賃貸住宅を借りていると、契約期間が来るたびに「更新」の手続きがありますよね。
ふつうの賃貸(普通借家契約)では、大家さんの都合だけで「出ていってください」とは言えません。
追い出すには「正当事由(よほどの理由)」が必要だからです。
ところが、世の中には「定期借家契約」という、更新のない特殊な賃貸契約があります。
期間が来たら、契約は自動的に終了します。
では、この定期借家契約でも、大家さんが更新を断るには「正当事由」が必要なのでしょうか?
一見すると「借主を守るために必要そう」に思えますよね。
わたしも問題を解いたとき、まさにそう考えて間違えてしまいました。
今回は、その思い込みの落とし穴を一緒に解き明かしていきましょう!
⭐️ この記事を読むと、こんな疑問がスッキリ解消できます。
- 借家権って、そもそもどんな権利?
→ 建物を借りて住んだり使ったりするための、借主を守る権利です。 - 定期借家権ってなに?
→ あらかじめ期間を決めて結ぶ、更新がない借家権です。 - 普通借家権と定期借家権、何が違うの?
→ 「正当事由がいるか」「更新があるか」が最大の違いです。
前回の 第54回 では、定期借家契約の「終了通知」のルール
——契約期間が1年以上のとき、貸主は満了の 1年前から6か月前まで に通知しなければならない、という点を学びました。
今回はさらに踏み込んで、「そもそも定期借家契約に正当事由はいるのか?」という、契約の根っこにあたるルールを見ていきます。
前回記事はこちら
▶【定期借家契約の終了通知】何か月前までに必要?「6か月前ルール」を借地借家法からわかりやすく解説_間違いから学ぶFP3級_第54回
📘 今回の分野:不動産/借地借家法(定期借家契約と正当事由)

今回学ぶのは、不動産分野の「借地借家法」に関する内容です。
借地借家法が定める借家権には、大きく分けて「普通借家権」と「定期借家権」の2種類があります。
今回は特に、更新のない「定期借家契約」に注目し、「更新を拒むのに正当事由がいるのかどうか」を整理していきます。
❓️ 問題文の紹介
借地借家法の規定について、次の記述は正しいでしょうか?
- 貸主は、借主からの「契約の更新の請求」を拒むことができない
- 定期建物賃貸借契約(定期借家契約)に関するルールである
- 貸主に「正当の事由」があると認められる場合でなければ
◯か✘か?
普通借家契約では「正当事由」が必要だと覚えていると、定期借家契約でも同じだと思い込んでしまいませんか?
名前が似ているぶん、ルールまで同じだと勘違いしやすいポイントです。

もっともらしい問題文ほど要注意です。
定期借家契約の「大原則」を思い出せるかがカギですよ!
✅ 正解と解説の要点:定期借家契約に「正当事由」は不要

借地借家法の規定について、次の記述は正しいでしょうか?
- 貸主は、借主からの「契約の更新の請求」を拒むことができない
- 定期建物賃貸借契約(定期借家契約)に関するルールである
- 貸主に「正当の事由」があると認められる場合でなければ
◯か✘か?
正解:✘
正解は✘(誤り)でした。
問題文で誤っているのは「正当の事由があると認められる場合でなければ……拒むことができない」という部分です。
これは普通借家契約のルールであって、定期借家契約には当てはまりません。
定期借家契約は、契約期間の満了によって「当然に終了」する契約です。
そもそも「更新」という制度がありません。
更新がない以上、「更新を拒む」ことも「そのために正当事由がいる」ことも、問題になりようがないのです。
✅️ポイント解説:「更新がない」から正当事由もいらない
- 定期借家契約は、契約期間が満了すれば当然に終了する。「更新」という考え方がない。
- 普通借家契約と違い、貸主は正当事由がなくても契約を終了できる。
- 「更新拒絶に正当事由が必要」なのは普通借家契約のルール。
定期借家契約と混同しないよう注意。 - なお、契約期間が1年以上の定期借家契約では、満了の1年前〜6か月前に終了通知が必要(前回・第54回の論点)。
定期借家契約の問題は、「更新がない」という大原則さえ押さえておけば、たいてい解けます。
「正当事由」「更新拒絶」といった言葉が出てきても、それは普通借家契約の話だと切り分けられれば惑わされません。

「更新がない」のが定期借家契約。だから「更新を拒む正当事由」という発想自体が出てこないんです。シンプルに考えましょう!
📚 出典・参考
- e-Gov 法令検索 借地借家法 第38条(定期建物賃貸借)
- e-Gov 法令検索 借地借家法 第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
🔗 関連記事の紹介
借家権・借地借家法の理解を深めるために、不動産分野の関連記事もあわせて確認しておきましょう。
借家権には「登記がなくても第三者に対抗できる」という強い力があります。
不動産登記の「対抗力」とあわせて読むと、「権利を主張できる」という考え方が立体的に理解できます。

同じ「不動産の契約ルール」という点で共通します。
賃貸借契約と売買契約、それぞれの通知ルールを並べて押さえておくと、不動産分野の知識が整理できます。

不動産の契約には「期間」にまつわるルールが多くあります。
専任媒介契約の有効期間(最長3カ月)も、定期借家契約と並ぶ頻出の「期間ルール」です。


関連記事は、気になったものからゆるっと読んでみてください。
不動産分野は1記事ずつ積み上げると、ぐっと得点しやすくなりますよ!
🔍 借家権と定期借家契約について_深掘り考察!!
今回は、以下の3点について深掘りしていきます。
- 借家権とはなにか?
- 定期借家権とはなにか?
- 普通借家権と定期借家権の違いを比較
借家権とは?建物を借りて使う権利をやさしく解説

借家権(しゃっかけん)とは、建物を借りて住んだり、使ったりする権利のことです。
法律上は「建物賃借権」と呼ばれます。
つまり、大家さん(貸主)と賃貸借契約を結んで、アパートや一軒家、店舗を借りている人が持っている権利が「借家権」です。
身近な例:スポーツジムの会員権に似ている
借家権は、スポーツジムの会員権をイメージすると分かりやすいです。
会費を払っている限り、あなたはジムの設備を自由に使えます。
ジム側が「今日から来ないでください」と一方的に追い出すことは、
よほどの理由がなければできません。
借家権も同じです。
家賃を払っている限り、借主は建物を使い続けられ、
大家さんの都合だけで追い出されることはありません。
違うのは「ジムの設備」が「建物」になっただけです。
借家権の3つのポイント
- 使う権利がある
→ 契約した目的どおりに建物を使えます。
住居なら住めますし、事務所契約なら事務所として利用できます。 - 家賃を払えば権利が守られる
→ 家賃を払っている限り、貸主は正当な理由なしに追い出せません。
借主は安心して生活や事業を続けられます。 - 借地権とは別もの
→ 借地権は「土地」を借りる権利、借家権は「建物」を借りる権利です。
名前が似ていて混同しやすいので注意しましょう。
借家権が重要な理由
借家権は、借主の生活基盤・事業基盤を守るために、法律でしっかり保護されています。
「更新」「解約」「立ち退き料」といった場面で、借主が一方的に不利にならないようルールが定められています。

借家権は「借地権」と一字違いで紛らわしいですよね。
わたしは「家を借りる=借家権」と漢字で結びつけて覚えました!
✅ まとめると、借家権とは「建物を借りて住んだり使ったりする権利」で、借主の生活や仕事を守るために強く保護されているものです。
定期借家権とは?「更新がない借家権」のしくみをわかりやすく解説

定期借家権(ていきしゃっかけん)とは、
あらかじめ期間を定めて結ぶ、更新のない借家権のことです。
正式には「定期建物賃貸借契約」にもとづく借家権で、
平成12年(2000年)の法改正で導入されました。
普通の借家契約(普通借家契約)は、契約期間が終わっても更新されるのが基本です。
これに対して、定期借家権は契約期間が満了すれば自動的に終了します。
身近な例:ホテルの宿泊予約に似ている
定期借家権は、ホテルの宿泊予約をイメージすると分かりやすいです。
「3泊4日」と決めて予約したら、4泊目には自動的にチェックアウトになります。
「正当な理由がないと出ていけと言えない」のではなく、最初から終わる日が決まっているのです。
延泊したいなら、空室状況しだいで「別の契約」を結び直すことになります。
定期借家契約も同じで、「〇年で必ず終わる借り方」です。
期間が来れば、貸主が理由を説明しなくても契約は終了します。
定期借家権の4つの特徴
- 更新がない
→ 期間が来れば必ず終了。更新の請求もできません。 - 書面での契約が必要
→ 口約束では無効。契約書などの書面で結ぶ必要があります。 - 終了通知の義務がある
→ 契約期間が1年以上の場合、貸主は満了の1年前から6か月前までに「終了します」と通知しなければなりません(前回・第54回の論点)。 - 普通借家契約より貸主に有利
→ 借主保護よりも「貸主が柔軟に建物を活用できる」ことに重点が置かれています。
どんなときに使われる?
定期借家契約は、たとえば次のような場面で使われます。
- 社宅として、企業が「5年間だけ」社員用に借りる
- 建替え予定の物件を「3年間だけ」貸す(更新がないので建替え計画に支障が出ない)
- 留学やイベントなどで「1年間だけ住みたい」といった短期利用
定期借家権ができた背景
昔の普通借家契約は借主を強く保護する仕組みでした。
そのため「一度貸したら返ってこない」「自由に活用できない」という貸主側の不満がありました。
定期借家権は、不動産をより柔軟に活用できるようにするために生まれた制度なのです。

定期借家契約は「最初から終わりが決まっている」のがポイントです。
だから貸主は「なぜ終わらせるか」を説明する必要がないんですね。
✅ 一言でいうと、定期借家権は「期限付きで、必ず終わる借家権」です。
普通借家権と定期借家権の違いを比較|正当事由と更新の有無

普通借家権と定期借家権は、どちらも「建物を借りる権利」ですが、法律上の扱いが大きく違います。
身近な例:サブスクの「自動更新プラン」と「期間限定プラン」
2つの違いは、動画配信などのサブスクで考えると分かりやすいです。
普通借家権は「自動更新プラン」に似ています。
解約の手続きをしない限り、契約は自動で続いていきます。
提供側(貸主)が勝手に止めるには、よほどの理由が必要です。
定期借家権は「期間限定プラン」に似ています。
「3か月プラン」と決めたら、期間が来れば自動で終了します。
続けたいなら、改めて契約を結び直すことになります。
比較表でしっかり整理
| 項目 | 普通借家権 | 定期借家権 |
|---|---|---|
| 契約期間 | 期間の定めは自由。 ただし1年未満を定めると 「期間の定めがない契約」とみなされる | 期間の制限なし (1年未満の短期契約も有効) |
| 更新 | 期間満了後も自動的に更新されるのが原則 | 更新なし。 期間満了で必ず終了 |
| 更新拒絶 | 貸主は「正当事由」がなければ 更新を拒めない | 正当事由は不要。 期間満了で必ず終了 |
| 終了通知 義務 | 不要(更新が前提) | 契約期間が1年以上の場合、 満了の1年前〜6か月前までに終了通知が必要 |
| 契約方式 | 書面でも口頭でも有効 | 必ず書面(契約書や公正証書)が必要 |
| 借主保護の 度合い | 借主を強く保護(住居の安定を重視) | 貸主のニーズを重視 (柔軟に活用可能) |
| 利用されるケース | 一般的な住居用賃貸(アパート・マンションなど) | 建替え予定の物件、社宅、短期利用 |
ポイントの整理
- 普通借家権は「借主を守る仕組み」。更新が前提なので、長く住み続けたい人には安心です。
- 定期借家権は「貸主のニーズに応える仕組み」。期限付きなので、建替えや短期利用などに柔軟に使えます。
試験対策のポイント

試験で問われる最大の違いは、
「更新拒絶に正当事由が必要かどうか」と「更新があるかどうか」の2点です。
この2つさえ押さえれば、今回のような引っかけ問題にも迷わず対応できます。

迷ったら「普通借家=正当事由がいる/定期借家=いらない」とだけ思い出してください。この一行で、ほとんどの問題に対応できます!
深掘り考察で得られた知識
⭐️ 深掘り考察で見えてきたポイントを整理しましょう。
- 借家権とは、建物を借りて住んだり使ったりする権利。
家賃を払う限り、貸主は正当事由なしに借主を追い出せない——借主を強く守る権利です。 - 定期借家権は、あらかじめ期間を定めた、更新のない借家権。
期間満了で自動的に終了するため、「〇年で必ず終わる借り方」といえます。 - 普通借家権と定期借家権の最大の違いは、
「更新があるか」と「更新拒絶に正当事由がいるか」。
普通借家は更新あり・正当事由が必要、定期借家は更新なし・正当事由は不要です。
🧐 よくあるケアレスミス:定期借家契約と正当事由の混同
ミス①:定期借家契約にも「正当事由」が必要だと思い込む
なぜ間違えるのか?
「正当事由(よほどの理由)」という言葉は、賃貸借のルールとしてよく耳にします。
そのため「借主を守るために、定期借家契約でも正当事由は必要そうだ」と、もっともらしく感じてしまいます。
実は「正当事由」が必要なのは普通借家契約のルールで、
これを定期借家契約にもあてはめてしまうのが典型的なミスです。
正しい考え方
定期借家契約は、契約期間が満了すれば当然に終了する契約です。
貸主は理由を説明する必要がなく、正当事由は不要です。
「正当事由がいるのは普通借家契約だけ」と切り分けて覚えましょう。

「正当事由」という言葉が出てきたら、まず「どっちの契約の話?」と考えるクセをつけてください。定期借家契約なら、正当事由は関係ありません!
ミス②:定期借家契約にも「更新」があると思い込む
なぜ間違えるのか?
問題文には「契約の更新の請求」という言葉が出てきます。
普通借家契約には更新があるため、その言葉につられて「定期借家契約にも更新がある」と勘違いしてしまいます。
正しい考え方
定期借家契約は「更新がない」のが大原則です。
更新そのものがないので、「更新の請求」をすることもできません。
問題文に「更新」という言葉が出てきても、定期借家契約なら「更新はない」と判断できれば惑わされません。

更新がない契約で「更新を拒む」
——よく読むと言葉がかみ合っていません。
ここに気づけると一気に正解に近づきますよ!
ミス③:「終了通知」と「正当事由」を混同する
なぜ間違えるのか?
定期借家契約でも、契約期間が1年以上なら「終了通知」が必要です(前回・第54回の論点)。
この「通知が必要」というルールと、「正当事由が必要」というルールを、
ごちゃ混ぜにしてしまうパターンです。
正しい考え方
終了通知は「契約が終わりますよ」というお知らせであって、契約を終わらせる理由(正当事由)ではありません。
定期借家契約は「正当事由は不要」だけれど「終了通知は必要」
——この2つは別ものとして整理しましょう。

「通知」と「正当事由」は役割がちがいます。
通知は“お知らせ”、正当事由は“理由”。
第54回とあわせて押さえると、混乱しません!
📋 ケアレスミスまとめ
| よくある誤解 | 正しい考え方 |
|---|---|
| 定期借家契約も、 正当事由がないと更新を拒めない | 定期借家契約に正当事由は不要。 期間満了で当然終了する |
| 定期借家契約にも更新があり、 更新の請求ができる | 定期借家契約に更新はない。 「更新の請求」もできない |
| 終了通知が必要=正当事由が必要、 ということ | 終了通知(お知らせ)と正当事由(理由)は別もの |
まとめ・今回の学び:定期借家契約に「正当事由」は不要
今回学んだことを振り返りましょう📝
- 【基本の仕組み】
借家権は「建物を借りて使う権利」。
なかでも定期借家権は、あらかじめ期間を定めた、更新のない借家権で、
期間が満了すれば当然に終了します。 - 【用語の違い】
普通借家権は「更新あり・正当事由が必要」、
定期借家権は「更新なし・正当事由は不要」。
最大の分かれ目はこの2点です。 - 【試験頻出ポイント】
「定期借家契約は正当事由がないと更新を拒めない」は誤り。
更新そのものがないので、正当事由を考える必要がありません。 - 【実生活への応用】
部屋を借りるときは、
契約書が「普通借家」か「定期借家」かで安心感がまったく違います。
定期借家なら期間満了で必ず退去になる点に注意しましょう。
「定期建物賃貸借契約」という名前は長くて難しそうに見えますが、分解すれば「期間を定めた・更新のない・建物の賃貸借」というだけのことです。
長い用語ほど、区切って読むと意味がすっきり見えてきます。
この論点でいちばん危ないのは、「借主を守るために正当事由が必要なはず」という思い込みです。
正当事由が必要なのは普通借家契約のルールで、定期借家契約にはあてはまりません。
定期借家契約は「期間満了で当然に終了する」
——だからそもそも正当事由はいらないのです。
もう一つの注意点は、「終了通知」との混同です。
定期借家契約でも契約期間が1年以上なら終了通知は必要ですが、
これは「お知らせ」であって「終わらせる理由」ではありません。
「正当事由は不要/終了通知は必要」と、2つを分けて覚えておきましょう。

名前が長くて難しそうな「定期建物賃貸借契約」も、分解すれば「期間を決めた・更新のない・建物の賃貸借」。落ち着いて読めば必ず解けます!
次回予告:普通借家契約の期間制限

第56回は、ふたたび借地借家法から「普通借家契約の期間」がテーマです。
普通借家契約では、契約期間を自由に決められます。
ところが、あまりに短い期間——たとえば数か月——を定めてしまうと、その期間設定はそのまま認められず、意外な扱いを受けることになります。
「短い期間を定めたら、その契約はどうなってしまうのか?」
今回学んだ「定期借家契約」とのちがいにも注目しながら、次回くわしく解説します。
次回学べるキーワードはこちらです。
- 期間の定めがない賃貸借
- 普通借家契約の期間制限
- 「1年未満」の期間を定めたとき
次回の記事はこちら
▶【借地借家法】普通借家契約の期間制限!「1年未満は期間の定めなし」ってホント?_間違いから学ぶFP3級_第56回

「短い期間を定めたらどうなる?」
——答えを聞くと「なるほど!」となるはずです。
次回、一緒に確認しましょう!


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