こんにちは、こいちろです。
一級建築士の設計製図試験。
私は1回目でランクⅡ、つまり「あと一歩」で落ちました。
翌年の2回目で、なんとか合格しています。
この記事は、一発合格した人の話ではありません。
落ちた側の話です。
しかも、正直に先にお伝えしておきます。
私は今でも、1回目の敗因がわかりません。
採点基準は公表されません。
何点だったのかも教えてもらえません。
「ランクⅡ」という結果だけが届きます。
だから、落ちた理由を自分で確かめるすべがないのです。
それでも翌年、私は受かりました。
わからないなりに、できることを変えていったからです。
この記事では、その中身を書きます。
6時間半をどう配分したのか。
作図のやり方をどう変えたのか。
記述で何をしたのか。
そして本番で、頭が真っ白になるようなミスをしながら、どう立て直したのか。
今年、令和8年の学科試験は9月2日に発表がありました。
合格者は7,619人。合格率26.2%。
どちらもこの6年でいちばん多く、高い数字です。
つまり例年より多くの方が、いま製図に向かっているということになります。
そして今年から、設計製図の試験に法令集を持ち込めるようになりました。
私が受けたときにはなかった制度です。
前提が変わる年です。
だからこそ、この記事では変わらない部分の話をします。
6時間半という限られた時間の中で、1枚の図面を成立させる。
そのために何をどう組み立てるか、という話です。
試験そのものの難易度や合格率については、一級建築士の難易度・合格率は?で詳しく書いています。
この記事では、製図の中身だけに集中します。
製図2回の全記録:1回目ランクⅡ→2回目合格
まず、私の製図試験の記録を整理します。
受験したのは、もう10年以上前のことです。
細かい日付までは覚えていませんが、事実関係だけ並べておきます。
| 1回目 | 2回目 | |
|---|---|---|
| 結果 | ランクⅡ(不合格) | 合格 |
| 図面 | 描き切った | 描き切った |
| 記述 | 埋めきった | 埋めきった |
| 手応え | 「やりきった」 | 半々 |
2回目の年の課題は、基礎免震構造を採用した建築物でした。
構造設計を仕事にしている私にとっては、少し縁を感じる出題だったことを覚えています。
1回目の課題名は、ここでは書きません。
手元に資料が残っていないうえ、建築技術教育普及センターが公開している過去の試験問題は平成28年までしか遡れないからです。
確認できないことを、覚えている気になって書くのはやめておきます。
1回目:「やりきった」と思った
1回目の試験は、最後まで描き切りました。
記述の文章も、空欄なく埋めきっています。
試験が終わったときの感覚は、「やりきった」でした。
もちろん、まったく不安がなかったわけではありません。
「どこか落としているかもしれない」という気持ちは、どこかにありました。
ただそれは、試験を受けた人なら誰でも持つ程度のものです。
そして、落ちました。
ランクⅡでした。
ここが大事なところです。
私は未完成で落ちたのではありません。
完成させて落ちています。
時間が足りずに図面が描き上がらなかったのなら、原因ははっきりしています。
次にやることも決まります。
速く描けるようになればいい。
でも、完成させて落ちたということは、自分では気づけないところで減点されていたということです。
しかも採点基準は公表されないので、どこが悪かったのかを確かめる方法がありません。
落ちた人がいちばん苦しいのは、たぶんここです。
💬 こいちろの体験談
「ランクⅡ」という4文字を見たときの感覚は、今でも覚えています。ランクⅣ(未完成など)だったら、まだ納得できたかもしれません。でもランクⅡは「あと一歩」です。何が一歩足りなかったのかが、どうしてもわからない。この宙ぶらりんな感じが、いちばんこたえました。
2回目:「書ききった」と「心残り」が半々だった
翌年、2回目を受けました。
こちらも最後まで描き切っています。
ただ、試験が終わったときの感覚は、1回目とはまるで違いました。
半々でした。
「書ききった」という思いはあります。
時間内に必要なものはすべて描きましたし、記述も埋めました。
でも同時に、大きな心残りがありました。
試験の最中に、致命的かもしれないミスに気づいてしまったからです。
その話は、この記事の最後で詳しく書きます。
さらにもうひとつ、私の頭を占めていたことがあります。
落ちたら、また学科からやり直しになるかもしれない。
当時の制度では、学科に合格したあと製図を受けられるのは、合格した年と翌年・翌々年の3回だけでした。
私はすでに2回受けています。
次に落ちれば、残りは1回。
そこでダメなら、また学科の5科目からです。
私は学科に4回かかっています。
足切りも2回経験しました。
あの4年をもう一度やるのかと思うと、背筋が寒くなりました。
手応えは、当てにならない
こうして並べてみると、はっきりすることがあります。
「やりきった」と思った年に落ちて、心残りを抱えた年に受かりました。
自分の手応えは、結果とまったく逆でした。
だから私は、試験直後に手応えで一喜一憂することに、あまり意味はないと思っています。
できることは、発表の日まで待つことだけです。
ランクⅡ「あと一歩」の敗因分析
ここが、この記事でいちばん書きにくい章です。
なぜなら、私は今でも、1回目の敗因がわからないからです。

敗因は、今でもわかりません
はっきり書きます。
わかりません。
設計製図の試験は、採点基準が公表されません。
自分の図面が何点だったのかも、どこで減点されたのかも教えてもらえません。
届くのは「ランクⅡ」という区分だけです。
合格体験記を読むと、「私の敗因は〇〇でした」と書いてあるものをよく見かけます。
読んでいて、正直うらやましくなります。
ただ、少し意地悪な見方をすると、あれは後から辻褄を合わせているだけかもしれません。
受かったという結果から逆算すれば、前年の自分に足りなかったものを、それらしく説明することはできてしまいます。
私はそれをやりたくありませんでした。だから、わからないものはわからないと書きます。
思い当たることは、ひとつだけある
とはいえ、まったく心当たりがないわけではありません。
ひとつだけ挙げるなら、記述に対する苦手意識です。
図面のほうは、時間内に描き切れています。
一方で記述は、書けてはいるものの「これで伝わっているのだろうか」という不安がずっとありました。
その不安には、後から思えばちゃんと理由がありました。
記述対策の章で書きます。
ただし、これが敗因だと断言はできません。
記述が原因だったという証拠は、どこにもないからです。
当時の私が立てた仮説
原因がわからないまま、それでも次の年に向けて何かを変えなければいけません。
当時の私が立てた仮説は、こうでした。
「描き切ったけれど、内容が若干薄かったのではないか」
時間内に描き上げてはいる。
でも、その中身が合格ラインに届いていなかったのではないか。
そう考えました。
この仮説が当たっていたかどうかは、今もわかりません。
ただ、この仮説から打った手は2つあります。
- 作図スピードを上げる
- 記述の精度を上げる
どちらも「内容を濃くするため」の手でした。
速く描ければ、その分だけ中身を詰める時間が生まれます。
記述の精度が上がれば、図面で伝えきれない部分を補えます。
変えたこと1:シャーペンの芯を3Bにした
物理的に変えたことが2つあります。
ひとつめは、シャープペンシルの芯を3Bにしたことです。
1回目は、たしかHBを使っていたと思います。
きっかけは、人から聞いた話でした。
「線が薄いと、それだけでハネられることがある」
本当かどうかはわかりません。
今でもわかりません。
根拠のある話なのか、受験生のあいだで語り継がれている噂なのか、確かめようがないからです。
ただ、聞いたときに妙に納得してしまったのです。
言われてみれば、パッと見の印象は大事なのかもしれない。
たしかにそうかもしれないな、と。
それで芯を3Bに変えました。
濃い線で、はっきり見える図面にする。
合理的な判断だったとは言えません。
でも、原因がわからないまま何かを変えなければいけない状況では、こういう判断もするものです。
この話を「薄いとハネられます」と断定して伝えるつもりはありません。
私が聞いた話で、真偽は不明です。
ただ、当時の私がそう考えて手を打った、という事実だけを書いておきます。
変えたこと2:テンプレートを封印した
もうひとつが、テンプレートを使うのをやめたことです。
製図試験では、柱や窓、扉、便器などを描くためのテンプレート定規を使うのが一般的です。
資格学校でも、使い方を教わります。
私は2回目に向けて、それを封印しました。
柱も、窓も、扉も、トイレの絵も、ほとんどフリーハンドで描くようにしました。
平行定規を使ったのは、通り芯や壁芯、FLといった基準になる線だけです。
理由は単純で、道具を持ち替える時間を削るためでした。
テンプレートを取って、当てて、描いて、また置く。
1回あたりは数秒です。
でもそれが図面全体で何十回、何百回と積み重なります。
その時間を、全部なくしてしまおうと考えました。
フリーハンドで、図面は汚くならないのか
当然、こう思われるはずです。
フリーハンドにしたら線が歪む。
図面の見栄えが落ちて、減点されるのではないか、と。
私はこう考えていました。
製図試験を、何人が受けると思っているのでしょうか。
一人ひとりの図面について「この扉の絵が歪んでいる」といった点を捕まえて減点していく。
そんな採点は、たぶんしていないはずです。・・・たぶんね。
まず第一印象である程度ふるいにかけて、そのあとで法的に重大な欠陥がないか、建物の計画として無理がないか。そういう大きな減点項目から見ていくはずです。
もちろん、あまりにひどく歪んで何の絵かわからない、というレベルまでいけば問題でしょう。
でも多少の歪みなら、むしろ味があるのではないでしょうか。
建築雑誌に載っているスケッチも、定規で引いた真っ直ぐな線より、フリーハンドの線のほうがいい感じに蛇行していて、味が出ているような気がします。
あくまで個人的な感想ですが。
フリーハンド、意外と描けるもんですよ。
💬 こいちろの体験談
3Bで濃くして印象を良くしようとする一方で、テンプレートを捨てて精度を落とす。書いていて、矛盾しているように見えるなと思いました。でも私の中では、ちゃんとつながっています。「大きなふるいには第一印象が効く。でも細部の精度までは見られていない」という読みがあったからです。だから濃くはする。でも歪みは気にしない。そういう割り切りでした。

製図は独学で受かるのか?2回受けた私の答え
ここで、よく検索されている疑問に答えておきます。
「製図は独学で受かるのか」
先に立場をはっきりさせておきます。
私は独学ではありません。
学科も製図も、日建学院に通っていました。
だから「独学で受かった人」としての話はできません。
そのうえで、2回受けた者としての答えを書きます。
独学で受かった人を、私は聞いたことがない
まず事実として、製図を独学で受けて合格した人を、私は聞いたことがありません。
周りにもいませんし、噂でも聞きません。
もちろん世の中のどこかにはいるのだと思います。
ただ、少なくとも私の見える範囲では、一人も知らないというのが正直なところです。
学科と製図は、性質がまったく違う
学科試験は、独学でも戦える試験だと思います。
範囲は広いですが、問題には答えがあります。
過去問を解けば、自分がどれくらいできるかが点数でわかります。
答え合わせができる試験です。
製図は違います。
6時間半という時間の中で、課題文を読み、計画を組み立て、図面を描き、記述を書く。
技術の試験です。
そして何より、
自分の図面が合格水準にあるかどうかを、自分では判断できません。
採点基準は公表されていません。
標準解答例は出ますが、それは「こういう解き方もある」という例であって、自分の図面が何点なのかを教えてくれるものではありません。
ここが独学の最大の壁だと思います。
私は2年通いました。
講師に図面を見てもらい、自分のプランが成立しているかを確認してもらいました。
それでも1回目は落ちました。
そして敗因は今でもわかりません。
通っていても、わからなかったのです。
独学だったら、どうなっていただろうと考えることがあります。
自分の図面の何が足りないのかを、誰にも教わらないまま次の年を迎える。
想像すると、かなり厳しい戦いになっていたと思います。
私が受けたときと、今の試験で変わったこと
ここまで読んでいただいて、ひとつ気になっている方がいるかもしれません。
「それ、10年以上前の話ですよね」と。
そのとおりです。
そして私が受けたあと、試験の制度はいくつか変わっています。
古い話をそのまま「今もこうです」と書くわけにはいきません。
変わったところを、先に整理しておきます。
1. 令和8年から、製図でも法令集が使えるようになった
今年からの大きな変更です。
令和8年から、設計製図の試験の当日に持ち込めるものとして、法令集が追加されました。
持ち込める条件は、学科の試験と同じです。
具体的には、次のような条件になっています。
- 2冊まで使用できる
- 付随する追録、追補、訂正表等は追加できる
- 見出し、脚注等の簡単な書込み及び印刷以外に解説等がないもの
- 条文の順序の入替等のないもの
私が受けたときは、法令集を持ち込めませんでした。
必要な数字や条件は、頭に入れておくしかありませんでした。
この変更がどう影響するか。
私は体験していないので、予想は書きません。
ただ、実務で図面を描いている立場から見立てを言うなら、ひとつだけあります。
法令集を引く時間は、6時間半をそのまま圧迫します。
手元にあるから安心、とはなりません。
「引くもの」として使い始めると、あっという間に時間が溶けます。
あくまで「確認するもの」として、最小限の回数で使えるかどうか。
そこが分かれ目になるのではないかと思います。
暗記が不要になったわけではない、ということです。
2. 令和2年から、学科合格後の免除の仕組みが変わった
こちらも大きな変更です。
今の制度では、学科に合格すると、その後に行われる4回の建築士試験のうち2回まで、学科免除で製図を受けられます。
学科に合格した年の製図を欠席した場合は、3回になります。
欠席なら免除の回数は減りません。
ただし出席すると、途中退室であっても回数が1回減ります。
私が受けたときは、ここが違いました。
学科に合格した年と、その翌年・翌々年の3回だけ。
選ぶこともできませんし、使わなければ消えていきます。
この違いは大きいです。
今の制度なら、学科に受かった年は製図を受けずに準備に充てて、翌年から腰を据えて3回勝負する、という戦い方ができます。
当時の私には、その選択肢がありませんでした。
前の章で「落ちたらまた学科からやり直し」と書きましたが、その重さが今とは違うということです。
なお、免除の回数の数え方は少し複雑です。
センターが図解のPDFを公開しているので、ご自身の状況はそちらで確認してください。
3. 令和2年から、実務経験は受験の条件ではなくなった
もうひとつ。
実務経験の扱いも変わりました。
令和2年の建築士法の改正で、建築実務の経験は免許登録の要件になりました。
受験申込のときではなく、合格後の免許登録のときに確認されます。
つまり、いまは大学を出てすぐに受験できます。
私のときは、実務経験がなければ受験の申込みすらできませんでした。
働きながら経験年数を積んで、ようやく受験資格を得る。
そういう順番でした。
💬 こいちろの体験談
こうして並べてみると、ずいぶん受けやすくなったなと思います。正直、少しうらやましいです。ただ、制度が変わっても、6時間半で図面を成立させる難しさそのものは変わっていません。ここから先の話は、今でもそのまま使えるはずです。
【出典】
公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和8年一級建築士試験 受験要領」資料3
https://www.jaeic.or.jp/.assets/jyukenyoryo-1k-2026.pdf
公益財団法人 建築技術教育普及センター「試験について」
https://www.jaeic.or.jp/shiken/1k/about-exam.html
公益財団法人 建築技術教育普及センター「建築士試験の『学科の試験』の免除回数について(参考)」
https://www.jaeic.or.jp/shiken/1k/1k-q/1ktoiawasesaki.files/gakka_mennjo_image.pdf
国土交通省 報道発表「令和8年一級建築士試験『学科の試験』の合格者を決定」(令和8年9月2日)
https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_001146.html
エスキスと時間配分:6時間半の戦い方
ここから、具体的な中身に入ります。
まず時間配分です。
2回目の私の時間配分
設計製図の試験は6時間30分、390分です。
私が2回目に組んでいた配分は、だいたいこうでした。
| 工程 | 時間の目安 |
|---|---|
| 問題文を読む | 30〜45分 |
| エスキス | 2時間弱 |
| 作図 | 2時間半くらい |
| 記述 | 1時間 |
| 見直し | 15分ほど |
合計すると、6時間15分から6時間30分。ほぼ390分いっぱいです。
この配分で、意識していたことが2つあります。
記述に1時間を確保した
まず、記述に1時間をたっぷり取りました。
理由は単純で、短めの時間配分にすると、めちゃくちゃ焦るからです。
記述は最後のほうに回ってくる作業です。
そこで時間が足りないと、書きたいことを削ることになります。
焦って書いた文章は、自分でも何を言っているかわからなくなります。
だから先に1時間を確保しておく。
そのうえで、他の工程をそこに合わせる。
そういう組み方にしました。
圧縮できるところを、圧縮する
では、どこを削って記述の1時間を作ったのか。
作図です。
ここで、私が製図試験について思っていることを書きます。
考えるスピードを速くするのは、至難の業です。
エスキスは考える作業です。
記述も考える作業です。
ここを「もっと速く考えよう」としても、そう簡単にはいきません。
思考の速度は、訓練でどうにかなる部分が限られています。
一方で、考えなくていいことは、訓練でいかようにもなると私は思っています。
作図は、決まったものを決まったとおりに描く作業です。
何をどこに描くかは、エスキスの段階でもう決まっています。
あとは手を動かすだけ。
ここは反復すれば必ず速くなります。
だから、圧縮できるところを圧縮して、考える時間に回す。
前の章で書いたテンプレートの封印も、これが理由です。
持ち替える数秒を削ったのは、その積み重ねを作図から取り除いて、エスキスと記述に充てるためでした。
💬 こいちろの体験談
「作図が速くなりました」だけだと、何の自慢にもなりません。速く描けること自体には、何の価値もないからです。速く描けると、考える時間が増える。そこに意味があります。私はそう捉えていました。
本番は、思いどおりにはいきませんでした
正直に書きます。
2回目の本番は、この配分どおりにいきませんでした。
問題文の見落としがあったからです。
途中で頭が真っ白になりました。
その話は最後の章で書きます。
ただ、結果的にはこうも言えます。
圧縮しておいたから、ハプニングに対応できました。
もっとも、これは結果論です。
「ハプニングに備えて時間の余裕を作っておきましょう」と言いたいわけではありません。
私はそんな備え方をしていませんでした。
たまたま作図が速くなっていたから、立て直す余地があった。
それだけです。
それでも、事実として残ったことは書いておきます。
時間の余裕は、計画どおりに進まなかったときにこそ効きます。
今年からは、ここに法令集を引く時間が乗る
ひとつ前の章で書いたとおり、今年から法令集を持ち込めるようになりました。
つまり、6時間半の配分に、法令集を引く時間が新しく加わるということです。
私は体験していないので断言はできません。
ただ、持ち込めるようになったからといって、全体の時間が延びるわけではありません。
どこかを削らなければ、その時間は捻出できないはずです。
削る先は、たぶん作図になるのだと思います。
記述対策:構造設計の実務がそのまま武器になった
この章が、私がいちばん書きたかったところです。

「記述が苦手」の正体は、文章力ではなかった
前のほうで、1回目の敗因として思い当たることが記述だった、と書きました。
当時の私は、記述に苦手意識を持っていました。
では、何が苦手だったのか。
長いあいだ、私はそれを「文章を書くのが苦手だから」だと思っていました。
うまい言い回しが浮かばない。
説明が下手だ。
そういう問題だと思っていたのです。
でも違いました。
正体は、建築計画や設備の知識が、まともに頭に入っていなかったことです。
給水方式がどうなっているのか。
空調方式にはどんな種類があって、それぞれ何が違うのか。
そういう基本的なところが曖昧なままでした。
だから、書こうとしても「これで合っているのだろうか」という不安が消えない。
その自信のなさが、「記述が苦手」という感覚になっていたのです。
2回目に向けて、私はそこを潰しました。
やったのは文章の練習ではなく、知識の入れ直しです。
もし今、記述が苦手だと感じている方がいたら、一度切り分けてみてください。
本当に文章の問題でしょうか。
それとも、書こうとしている中身を、まだよく知らないだけでしょうか。
後者なら、対策は文章術ではありません。
計画と設備を、もう一度きちんと学び直すことです。
記述とは、図面で描ききれない部分の補完である
では、知識が入ったうえで、記述に何を書くのか。
私はこう捉えていました。
設計者の思想を、絵で書ききれない部分の補完をするもの。
図面には、決めたことしか描けません。
柱がここにある。
この部屋はこの広さにする。
それは描けます。
でも、なぜそうしたのかは、図面だけでは伝わりません。
だから記述で、そこを補うのです。
「私はこういうところまで考えて設計していますよ」
それを全面に押し出そうと考えました。
単に問われたことに答えるのではなく、自分の設計の意図を伝える場として使う。
そういう意識に切り替えたのが、2回目でした。
💬 こいちろの体験談
記述対策の記事は世の中にたくさんありますが、多くは「こう書けば点が入る」という書き方の話です。もちろんそれも大事だと思います。ただ私の場合、書き方を工夫する前に、書く中身を持っていなかった。そこに気づけたのが大きかったです。
構造設計の実務が、そのまま効いた
もうひとつ、私には有利な点がありました。
仕事が構造設計だったことです。
構造計画について記述で問われたとき、私は実務で日常的に考えていることを書けばよかったのです。
スパンをどう割るか。
架構をどう組むか。
なぜその断面にするのか。
毎日やっていることでした。
これは運が良かったとしか言いようがありません。
意匠設計をされている方なら、また別の強みがあるはずです。
ただ、ひとつ言えることがあります。
自分の実務で持っているものは、記述でそのまま使えます。
試験のためだけに覚えた知識より、自分の言葉で書けるはずです。
この効果は、あとで数字ではない形で確認することになります。
その話は、最後の章で書きます。
日建学院の製図講座に2年通ったリアル
私は製図で2年、日建学院に通いました。
学科のときから通っていたので、通算するとかなりの期間になります。
出張がない限り、ほとんど学院にいました
通っていた頻度から書きます。
正確な回数の記憶はあいまいなのですが、出張などの予定がない限り、ほとんど学院に行っていたと思います。
仕事のあと、あるいは休みの日に、教室に向かう。
そういう生活でした。
講義の内容は、回によって違いました。
エスキスまでをやる日もあれば、記述だけの日もあった、と記憶しています。
作図の講義は、記憶にありません
ここで、少し意外に思われるかもしれないことを書きます。
作図について、講義を受けた印象がほとんどありません。
理由は、はっきりしています。
作図は、家でもできるからです。
作図の練習は、課題をトレースしてスピードを上げるだけです。
一人で完結します。
わざわざ教室まで行って、講師の前でやることではありません。
では、学院の時間を何に使っていたか。
エスキスで考えた自分のプランが、法的に、計画的に満足しているかを確認してもらうこと。
ここに当てていました。
家でできないことに、学院の時間を使う
この切り分けが、私の通い方でした。
作図のスピードは、自分ひとりで上げられます。
何枚描いたか、何分で描けたか、自分で測れるからです。
でも、自分のプランが成立しているかどうかは、自分では判断できません。
法的にアウトなところはないか。
動線に無理はないか。
要求室の配置に問題はないか。
これは、誰かに見てもらわないとわかりません。
前の章で「自分の図面が合格水準にあるかを自分では判断できない」と書きましたが、その弱点を埋めるために通っていた、ということになります。
講義がエスキスや記述を中心に組まれていたのも、たぶん同じ理由だと思います。
💬 こいちろの体験談
講師からどんな指摘を受けたか、具体的には覚えていません。10年以上前のことなので、細かい言葉までは残っていないのが正直なところです。ただ、自分のプランを他人の目で見てもらえる場所があったことは、間違いなく大きかったです。
本試験のあと、再現図を見てもらえる
ひとつだけ、仕組みを説明しておきます。
この記事の最後の話につながるからです。
日建学院では、本試験が終わったあとに再現図を採点してもらえます。
やり方はこうです。
試験が終わってから、自分が本番で描いた図面を思い出しながら、もう一度描きます。
本番と同じ精度では描けません。
私の場合は、エスキス以上・本試験以下くらいの精度でした。
記述も、覚えている範囲で再現します。
それを持ち込んで、見てもらうのです。
合否がわかるわけではありません。
ただ、自分の図面がどう評価されるのかを、発表を待たずに知ることができます。
落ちたかもしれないと思っているときの、数少ない手がかりです。
本試験は運も絡む:課題文の見落としからのリカバリー
最後に、2回目の本番で起きたことを書きます。
この記事でいちばん書きたかった話であり、いちばん思い出したくない話でもあります。

通り芯と柱を描き出したところで、気づいた
エスキスを終えて、作図に入っていました。
通り芯を引き、柱を描き出したあたりです。
試験全体でいえば、中盤にさしかかったところでした。
手を動かしながら、私は頭の中で動線を追っていました。
人がここから入って、こう進む。
車はここから入ってくる。
そういう確認です。
そのときでした。
搬入用の車両が入ってくる道路に、時間制限があったのです。
課題文には、たしかにそう書いてありました。
私はそれを読み落としたまま、エスキスを固めていました。
エスキスは、もう終わっていた
血の気が引くのがわかりました。
もしこれがエスキスの途中なら、計画を組み直せます。
でもそのときには、すでにエスキスは終わり、計画は確定していました。
通り芯も柱も、紙の上に描き始めています。
ここから全部やり直す時間は、ありません。
計画は変えず、図面に文章を書き込んだ
しばらく考えて、私が出した結論はこうでした。
計画は変えない。
代わりに、図面の上に文章で書き込む。
平面図の道路脇に、こう書き添えたのです。
「この時間帯は、この道路から車両を入れない」というような内容でした。
正直に言います。
苦しい対処です。
💬 こいちろの体験談
ちゃんと理解していますよアピールですね。ちょっと苦しいかなと思いましたが、なんにも配慮しないよりはマシと判断して、このような対応を取りました。
条件を無視したまま描き上げるよりは、条件を理解していることを示したほうがいい。
そう考えました。
それが正しかったのかは、今でもわかりません。
記述のほうにも同じことを書いたかどうか、実は覚えていません。
それくらい動転していました。
そのあとは、ひたすら手を動かした
書き込んだあと、私は作図に戻りました。
そこから先の記憶は、正直あいまいです。
この件が印象的すぎて、他の内容のことはあまり覚えていません。
ただ、手は止めませんでした。
図面の密度を上げることに、一心不乱になっていたと思います。
ミスしたところはもう動かせない。
なら、それ以外のところで積み上げるしかない。
そう考えていたはずです。
試験が終わって会場を出たときは、落ち込んでいました。
あの道路のことばかり考えていました。
不思議なもので、その落ち込みは時間とともに薄れていきました。
数日経つと、「やれるだけのことはやった」と思えるようになっていました。
達成感は、あとから徐々に高まってきたという感覚です。
再現図を持ち込んで、わかったこと
後日、前の章で書いた再現図の採点を受けました。
結果は、意外なものでした。
構造計画の記述について、文句のつけようがないくらいの評価をもらったのです。
他の記述についても、まったくダメだという指摘はありませんでした。
いちばん動揺した年に、記述がいちばん評価されていた。
これは偶然ではないと思っています。
2回目に向けて私が力を入れたのは記述でした。
計画と設備の知識を入れ直し、設計の意図を伝える場として記述を使う。
その準備が、そのまま結果に出ていたのです。
そしてもうひとつ気づいたことがあります。
本番で「図面の上に文章で書き込む」という発想が出てきたのも、記述をそう捉えていたからです。
図面で描ききれないことは、言葉で補える。
その考え方が身についていたから、パニックの中でもその手が出たのだと思います。
この試験は、運も絡みます
最後に、この章で伝えたいことを書きます。
本試験には、運の要素があります。
その年の課題との相性。
問題文の読み違え。
当日の体調。
コントロールできないことは、たしかにあります。
私の場合は、課題文の見落としがそれでした。
でも同時に、こうも思います。
ミスひとつで、全部が終わるわけでもありません。
私は致命的かもしれないミスをして、苦しい対処をして、血の気が引いたまま図面を仕上げました。
それでも受かりました。
理由は2つあると思っています。
ひとつは、気づいた時点で最善を尽くして、手を止めなかったこと。
もうひとつは、ミス以外の部分で、積み上げてきたものがあったこと。
もし本番で何かに気づいてしまっても、そこで終わりではありません。
残りの時間でできることを、やりきってください。
まとめ:わからないまま、それでも動いた1年でした
長くなりましたので、整理します。
| 1回目 | 2回目 | |
|---|---|---|
| 作図 | テンプレート使用 | テンプレート封印・フリーハンド中心 |
| 芯の濃さ | たしかHB | 3B |
| 時間配分 | 記述が窮屈だった | 記述に1時間を確保し、作図を圧縮 |
| 記述 | 苦手意識あり | 計画・設備の知識を入れ直した |
| 結果 | ランクⅡ | 合格 |
こうして並べると、やったことの筋は通って見えます。
でも当時の私は、何が敗因かわからないまま手を打っていました。
作図を速くしたのは、エスキスと記述に時間を回すためでした。
その時間の余裕が、本番でミスに気づいたときの立て直しにも効きました。
記述を強化したのは、文章がうまくなるためではなく、書く中身を持つためでした。
その中身が、いちばん動揺した年に評価されました。
ひとつひとつは、手探りの選択でした。
それがつながって結果になった、というのが正直なところです。
製図の勉強時間について
学科のときは、なんとなくですが勉強時間を記録していました。
でも製図については、記録していません。
だから何時間やったかは書けません。
ただ、体感としてはこうでした。
一日中、試験のことを考えているような期間です。
落ちたらフリダシに戻る。
受かりきりたい。
そして何より、勉強生活から卒業したい。
そういう気持ちで過ごしていました。
時間で測るようなものではなかった、というのが正直なところです。
学科の勉強時間については、やってはいけない勉強法5選で4年分の実録を書いています。
あちらは記録が残っていたので、数字で出せました。
最後に
製図試験は、答えのない試験です。
自分の図面が何点なのかは、最後までわかりません。
だからこそ、わからないなりに手を動かし続けることしかないのだと思います。
私はそうやって2回目を迎えました。
そして、これを読んでいる方に伝えたいことがあります。
令和2年の制度変更で、いまは大学を出てすぐに受験できるようになりました。
つまり、20代の前半からこの試験に挑んでいる方がいるということです。
遊びたい時期に勉強しているのは、本当に偉いと思います。
志が高いです。
きついですもん。
私も経験したから、わかります。
この記事が、いま製図に向かっている方の何かの役に立てばうれしいです。
試験そのものの難易度や合格率は一級建築士の難易度・合格率は?に、学科でどこにつまずいたかは一級建築士のやってはいけない勉強法5選に書いています。
資格を取ったあとの話に興味がある方は、一級建築士の年収はいくら?もどうぞ。
有価証券報告書まで調べて書きました。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

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