親や祖父母から土地や建物を相続して、それを売ろうとしたとき、気になるのが「相続税を払ったうえに、売ったときの譲渡所得税までかかるのか?」という二重課税の不安ではないでしょうか。
実はこの負担をやわらげる、頼もしい制度があります。
それが「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例」、通称『取得費加算の特例』です。
ただし、この特例には「いつまでに売るか」という期限が決められています。
これを過ぎると、せっかくの節税効果を受け取れなくなってしまうのです。
期限は「2年?」「3年?」「それとも5年?」── 数字だけ見ると、どれもありそうですよね。
わたしも問題を解いたとき、よく分からずに『2年』と答えてしまいました💦
今回はその謎を、一緒に解き明かしていきましょう!
⭐️この記事を読んで得られる知識は、以下の3点です。
- 取得費加算の特例って何?
→ 相続した不動産を売ったときに、
払った相続税の一部を取得費に上乗せできる節税制度です。 - 売却期限はいつまで?
→ 相続税の申告期限の翌日から3年以内(相続開始から約3年10か月以内)です。 - 誰でも使える制度なの?
→ いいえ、相続税を実際に納めた人だけが対象です。
前回の第62回では、不動産の譲渡所得を計算するときの基礎となる『短期譲渡所得と長期譲渡所得の違い』を学びました。
所有期間が5年を超えるかどうかで税率が大きく変わるという内容でした。
今回はその発展形として、「相続で受け継いだ不動産」を売却する場合の、
特別な節税ルールを見ていきます。
前回の記事はこちら
▶【短期譲渡所得と長期譲渡所得の違い】所有期間「5年」の数え方と1月1日基準をやさしく解説_間違いから学ぶFP3級_第62回
- 📘 今回の分野:相続した不動産の譲渡所得と節税の特例
- ❓️ 問題文の紹介:取得費加算の特例はいつまでに売却するべき?
- ✅ 正解と解説の要点:取得費加算の特例の売却期限は「3年」
- 🔗 関連記事:相続不動産の節税制度をもっと体系的に学ぶ
- 🔍 取得費加算の特例について_深掘り考察!!
- 📝 まとめ・今回の学び:取得費加算の特例と「3年ルール」の本質
- 次回予告:マイホームを売ったときの『3,000万円特別控除』とは?
📘 今回の分野:相続した不動産の譲渡所得と節税の特例

今回学ぶ範囲は、前回に引き続き不動産の譲渡所得に関わる分野です。
ただし今回は、ふつうの売買ではなく「相続で受け継いだ不動産を売却する場合」にスポットを当てます。
相続した土地や建物を売ると、相続税を払ったうえに譲渡所得税まで課されることがあり、
税負担がとても重くなりがちです。
これをやわらげるために設けられているのが、
今回テーマとなる『相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(通称:取得費加算の特例)』です。
ポイントは「いつまでに売却すれば、この特例が使えるのか?」という期限のルールにあります。
❓️ 問題文の紹介:取得費加算の特例はいつまでに売却するべき?
📋 前提条件:
- 相続によって取得した土地(不動産)を売却するケース
- 「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例」(取得費加算の特例)の適用を受けたい
- 売却のタイミングは『相続税の申告期限の翌日』から数える
❓ 問われているポイント:
- 申告期限の翌日から何年を経過する日までに譲渡すれば、この特例が使えるのか?
🔢 選択肢:
- 2年/3年/5年(このうちの正しい数字を選ぶ)
「2年・3年・5年」── どれもありそうな数字で、こんがらがってしまいませんか?
特に『相続税の申告期限が10か月』と覚えていると、そこに「+2年?」「+3年?」を足したくなりますし、譲渡所得の長期・短期の境目である『5年』とも混同しやすい論点です。

数字の選択肢は、どれもありそうで悩むんですよね…。
一緒に正解を確認していきましょう‼️
✅ 正解と解説の要点:取得費加算の特例の売却期限は「3年」

📋 前提条件:
- 相続によって取得した土地(不動産)を売却するケース
- 「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例」(取得費加算の特例)の適用を受けたい
- 売却のタイミングは『相続税の申告期限の翌日』から数える
❓ 問われているポイント:
- 申告期限の翌日から何年を経過する日までに譲渡すれば、この特例が使えるのか?
🔢 選択肢:
- 2年/3年/5年(このうちの正しい数字を選ぶ)
→正解:3年
✅️ポイント解説

- 正解:3年
- 起算日は『相続税の申告期限の翌日』── 相続開始日そのものではない点に注意です。
- 相続税の申告期限は『相続開始を知った日の翌日から10か月以内』と決められています。
- つまり、起算日 = 相続開始から約10か月後の翌日
→ そこから 3年を経過する日までに売却が必要です。 - 結果として実質的な期限は『相続開始からおおむね3年10か月以内』となります。
数字の『3年』だけを覚えると、起算日がズレてしまい誤答につながります。
『申告期限の翌日から+3年 ≒ 相続開始から3年10か月』とセットで押さえると、本試験の応用問題にも対応できます。

この期限を超えてしまうと特例は使えなくなり、
譲渡所得税がガクッと増えてしまいます💦
📚 出典・参考
- 国税庁タックスアンサー No.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
🔗 関連記事:相続不動産の節税制度をもっと体系的に学ぶ
今回の「取得費加算の特例」は、相続税と譲渡所得税の二重課税をやわらげる制度でしたが、
相続に関する節税の特例は他にもいくつかあります。
あわせて読むことで、相続まわりの税制が立体的に理解できます。
📎 空き家特例についても確認しておくと、相続不動産の譲渡所得の節税ルートが見えてきます。

📎 小規模宅地等の特例とあわせて読むと、相続税そのものを軽くする仕組みも体系的に学べます。

📎 住宅資金の贈与税非課税制度も押さえておくと、世代間の資産移転にまつわる税制全体が見渡せます。


相続まわりの節税制度は『期限』と『要件』が制度ごとにバラバラ💦
一気に覚えようとせず、1記事ずつ整理していきましょう‼️
🔍 取得費加算の特例について_深掘り考察!!
今回は、次の3つの視点から取得費加算の特例を掘り下げていきます。
- 取得費加算の特例とは?── 二重課税を救う仕組みと計算式
- なぜ売却期限は『3年』と決められているのか?── 救済措置の趣旨
- 取得費加算の特例のメリット・デメリット── 向き不向きを整理
取得費加算の特例とは?相続税と譲渡所得税の『二重課税』を救う仕組み

相続で受け継いだ土地や建物を売却すると、本来であれば相続税+譲渡所得税の二段階で課税されてしまいます。
これをやわらげる節税制度が、正式名称「相続税額の取得費加算の特例」です。
仕組みはシンプルで、自分が払った相続税のうち、
売却した財産に対応する部分の金額を『取得費』に上乗せできるというもの。
取得費が増えるぶん、譲渡所得が圧縮されて税金が安くなります。
🧒 身近な例え話:レシートを2枚使えるイメージ
スーパーで買った商品を、メルカリで売ると考えてみてください。
「仕入れ値(=取得費)」が高いほど、利益は小さく見えますよね。
取得費加算の特例は、『買ったときのレシート(実際の取得費)』に加えて、『相続税というレシート』も2枚目の仕入れコストとして使ってOKにしてあげる、という制度なのです。
✦ 適用できる条件(3つ)
- 相続または遺贈で財産を取得した人が対象
- その財産に対して相続税を実際に納めていること(基礎控除内で相続税ゼロの人はNG)
- 相続税の申告期限の翌日から3年以内(≒ 相続開始から約3年10か月以内)に売却すること
✦ 具体例でシミュレーション

例:相続した土地を売却したケース
- 売却価格:5,000万円
- 取得費(被相続人が購入した価格):1,000万円
- 譲渡費用(仲介手数料など):200万円
- 納付した相続税(うち今回売却分に対応する額):800万円
- 所有期間:被相続人の取得日から数えて5年超 → 長期譲渡所得(税率20.315%)
● 特例を使わない場合
- 譲渡所得 = 5,000 −(1,000+200)= 3,800万円
- 税額 = 3,800万円 × 20.315% ≒ 約772万円
● 特例を使った場合
- 譲渡所得 = 5,000 −(1,000+200+800)= 3,000万円
- 税額 = 3,000万円 × 20.315% ≒ 約609万円
→ 節税効果:約163万円
💡 ポイント:前回学んだ通り、相続で取得した不動産は被相続人の取得日から所有期間を数えるため、多くのケースで長期譲渡所得(税率20.315%)が適用されます。
📚 出典・参考
- 国税庁タックスアンサー No.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
- 国税庁タックスアンサー No.3211「短期譲渡所得の税額の計算」
- 国税庁タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」
なぜ売却期限は『3年』なのか?特例の期限ルールの理由を整理

期限が『相続税の申告期限の翌日から3年』と決められているのには、次の3つの理由があります。
1. 相続税と譲渡税を結びつけるための『救済窓口』だから
この特例は、「相続税を払った人がすぐに財産を売る」というケースを救うためにあります。
長い年月が経つと、相続税を払った時の評価額と売却時の時価の関係が薄れてしまうため、直接的な関係が強い期間に限定しているのです。
2. 不公平を避けるため
期間制限がなければ、相続から10年後・20年後の売却でも特例が使えてしまい、価格変動による利益にまで節税効果が及んでしまいます。
税金の公平性を保つために、短めの3年で区切られているわけです。
3. 税務行政上の実務を明確にするため
『相続税の申告期限の翌日から3年』という明確な基準を設けることで、納税者・税務署のどちらにとっても判定がシンプルになります。
🧒 身近な例え話:『早期予約特典』のイメージ
旅行の早期予約特典を思い浮かべてください。
『出発の◯か月前まで』に予約した人だけが割引を受けられる、というルールがありますよね。
取得費加算の特例も同じ発想で、『相続税を払ってから一定期間内に売る人』だけに節税の特典をあげる、期限つきの優遇制度なのです。
取得費加算の特例のメリット・デメリット──向き不向きを整理

節税効果が大きい一方で、適用条件が厳しい面もあります。両面を比較表で整理しましょう。
| 観点 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 税金 | 譲渡所得が圧縮され、 譲渡所得税が大きく減る | 相続税を払っていない人は使えない |
| 資金面 | 相続税の納税資金対策にも有効 (売却資金で納税) | 売却時期を急がされ、 判断の自由度が下がる |
| 公平性 | 相続税を多く払った人ほど メリットを受けられる | 売却財産に対応する相続税額しか 加算できない |
| 期限 | 約3年10か月という、 ある程度の猶予期間がある | 1日でも過ぎたら特例は使えなくなる |
🧒 身近な例え話:『保険の早期解約特典』のイメージ
生命保険の早期解約には、解約返戻金が増えるタイミングがあったりしますよね。
「タイミングを見極められた人が得をする」という構造は、取得費加算の特例とよく似ています。
売却を遅らせて値上がりを狙うか、特例期限内に確実に節税するか──
ご家庭の事情で判断が分かれる制度です。
この特例が向いているケース/向いていないケース
- ✅ 向いている:
相続税を多めに払った/不動産を早めに売却する予定がある/納税資金が手元にない - ❌ 向いていない:
相続税ゼロだった/長期保有で値上がりを狙いたい/そもそも売却の予定がない
💡 【得られる知識②】取得費加算の特例のポイント整理
📌 取得費加算の特例の3つのポイント
- 取得費加算の特例とは?
→ 相続税として払った金額のうち、売却財産に対応する部分を取得費に上乗せして、譲渡所得を圧縮できる節税制度。 - 売却期限はいつまで?
→ 相続税の申告期限の翌日から3年以内(相続開始から約3年10か月以内)。
1日でも過ぎると使えません。 - 誰でも使えるわけではない!
→ 相続税を実際に納めた人だけが対象。
基礎控除内で相続税ゼロだった人は適用外です。
🧐 よくあるケアレスミス:取得費加算の特例で間違えやすい3つのポイント
この論点では、次の3パターンで間違えてしまう方が非常に多いです。
ひとつずつチェックしておきましょう。
ミス①:起算日を「相続開始日」と勘違いしてしまう
なぜ間違えるのか?
『相続から3年以内』と短くまとめて覚えてしまうと、
起算日が相続開始日(亡くなった日)だと思い込んでしまいがちです。
正しい考え方:
起算日は『相続税の申告期限の翌日』。
相続税の申告期限は『相続開始を知った日の翌日から10か月以内』なので、実質的な期限は『相続開始からおよそ3年10か月以内』になります。

「10か月+3年」という二段構えの数式で覚えると、混同しにくくなります‼️
ミス②:『3年』と所有期間の『5年』を混同してしまう
なぜ間違えるのか?
同じ譲渡所得の単元で出てくる『所有期間5年超で長期譲渡所得』(前回・第62回のテーマ)と、今回の『3年以内に売却』の数字が紛らわしく、ごちゃまぜに覚えてしまいがちです。
正しい考え方:
- 『5年』 → 所有期間で税率が変わる境目(短期39.63% vs 長期20.315%)
- 『3年』 → 取得費加算の特例の売却期限
目的がまったく違う2つの数字ということを区別して整理しましょう。

同じ「不動産の譲渡所得」の話題で出てくる数字なので、
出題者にとっては引っかけやすいポイント💦
役割で区別しておきましょう‼️
ミス③:相続税を払っていない人も使えると思い込んでしまう
なぜ間違えるのか?
『相続したら誰でも使える節税制度』と単純に覚えてしまうと、
相続税ゼロの人も適用できると勘違いしがちです。
正しい考え方:
取得費加算の特例は『相続税を実際に納めた人だけ』が対象です。
基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)の範囲内で相続税がゼロだった人は、
そもそも『取得費に加算する相続税額』が存在しないので、この特例は使えません。

『相続税を払った人へのご褒美』──これがこの特例の本質です‼️
📋 ケアレスミスまとめ
| よくある誤解 | 正しい考え方 |
|---|---|
| 「相続から3年以内に売却すればOK」 | 起算日は相続税の申告期限の翌日。 実質3年10か月以内 |
| 「期限は5年でしょ?」 (長期譲渡と混同) | 5年は所有期間の境目、3年は取得費加算の売却期限。 役割が違う |
| 「相続したら誰でも使える節税制度」 | 相続税を実際に納めた人だけが対象。 基礎控除内で相続税ゼロの人は適用外 |
📝 まとめ・今回の学び:取得費加算の特例と「3年ルール」の本質
今回学んだことを振り返りましょう📝
⭐️ 【得られる知識・まとめ版】取得費加算の特例の4ポイント
- 基本の仕組み
→ 相続で取得した不動産を売却したとき、納めた相続税のうち売却財産に対応する金額を取得費に上乗せして、譲渡所得を圧縮できる節税制度。 - 用語の違い
→ 『3年』は取得費加算の売却期限、『5年』は所有期間で税率が変わる境目。
→ 起算日は『相続税の申告期限の翌日』であり、相続開始日ではない(実質3年10か月以内)。 - 試験頻出ポイント
→ ✅ 期限は『相続税の申告期限の翌日から3年以内』
→ ✅ 適用対象は『相続税を実際に納めた人』だけ
→ ✅ 加算できるのは『売却財産に対応する部分の相続税額』のみ - 実生活への応用
→ 相続不動産を売却する予定があるなら、『相続開始から3年10か月以内』を意識した売却スケジュールを立てることで、大きな節税につながる可能性があります。
今回は『相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(相続税の取得費加算の特例)』というとても長い名前の制度を学びました。
名前の長さに圧倒されてしまいそうですが、要素ごとに分解すると、「相続した財産を譲渡したときに使える、相続税の取得費加算の特例」というシンプルな仕組みです。
『相続したら誰でも節税できる』『相続から3年以内に売ればOK』
── これらはどちらも思い込みのワナです。
実際には、相続税を実際に納付していることが条件で、起算日は相続税の申告期限の翌日。
期限を1日でも過ぎたら、特例は使えなくなる点にも要注意です。
実生活でも、相続した不動産を売却する場面はめずらしくありません。
今回学んだ『10か月+3年=3年10か月』というキーフレーズだけでも頭に残しておけば、
いざというときの判断材料になります。
FP3級では『3年』とシンプルに問われますが、
その背景まで含めて理解しておくと、応用問題にも自信を持って答えられます。

数字の論点は「ひっかけ問題」の宝庫💦
でも、起算日と数え方をワンセットで理解しておけば、
本試験で揺るぎない武器になります‼️
次回予告:マイホームを売ったときの『3,000万円特別控除』とは?

今回は『相続した不動産』を売却するときの特例を学びました。
次回は視点を変えて、『自分が住んでいたマイホーム』を売却するときの大きな節税制度を取り上げます。
その名も── 「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」。
マイホームを売って利益が出ても、
3,000万円までは譲渡所得から差し引けるという、とても強力な特例です。
ただし、この特例にも今回と同じく『いつまでに売るか?』という期限ルールが決められています。
マイホームに住まなくなってからずっと使えるわけではない──
ここがポイントです。
次回学べる内容:
- 🏠 居住用財産の3,000万円特別控除って何?
- 📅 住まなくなった日から「何年」を経過する日まで?
- 📆 さらに、その年の 「いつまで」 に売却する必要がある?
自宅に住まなくなってから3年?それとも5年?
期限の最終日は『年末』?それとも『売却から1年』?
数字も覚え方も、今回と似ているようで微妙に違います。
混同しやすい論点ですが、しっかり整理して試験に備えていきましょう✨
次回の記事はこちら
▶【譲渡所得】居住用財産の3,000万円特別控除!期限を過ぎるとどうなる?_間違いから学ぶFP3級_第64回

今回と同じく「期限の数字」が問われる論点です💦
でも、起算日も終わり方も今回とは少し違うんです‼️
次回もお楽しみに‼️


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