイメージしやすいように、できるだけ生活に近い例を使って解説しますね。
◆小規模宅地等の特例とは?

一言でいうと、
「亡くなった人の自宅の土地は、家族の生活に必要なものだから、相続税を大きく減らしてあげますよ」
という国のルールです。
不動産は評価額が大きいため、そのまま相続税をかけると
「税金を払うために家を売らなきゃ…」
といった事態が起こりやすいのが問題でした。

そこで、自宅や仕事に使っている土地は『小さめの面積』であれば、評価額をドーンと減らします!
というのがこの特例です。
◆どれくらい減るの?

種類によって違いますが、特に重要な「特定居住用宅地等(自宅)」の場合は…
- 最大330m²まで
- 評価額を80%減額(=20%で計算)
つまり、3,000万円の土地なら → 600万円扱いに減る ということです。
これは、相続税に大きく影響します。
◆具体例でイメージしてみよう!
●例:お父さんが住んでいた自宅を、子どもが相続するケース
- 土地の評価額:3,000万円
- 面積:200m²(330m²以内)
- 相続するのは同居していた子ども
- 小規模宅地等の特例 → 適用OK
この場合、
▼特例なし
相続税の計算に使う評価額 → 3,000万円
▼特例あり
評価額 → 600万円(=3,000万円 × 20%)
なんと2,400万円分が、課税対象から消える のです。

家族が住むための家なのに、税金のせいで手放すことになるのは避けたい…
そんな考えから、この強力な優遇制度が作られています。
◆どんな土地が対象になるの?

代表的なのは3つです。
① 特定居住用宅地等(自宅の土地)
- 限度面積:330m²
- 減額:80%
② 特定事業用宅地等(事業に使う土地)
- 限度面積:400m²
- 減額:80%
③ 貸付事業用宅地等(アパートなどの貸付用)
- 限度面積:200m²
- 減額:50%
FP試験で特に狙われるのは①と②です。
◆なぜこんなに優遇されるの?
理由はとてもシンプルで…
「生活や事業の基盤を守るため」
家やお店の土地は、その家族がこれから生活していくのに欠かせないものです。

もしも相続税のせいで家を売ることになると、家族の生活が成り立たなくなります。
そのため、
「必要な土地は守りましょう」
という配慮から、この大きな優遇が認められているのです。
◆覚えるポイントまとめ
- 小規模宅地等の特例は、相続税を大幅に安くできる制度
- 自宅の場合は 330m²まで80%減額
- 事業用は 400m²まで80%減額
- FP試験では数字の暗記がとても重要
- 生活の基盤を守るための制度である
各宅地の限度面積の設定根拠とは?

各宅地に決められている「限度面積(330m²・400m²・200m²など)」には、実は きちんとした理由(根拠) があります。
中学生にもイメージしやすいよう、できるだけ身近な例を使って解説します。
◆そもそも、なぜ“上限の広さ”が決められているの?
理由はシンプルで、
「本当に生活に必要な土地だけを税金の対象から大きく減らすため」
です。
もし上限がなかったら…
- 超広い豪邸(1,000m²など)
- 広大な事業用土地(数千m²)

でも同じように80%オフになってしまい、不公平になります。
そこで国は、
「一般家庭や一般的な事業が使う“現実的な広さ”までを対象にしよう」
という考えで限度面積を決めています。
◆① 特定居住用宅地等(=自宅)
●限度面積:330m²
これは、住宅地の多くが 150〜300m² 程度であることから、
「普通の家が建つ広さをしっかりカバーできるように」
という配慮で決められています。
●なぜ330m²なの?
「330m²=100坪」
と言われると、イメージしやすいかもしれません。
- 都会 → 30〜60坪(100〜200m²)
- 郊外 → 60〜100坪(200〜330m²)
つまり、
多くの家庭の“自宅の土地はこの範囲に収まる”
→ だから330m²まで減額OK
というとても現実的な理由なのです。
◆② 特定事業用宅地等(=事業の店舗・工場・事務所)
●限度面積:400m²
事業をする土地は、家より少し広めに必要なケースが多いです。
例:
- 小さな工務店の事務所+資材置場
- 小売店の店舗+駐車場
- 小さな工場の敷地
こうした「小規模事業」に必要な面積を考慮して、自宅(330m²)より少し広い 400m² が上限になっています。
●なぜ400m²?
全国の中小企業の敷地面積を調べると、300〜400m²以内がかなり多い ためです。

「町の○○商店」レベルの事業が守れる広さを基準にした、とイメージすると理解しやすいです。
◆③ 貸付事業用宅地等(=アパート経営など)
●限度面積:200m²
貸付事業(アパート・駐車場)は「事業」と言っても、
土地を“貸して利益を得る”という性質が強く、優遇をしすぎると不公平になります。
そこで、
自宅や本業ほど優遇する必要はない → 少し控えめな200m²
という考え方です。
●なぜ200m²?
200m²はだいたい 60坪 ほどで、小規模アパートや駐車場が収まる広さです。
貸付事業にはある程度のメリットは与えるけれど、
“自宅”や“事業の基盤”ほど強力には優遇しない
というバランスをとっています。
◆まとめ:限度面積の設定根拠
| 区分 | 限度面積 | 根拠(ざっくり理由) |
|---|---|---|
| 自宅(特定居住用) | 330m² | 多くの家庭の自宅が収まる“現実的な広さ”を守るため |
| 事業用(特定事業用) | 400m² | 事業には少し広い土地が必要 → 町の商店レベルをカバー |
| 貸付事業用 | 200m² | 優遇はするが、他ほど大きくしない → 過度な優遇の抑制 |
◆学生向けに一言でまとめると…
「普通の家・普通のお店がちょうど入る広さまでなら、税金をすごく安くしてあげますよ」
というルールです。

広すぎる豪邸や会社の用地は対象外になる、ということですね。
よくあるケアレスミスを紹介

以下に、今回の問題(特定居住用宅地等・330m²・80%減額に関する問題)で 実際のFP受験生がよくやるケアレスミス を、中学生でも理解できるように噛み砕いて紹介します。
◆よくあるケアレスミス①「330m²」と「400m²」を逆に覚える
最も多いミスです。
- 居住用(自宅) → 330m²
- 事業用 → 400m²

数字が似ているため、つい逆にしてしまう受験生が多いです。
●イメージ例
「家(居住用)はコンパクト → 330m²」
「お店・工場(事業用)はちょっと広め → 400m²」
この感覚が持てると覚えやすいです。
◆よくあるケアレスミス②“80%減額”ではなく“80%になる”と勘違いする
本来は
評価額 ×(1 − 80%)=20%で計算
です。
ところが…
●誤解しがちな例
「3,000万円 × 80% = 2,400万円だよね?」
→ これは完全に逆です。
正しくは
「3,000万円 × 20% = 600万円」
です。
「80%減額」は “80%分を引く” と理解しましょう。
◆よくあるケアレスミス③限度面積を “こえる部分だけ” が対象外だと思う
実際には、
限度面積を超えたら、その宅地は“超えた部分だけ”ではなく、
限度面積を超えている分を特例の対象から除外して計算される
という仕組みです。
●例
土地全体が500m²の場合
→「330m²までは特例が使える、残りは普通評価」
というように、400m²全部がNGになるわけではない点を間違える受験生がいます。
◆よくあるケアレスミス④「同居していれば必ず使える」と思い込む
実際は、同居有無は重要ですが条件の一部であり、持ち家の有無 や 生計を一にしていたか など別条件もあります。

FP3級では細かい条件は問われにくいですが、「同居=自動で適用」は間違いという認識が必要です。
◆よくあるケアレスミス⑤“特定居住用宅地等”と“貸付事業用宅地等”を混同する
貸付事業用の限度は 200m²・50%減額。
しかし、問題文に “賃貸アパートの土地” と書かれているだけで
「居住用の330m²かな?」
と早とちりするケースがよくあります。
土地の用途によって区分が違う
という点に注意が必要です。
◆よくあるケアレスミス⑥問題の数字だけ変えている“ひっかけ”に気づかない
今回のように、
「330m² → 400m²」
「80%減額 → 70%減額」
「20%相当額を評価 → 80%相当額を評価」
など、数字を入れ替えただけの問題が頻出です。

数字を丁寧に読む癖がないと、正解にたどり着けません。
◆よくあるケアレスミス_まとめ
今回の問題で特に気をつけるべきは、
- 330m² vs 400m² の逆覚え
- 80%減額を「80%になる」と勘違い
- 用途ごとの区分を混同
この3つが頻出のミスです。
まとめ・今回の学び
- 『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』ってどういうもの?
→「亡くなった人の自宅の土地は、家族の生活に必要なものだから、相続税を大きく減らしてあげますよ」という国のルールです。
→生活の基盤を守るための制度です。 - 各宅地の限度面積の設定根拠とは?
→「本当に生活に必要な土地だけを税金の対象から大きく減らすため」が理由となっています。
→広すぎる豪邸や会社の用地は対象外になります。 - よくあるケアレスミスを紹介
→最も多いとされるミスは、「330m²」と「400m²」を逆に覚えるという点です。
その他は下記↓
・80%減額を「80%になる」と勘違いしてしまう。
・用途ごとの区分を混同する。
今回は『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』について解説しました。
限度面積の設定根拠や問題文のケアレスミスの事例をあげましたが、イメージは掴めたでしょうか。
この制度は、あくまで生活の基盤を守るための制度です。
相続税の取り過ぎで、遺された家族の生活が立ち行かなくならないように配慮されています。
このような意味合いを理解すれば、限度面積のイメージもついて、正答に導くことが出来ると思います。

一つ一つの根拠を理解していくことが大事ですね。
続いて次回予告です。
次回予告:小規模宅地等の特例

次回は、小規模宅地等の特例が「売却した場合」でも使えるのか? という、受験生がよく迷うポイントを取り上げます。
テーマはこちらです。
「被相続人の配偶者が、被相続人の居住の用に供されていた宅地を相続により取得した後、当該宅地を相続税の申告期限までに売却した場合、当該宅地は、相続税の課税価格の計算上、特定居住用宅地等として『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けることができない。
◯か✗か?」
一見すると「売っちゃったらダメなのでは?」と思いがちですが、実際には重要な例外もあります。

次回の記事では、配偶者が取得した宅地を売却しても特例が使えるのか? を、分かりやすく解説していきます。
ぜひチェックしてください。
お楽しみに‼️

コメント