贈与税の納付と聞くと「お金で納めるのが当たり前」と思いがちですが、実は事情によっては別の方法も認められています。
たとえば、手持ちの現金が足りない場合でも、すぐに家や土地を手放す必要はない場合があるのです。
今回は、そんな「贈与税の納付方法」に関する基本を、FP3級の出題形式に沿ってやさしく解説していきます。
⭐️この記事を読んで得られる知識は、以下の3点です。
- 延納とはなにか?
→税金を一度に払えないときに、分けて少しずつ払う方法のことです。 - 物納とはなにか?
→お金の代わりに“モノ(財産)で税金を納める”ことです。 - なぜ、贈与税での「物納」が認められないのか?
→贈与税は生きている人が払う税金だから。
もらった本人は生きていて、働いているのが普通だから、分割払い(延納)でも払えるはず、という理屈です。
📘 今回の分野:贈与税

今回取り上げるテーマは、相続・事業承継分野の「贈与税の納付・延納・物納」についてです。
実生活において、「納付」という言葉に聞き馴染みはあれど、「延納・物納」という用語はなかなか聞かないのではないでしょうか?
そんな聞き馴染みのない「延納・物納」という言葉。
意味を知り、どのような時に使用することが出来るのかまで理解できるのが、今回のこの記事になっています。
FP試験や実生活で直面した際に慌てないようにしましょう。

ぜひ、最後まで見ていってください。
税金(贈与税)/納付・延納・物納に関する知識
❓️ 問題文の紹介
贈与税の納付については、納期限までに金銭で納付することを困難とする事由があるなど、所定の要件を満たせば、延納または物納によることが認められている。
◯か✗か?
この問題を見た時に、特に問題ないように感じました。
端的に、誤っている箇所を見つけ出すことが出来なかったため、正当な問題文だと判断しました。
でも間違っていた。
引っかかる要素は、おそらく文末の部分。
延納・物納ともに認められていないか、どちらかだけが認められていないか。

次の章で正解を確認して、正しい知識を獲得しましょう‼️
✅ 正解と解説の要点

贈与税の納付については、納期限までに金銭で納付することを困難とする事由があるなど、所定の要件を満たせば、延納または物納によることが認められている。
◯か✗か?
→正解:✘(誤り)
正解は✘。
誤りの文章でした。
ポイントを整理して、どの部分が間違っているのか確認しましょう。
そして、同じ間違いを繰り返さないよう時間をおいてからまた見に来てください。
きっと、記憶に定着しますよ。☺️
それでは、ポイント解説を見ていきましょう‼️
✅️ポイント解説
贈与税の納付については、「延納」は認められていますが、「物納」は認められていません。

つまり、問題文のように「延納または物納によることが認められている」とすると誤りになります。
- 延納とは?
納付する資金が一度に用意できない場合に、年賦で分割して納める制度です。
利子税がかかりますが、最大で20年程度の期間で支払うことが可能です。 - 物納とは?
延納でも納税が困難な場合に、国が認めた財産(不動産・有価証券など)を現金の代わりに納める方法です。
ただし、どんな財産でもOKではなく、国が受け取りやすい性質のものに限られます。
🔍 深掘り考察!!
今回は、以下の点について解説していきたいと思います。
- 延納とはなにか?
→税金を一度に払えないときに、分けて少しずつ払う方法のことです。 - 物納とはなにか?
→お金の代わりに“モノ(財産)で税金を納める”ことです。 - なぜ、贈与税での「物納」が認められないのか?
→贈与税は生きている人が払う税金だから。
もらった本人は生きていて、働いているのが普通だから、分割払い(延納)でも払えるはず、という理屈です。
延納とは?

「延納」とは、税金をいっぺんに払えないときに、分けて少しずつ払う方法のことです。
いわば「税金の分割払い制度」です。
🏦 普通は一括払いが原則
贈与税は、原則として「金銭(お金)」で一度に全額納める必要があります。
たとえば、贈与税が100万円かかるなら、納期限までに100万円をまとめて払うのが原則です。
でも現実には、
「家や土地をもらったけど、現金は手元にない…!」
という人もいますよね。
💬 そんなときに助けてくれるのが「延納」
国は、そうした人たちのために「分割で払ってもいいよ」という制度を用意しています。
つまり、“延ばして納める”=延納です。
🧮 具体的なイメージ
たとえば…
- あなたが親から土地をもらいました。
- その土地の価値が高く、贈与税が200万円もかかることになりました。
- でも、現金は50万円しかない…。
このような場合に、「延納の申請」をして認められれば、
たとえば5年に分けて毎年40万円ずつ払うことができるようになります。
ただし、分割にする代わりに利子(=利子税)がつきます。

ローンのように、少しずつ返していくイメージですね。
⚠️ 延納が使える条件

誰でも使えるわけではなく、次のような条件があります。
- 納期限までに「延納申請書」を出すこと
- 一定の担保(保証のようなもの)を差し出すこと
- 「今すぐ現金で払うのは難しい」ことを証明すること
🏁 延納_まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 意味 | 税金を一度に払えないときに、分けて払う制度 |
| 使える税金 | 相続税・贈与税など |
| 支払い方法 | 年賦(分割払い)+利子税あり |
| 条件 | 資金不足などの正当な理由と申請が必要 |
🌸 たとえ話で覚えよう
お年玉をもらって、ほしいパソコンを買ったら貯金がゼロになってしまった…。
でも次の月から少しずつお小遣いをためて返していく、みたいな感じです。

「すぐに全部払うのはムリだけど、計画的に払います」という約束を国にする制度が「延納」なんです。
物納とはなにか?

「物納」とは、お金の代わりにモノ(財産)で税金を納めることです。
つまり、「現金がないから、自分の持っている財産で納めてもいいですか?」という仕組みです。
💬 普通は“お金”で納めるのが原則
たとえば、贈与税が100万円なら、銀行振り込みなどで100万円を現金で納めます。
でも、もしもその人の持っている財産が「土地や建物」ばかりで、
手元に現金がほとんどない場合——
「払いたいけど、現金がない…」ということも起こります。

税金は基本的に現金で一括払いが原則です。
💡 そんなときに登場するのが「物納」
国は、そういう人のために
「やむを得ない場合に限って、現金の代わりに財産を納めてもいいですよ」
という制度を用意しています。
これが「物納(ぶつのう)」です。
読んで字のごとく、“モノで納める”という意味です。
🧱 具体的なイメージ
たとえば…
- あなたが親から土地を贈与されました。
- その土地の評価額は3,000万円。
- 贈与税として400万円払わないといけません。
- でも、現金はほとんどない…。
このようなとき、
「延納(分割払い)」をしても払えそうにない場合に、
その土地の一部(たとえば400万円分の価値がある部分)を国に渡して納税することができる、
——これが「物納」です。
⚠️ ただし、誰でも・どんな財産でもOKではない!

物納が認められるのは本当に現金で払うのが無理な場合だけです。
そして、次のような制限があります。
- 延納でも払えないことが条件(延納よりさらに特別)
- 物納できる財産の種類は決まっている(例:土地、建物、株式など)
- 申請と審査が必要(勝手にモノで納めていいわけではない)
🧮 物納できる財産の順番(原則)
国は「受け取りやすいもの」を優先しています。
たとえば:
- 不動産(土地・建物など)
- 株式などの有価証券
- それ以外の財産
🏁 物納_まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 意味 | お金がないときに、モノ(財産)で税金を納める制度 |
| 対象 | 延納でも払えない人 |
| 申請 | 国税庁へ申請して、審査を受ける必要あり |
| 財産の種類 | 土地・建物・有価証券など(制限あり) |
🌸 たとえ話で覚えよう
たとえば、友達に「ゲームソフト代1万円貸して」と言われて、
でも今は現金がなくて、「かわりに僕の持ってるスニーカーでいい?」と渡すような状況です。
現金がなくても、“代わりの価値あるもの”で支払うイメージですね。
つまり、「延納」は“分割払いで時間をもらう制度”、
「物納」は“モノで払う制度”です。

どちらも「現金で払えない人を救う仕組み」ですが、物納は最後の手段と覚えておきましょう。
なぜ、贈与税での「物納」が認められないのか?

では、「なぜ贈与税では物納が認められないのか?」を、中学生にもわかるようにやさしく解説しますね。
💡そもそも「物納」ってなに?
まずおさらいです。
「物納(ぶつのう)」とは、お金の代わりにモノ(財産)で税金を払う制度のことでしたね。
たとえば、
「お金がないから、かわりに土地で払います」というように、
現金の代わりに財産を国に渡して納める方法です。
🚫でも、贈与税では認められません!
相続税ではOKなのに、贈与税ではNG。
これにはちゃんとした理由があります。
🧭 理由:贈与税は「生きている人」が払う税金だから

贈与税は、「生前に財産をもらった人」が払う税金です。
つまり、もらった本人は生きていて、働いている・収入があるのが普通ですよね。
国からすれば、
「働いているんだから、分割払い(延納)で払えるでしょ」
と考えています。
そのため、「物で納めたい」という特別な救済を用意する必要がないんです。
🏠 一方で相続税は…
相続税は、「亡くなった人の財産を受け継いだ人」が払います。
でも、受け継いだ財産の多くは家や土地で、現金があまりないケースが多いです。
たとえば:
- おじいちゃんが亡くなって、家と土地はもらったけど、現金はほとんどない。
- 相続税を払いたいけど、家を売らないと払えない…。

こうした場合に「物納」という制度で救済できるようにしているのです。
💬 つまり簡単に言うと…
| 税金の種類 | 誰が払う? | 現金がある? | 物納できる? |
|---|---|---|---|
| 贈与税 | 生きている人(もらった人) | ある程度あると想定 | ❌ できない |
| 相続税 | 亡くなった人の財産をもらった人 | 現金が少ない場合が多い | ⭕ できる |
🌸 たとえ話でイメージしよう
たとえば、あなたが友達からゲームをもらって「ありがとう!」って言われた後、
「お礼にお金を払うね」となったとします。
このときあなたは生きてて働いているから、少しずつでもお金を払えます。
でも、もし「おじいちゃんの遺品として家を相続した」となったら、
その家をすぐに売らないと税金が払えないこともあります。

そんなときに、「じゃあその家の一部で払っていいですよ」と認めるのが物納制度なんです。
なぜ物納が認められないか_まとめ
- 贈与税は「生きている人」が払う → 現金で払う能力があると考えられる
- 相続税は「亡くなった人の財産を受け継ぐ」 → 家や土地ばかりで現金がないケースが多い
- だから、「物納」は相続税だけに認められている
まとめ・今回の学び
- 延納とはなにか?
→税金を一度に払えないときに、分けて少しずつ払う方法のことです。
→資金不足などの正当な理由と申請が必要になります。 - 物納とはなにか?
→お金の代わりに“モノ(財産)で税金を納める”ことです。
→財産の種類は、土地・建物・有価証券など。
物納は最後の手段です。 - なぜ、贈与税での「物納」が認められないのか?
→贈与税は生きている人が払う税金だから。
もらった本人は生きていて、働いているのが普通だから、分割払い(延納)でも払えるはず、という理屈です。
→相続税で物納が使える理由には「亡くなった人の財産を受け継ぐ」ことから、家や土地ばかりで現金がないケースが多いということもあります。
今回は贈与税の納付の仕方、「延納と物納」について解説しました。

延納と物納のそれぞれの特徴、使い方の違いを理解できたのではないでしょうか。
物納は相続税にしか使えません。
相続税は現金がない場合もあるため、物納するしか無い。
最後の手段だ!
というように覚えてはいかがでしょうか。
続いて次回予告です。
次回予告:家屋の相続税評価額

次回は、不動産の評価の中でもよく出題されるテーマ、
「貸家の相続税評価額」について取り上げます。
貸家とは、自分が住むのではなく、他人に貸しているアパートや賃貸住宅のこと。
実は、この「貸家」はそのままの時価(評価額)ではなく、特別な計算式を使って相続税の評価額を求めます。
問題文はこちら👇
「賃貸アパート等の貸家の用に供されている家屋の相続税評価額は、【 】の算式により算出される。
【 】内に入る計算式はなにか?」
建物を人に貸していると、相続税評価額がどのように下がるのか?

その仕組みを次回、わかりやすく図解しながら解説していきます。
お楽しみに‼️


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