「構造設計一級建築士って、何ができる資格なの?」
「どうやって取るの?ふつうの一級建築士と何が違うの?」
この記事は、構造設計一級建築士を実際に取得した私が、その取り方と仕事の中身を書いたものです。
私は、工場や倉庫などの生産施設の構造設計をしています。
一級建築士は、合格までに5年かかりました。
そこから構造設計の実務を5年積んで講習を受け、修了考査は2年かかって修了しました。
1年目に構造設計、2年目に法適合確認に合格しています。
制度のくわしい説明は、公式サイトや資格学校のページを見れば分かります。
この記事で書くのは、取得した本人が何をして、何が変わったかです。
- 講習と修了考査で、実際に何をしたか
- 1年目に落とした科目に、2年目どう取り組んだか
- 構造設計の仕事で、ふだん何をしているか
- 資格を取得して、何が変わったか
構造設計一級建築士とは?要点だけ押さえる
構造設計一級建築士は、一級建築士の上に重ねて取得する資格です。
ある程度より大きな建物の構造設計には、構造設計一級建築士が必ず関わるように法律で決められています。
何ができる資格か
一定の規模を超える建物では、次のどちらかが必要です。
- 構造設計一級建築士が、自分で構造設計をする
- ほかの一級建築士が構造設計をした場合は、構造設計一級建築士が「法律に合っているか」を確認する(法適合確認)
対象になる建物の例は、次のとおりです。
- 木造:地階を除く階数が4以上、または高さが16mを超えるもの
- 鉄骨造:地階を除く階数が4以上のもの
- 鉄筋コンクリート造:高さが20mを超えるもの
つまり、ある程度大きな建物には、構造設計一級建築士の関与が必要です。
受けるための条件
講習を受けるには、一級建築士として5年以上、構造設計の仕事をした経験が必要です。
構造の工事監理や、確認申請の構造の審査などの経験も含まれます。
一級建築士に受かってすぐには受けられない、というのがポイントです。
私の場合は「受けるまで」の章に書きます。
一級建築士のような「試験」ではなく「講習」
構造設計一級建築士は、制度の上では試験ではなく、講習を修了して取得する資格です。
講義(2日間)に出席し、そのあとの修了考査(1日)に合格すると修了です。
科目は「法適合確認」と「構造設計」の2つです。
とはいえ、修了できるのは3割前後。
講習に出ればもらえる資格ではありません。
受けた私の感覚では、修了考査はほぼ「試験」です。
修了したら、1年以内に構造設計一級建築士証の交付を申請します(窓口は住んでいる都道府県の建築士会)。
中身は「講習と修了考査の中身」の章でくわしく書きます。
人数と年収は、別の記事に書きました
構造設計一級建築士が何人いるか、年収はどのくらいかは、こちらの記事にまとめています。
一級建築士の年収はいくら?679万円の中身を構造設計一級建築士が有価証券報告書まで調べた
出典:建築技術教育普及センター「構造設計一級建築士講習制度」
https://www.jaeic.or.jp/koshu/s1k/seido.html
出典:建築技術教育普及センター「構造設計一級建築士講習 修了者のみなさまへ」
https://www.jaeic.or.jp/koshu/s1k/completed.html
受けるまで:一級建築士+構造設計の実務5年
構造設計一級建築士の講習は、一級建築士を持っているだけでは受けられません。
一級建築士として、構造設計の実務を5年以上積む必要があります。
一級建築士に5年、そこから実務5年
私は、一級建築士に受かるまでに5年かかりました。
学科で4回、製図で2回受けています。
一級建築士のやってはいけない勉強法5選|学科4回・足切り2回で学んだ失敗談
一級建築士を取得してから5年の実務が必要なので、受けられるのは6年目からです。
私は受けられるようになってすぐ、2021年(令和3年)に初めて受けました。
受けたきっかけ
自分が手に職をつける、という意味で取得したいと思っていました。
構造設計の仕事で食べていくなら、必然の流れだと思います。
なぜ構造設計を選んだのかは、こちらの記事に書いています。
一級建築士の年収はいくら?679万円の中身を構造設計一級建築士が有価証券報告書まで調べたの「構造設計という選択肢」
講習と修了考査の中身
ここでは、講習と修了考査がどんなものかを、公式の受講要領をもとにまとめます。
数字や時間は、令和8年度のものです。
講義は2日間。会場か動画かを選べる
講義は2日間です。
会場で受けるか、配信される動画を見て受けるかを選べます。
- 1日目:10:00〜17:40(昼休みあり)
- 2日目:10:00〜17:30(昼休みあり)
私の年はオンラインで、講義はビデオで見ました。
講義は役に立ちました。
修了考査は1日で2科目。それぞれ3時間
修了考査は1日で、2科目を続けて受けます。
- 法適合確認:10:00〜13:00(3時間)
- 構造設計:14:15〜17:15(3時間)
問題は、それぞれの科目で「理由を書く4択の問題」が10問と、「記述の問題」が3問です(資格学校の案内による)。
テキストと黄色本を持ち込める
修了考査には、次のものを持ち込めます。
- 講習テキスト(その年に使える版のもの)
- 『建築物の構造関係技術基準解説書』(通称「黄色本」)1冊
- 関数電卓(プログラム機能のないもの)
持ち込み可なので、答えを持って受験するも同然です。
いかに素早く答えを探し出せるかが勝負になります。
片方だけ受かったら、2年後の講習まで免除
2科目のうち片方だけ合格した場合は、申請すれば、2年後の講習までその科目の講義と修了考査が免除されます。
たとえば令和8年度に片方に合格したら、令和10年度の講習まで免除です。
私は1年目に構造設計に合格し、2年目は法適合確認だけを受けました。
修了できるのは3割前後
修了率は、次のとおりです。
| 年度 | 全体 | 2科目とも受けた人 (区分Ⅰ) | 法適合確認だけ受けた人 (区分Ⅱ) |
|---|---|---|---|
| 令和3 | 29.9% (676人→202人) | 25.0% (535人→134人) | 45.0% (80人→36人) |
| 令和4 | 36.3% (651人→236人) | 30.0% (516人→155人) | 74.4% (78人→58人) |
| 令和7 | 30.7% (762人→234人) | 24.9% (635人→158人) | 69.0% (58人→40人) |
私は1年目が令和3年度の区分Ⅰ(修了率25.0%)、2年目が令和4年度の区分Ⅱ(修了率74.4%)でした。
2科目とも受けた人(区分Ⅰ)の修了率は、3つの年度とも25〜30%です。
片方だけの再挑戦は、令和4年度と令和7年度は7割前後が修了しています(令和3年度は45.0%)。
出典:建築技術教育普及センター「令和8年度 構造設計一級建築士講習 受講要領」
https://www.jaeic.or.jp/assets/pdf/koshu/s1k/kouzouhr8.pdf
出典:建築技術教育普及センター「構造設計一級建築士講習データ」
https://www.jaeic.or.jp/koshu/s1k/data.html
出典:建築技術教育普及センター「「令和7年度構造設計一級建築士講習」修了判定の結果概要等について」
https://www.jaeic.or.jp/assets/pdf/koshu/s1k/s1k-kekkagaiyou-2025.pdf
出典:総合資格学院「構造設計1級建築士講習 修了考査について」
https://www.shikaku.co.jp/course/kozo-1k/info/shiken/
私の修了考査:1年目は構造設計だけ合格、2年目に法適合確認
準備は「過去問だけ」
講習(受けないと修了考査を受けられません)は受けたうえで、資格学校には通わず、JSCA(日本建築構造技術者協会)の過去問集だけで準備しました。
1年目は、修了考査の3か月前、お盆明けから過去問を解き始めました。
平成27年度〜令和2年度の6年分を、5周しています。
勉強した時間は、正直あまり覚えていません。
私が解いた平成27年度〜令和2年度の過去問は、今とは形式が違います。
令和2年度までは、法適合確認が記述式5問だけ、構造設計が4択20問+記述式3問でした。
私が初めて受けた令和3年度から、どちらの科目も4択10問+記述式3問に変わっています(JSCAの過去問集で確認)。
形式が変わることは、受ける前から知っていました。
なので、焦ることはなかったです。
法適合確認に新しく入った4択は、記述より楽に感じました。
ノート6冊に、正答率を記録していた
手元に、当時のノートが6冊残っています。
4冊目からは2年目のノートです。
構造設計の4択の過去問は、1周ごとの正答率を記録していました。
| 周回 | 構造設計の4択(20問)の正答率 |
|---|---|
| 1周目 | 大体4〜5割 |
| 5周目 | ほぼ100% |
(平成27年度〜令和2年度の6年分)
同じ問題を繰り返していたこと、構造という自分の専門分野だったことで、この正答率になったんだと思います。
畑違いのFP2級とは違いました。
FP2級に125時間では届かなかった|学科33点・実技45点の全記録
間違えた選択問題は、どの箇所が間違っているかまで、しっかり分析しました。
記述式の問題も、実際に解いています。
テキストの付箋やアンダーラインは、講習のときや、過去問を解いた後に貼りました。

当日は、時間がきつかった
時間は結構きつく、ぎりぎりなんとか解いた感じです。
まったく分からない問題に当たると、焦りがどんどん加速していきます。
心を落ち着けるのが大切です。
手応えがあった法適合確認が、落ちた
💬 こいちろの体験談
1年目は、法適合確認のほうが手応えがありました。でも結果は逆で、合格したのは構造設計だけでした。
試験が終わってすぐに見直すと、テキストに書かれている項目が、そのまま試験に出ていました。自分の答えは、それと違っていました。
特に悔やまれるのは、法適合確認の記述式の1問目、ツインタワーの問題です。テキストの76ページに、バッチリ書いてありました。どこに何が書いてあるかをしっかり分かっていれば、解けた問題です。
テキストの読み込みが甘かったんだと思います。

2年目:やり方は同じ。テキストから素早く探す練習
2年目も、やり方は特に変えていません。
分野が1つに絞られたので、効率は2倍になったと思います。
始めたのは、お盆前です。
修了考査はテキストと黄色本を持ち込めるので、過去問を解きつつ、その問題がテキストのどこに書いてあるのかを素早く見つけられるように練習しました。
過去問集は、2年目も買いました。
前の年の修了考査も載っているので、自分の答えの確認も兼ねています。
2年目は、1年目より時間的なストレスが少なかったです。
こうして法適合確認に合格し、修了しました。
構造設計の仕事って、何をしているの?
資格の話から少し離れて、構造設計の仕事そのものを書きます。
私は工場や倉庫などの生産施設を担当しています。
1つの建物で、構造設計者がすること
1つの建物で、構造設計者がすることは、おおむね次の流れです。
意匠図を受け取る → 構造計画 → 構造計算 → 構造図 → 確認申請 → 質疑回答 → 現場(配筋検査など)
ただ、出番は意匠図を受け取ってからだけではありません。
その前後でも、柱の間隔をどう割るか(スパン割り)で、構造の出番があります。
意匠設計者と一緒にお客さんのところへ行って話を聞いたり、意見を交わしたりすることもあります。
ふだんの1日は、決まっていない
午前はこれ、午後はこれ、と分かれているわけではありません。
曜日ごとに決まった動きもありません。
お客さんとの定例打ち合わせや、案件ごとの打ち合わせは、ある程度決まっています。
でも、ある案件がずれ込むと、ほかの案件の予定を調整することもしばしばです。
その日の仕事は、たとえば次のようなものです。
- 意匠や設備・電気の設計者との打ち合わせ
- その他の社内会議
- お客さんとの定例打ち合わせ
- 図面を描くための資料づくり
- いろいろな部材の検討書づくり
どれをやるかは、そのときのタイミングや、仕事の進み具合で変わります。
同じ建物は、ひとつもない
構造設計において、ひとつとして同じ建物はありません。
構造形式や架構形式、スパン割、建物の高さ、何階建てなのか、荷重の条件。
いろいろな変数があります。
いかにしてお客さんの要望に応え、期間内に成果物(図面と計算書)を仕上げるか。
このタスク管理や、成果物が仕上がる瞬間に、達成感を得ています。
正直に言うと、着工した後、監理の段階での変更は、まったくウェルカムではありません。
時間を確保してもらえるならいいのですが、工期はまず変わらないし、現場も動き続けます。
急かされることには、かなりストレスを感じます。

失敗談:計算書の一部がNGのまま提出してしまった
💬 こいちろの体験談
たしか、保有耐力の一部でNGが出たままの検討書を出力して、提出してしまったんだと思います。
直前の変更対応で焦っていて、最後まで計算書の中身を確認できていなかったのが原因でした。審査機関から連絡が来て、OKになるまで計算し直し、確認申請をおろしました。
もちろん、提出前に計算書の見直しはしていました。同じ間違いは繰り返しません。今は、紙で出力する前にも、一貫計算ソフトの中でNGが出ていないかを確認しています。
当たり前のことですが、焦っているときほど冷静に。

配筋検査は「間違っている前提」で見る
現場の配筋検査は、間違っている前提で見ます。
そうでないと、間違いは見つけられないと思っています。
実際、指摘はいろいろあります。
かぶり厚さの不足(コンクリートの表面から鉄筋までの厚みが足りない)や、定着長さの不足(鉄筋をとなりの部材にのみ込ませる長さが足りない)などです。

取得して変わったこと
構造設計一級建築士を取得して、計算書や図面に自分の名前が載るようになりました。
法適合確認も自分でできるので、関わった案件が「自分の作品」だという実感は高まりました。
一方で、ひとつ間違えると、建物の重大な欠陥になってしまいます。
身が引き締まる思いで、計算書や図面を確認しています。
年収については、こちらの記事にまとめています。
一級建築士の年収はいくら?679万円の中身を構造設計一級建築士が有価証券報告書まで調べた
これから目指す人へ
修了考査を受ける人へ
まずは、テキストの内容の把握が一番です。
黄色本も、しっかり読み込んでください。
テキストも黄色本も、どこに何が書いてあるのかを把握しておく必要があります。
構造設計という仕事を目指す人へ
責任感のある仕事です。
でも、地図に自分の作品が載ります。
もしかしたら、建築雑誌に載る可能性もあります。
入社した当時は、構造設計は縁の下の力持ちのような立ち位置だと思っていました。
でも、地震や耐震偽装問題で、構造設計の重要性は高まっています。
お客さんに説明する機会も多くなってきました。
誇りを持って取り組むことのできる仕事だと思います。
よくある質問
構造設計一級建築士は難しいですか?
修了できるのは、毎年3割前後です(令和7年度は30.7%)。
私は修了までに2年かかりました。
テキストと黄色本を持ち込めますが、当日は時間が結構きつく、ぎりぎりなんとか解いた感じでした。
(くわしくは「講習と修了考査の中身」「私の修了考査」の章へ)
過去問はありますか?
あります。
建築技術教育普及センターのサイトで、直近の修了考査の問題が公開されています。
また、JSCA(日本建築構造技術者協会)から過去問集が出ています。
私はJSCAの過去問集を使いました。
修了考査の対策に、資格学校は必要ですか?
私は通いませんでした。
資格学校には通わず、JSCAの過去問集だけで準備しています。
過去問を5周し、その問題がテキストのどこに書いてあるのかを、素早く見つけられるように練習しました。
ただ、修了までには2年かかりました。
1年目に法適合確認を落としたのは、テキストの読み込みが甘かったからだと思っています。
なお、資格学校には、修了考査向けの講座もあります。
(くわしくは「私の修了考査」の章へ)
取得すると年収は上がりますか?
年収については、こちらの記事にまとめています。
一級建築士の年収はいくら?679万円の中身を構造設計一級建築士が有価証券報告書まで調べた
まとめ:取り方は「講習+修了考査」、仕事は「同じ建物はひとつもない」
【取り方】
- 一級建築士を取得して、構造設計の実務を5年積むと、講習を受けられる。
- 講義は2日間、修了考査は1日で2科目(それぞれ3時間)。
修了できるのは3割前後。
テキストと黄色本を持ち込めるので、どこに何が書いてあるかを把握しておくことが勝負。 - 私は修了までに2年かかった。
1年目は、テキストの76ページに書いてあった問題を落とした。
【仕事】
- 意匠図を受け取って、構造計画 → 構造計算 → 構造図 → 確認申請 → 現場まで。
スパン割りの段階から出番がある。 - 同じ建物はひとつもない。
お客さんの要望に応えて、期間内に図面と計算書を仕上げることにやりがいを感じる。 - 焦っているときほど冷静に。
現場の配筋検査は「間違っている前提」で見る。 - 取得すると、計算書や図面に自分の名前が載る。
身が引き締まる仕事。
一級建築士に5年かかった話は、こちらに書いています。
一級建築士のやってはいけない勉強法5選|学科4回・足切り2回で学んだ失敗談
出典:建築技術教育普及センター「構造設計一級建築士講習データ」
https://www.jaeic.or.jp/koshu/s1k/data.html
出典:建築技術教育普及センター「過去の考査問題等」
https://www.jaeic.or.jp/koshu/s1k/koshu-kakomon.html
出典:JSCA「構造設計一級建築士講習 修了考査問題と解答例(令和3~7年度)」
https://jsca.or.jp/6587/

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